第355話 妃連合との密談(茶碗蒸し大作戦1。)
室内には武雄達一行と料理長と第1皇子一家とエイミーとレイラが居る。
「乗った!」
ローナが嬉しそうに言う。
「料理長、そのキノコは健康に害はないの?」
セリーナが料理長に聞いてくる。
「はい、ございません。
先ほどもご説明をさせていただきましたが、王家の方々には結婚式当日に食べていただいていますし、領地異動の前までは週に1度は必ず出しておりました。」
「そう・・・知らなかったわ。
・・・領地異動前?今はレイラ達にも出しているの?」
「はい、週1で。」
「知らなかったわ」
レイラが苦笑する。
「男性にしか効果は出ないのね?」
「はい。」
「・・・ローナ、私も参戦するわ。」
「あれ?セリーナ良いの?3人では嫌だったのでは?」
「良い機会だもの。」
「そう、わかったわ。久しぶりね。」
ローナとセリーナが頷く。
「あぁ・・・」
エイミーが2人を見ながらため息を漏らす。
「あら?エイミーちゃんどうしたの?」
レイラが苦笑しながらエイミーに聞く。
「いえ・・・第1皇子妃方はこう言う話はしないかと思っていました。」
「ふふ、家族内の事だからね。
特に対外的に話す内容ではないだけよ。
でも、ほら昨日のプチ妃会議の決定もあるしね。
私達ももう一人くらい欲しいし。」
ローナが苦笑をする。
「レイラお姉様、妃方は何を決めたのですか?」
「ん?第1皇子と第2皇子に側室を新たに入れようと決定したのよ。
ほら今回、パットがおバカをしたじゃない?
で、タケオさんがなぁなぁに終わらせてはくれたけど、パットは命を取られてもおかしくはないことをしでかしたからね。
なのでパットに次ぐ王位継承の候補を立てようとなったのよ。
で、第2皇子一家も私達第3皇子一家も男子はいないからね。
第1皇子と第2皇子に若い側室を入れる事にしたの。」
「・・・かなり重大な決定ですね。」
アリスが驚く。
「アリス、タケオさん、さっきの自己紹介の時にも言ったけど、今回のパットから始まった大騒動についてはごめんなさいね。
うちからは金銭でしか補償は出来ないけど。
なんとか捻出したから。」
セリーナが再び謝る。
「いえ!私は平気ですので!」
アリスがアワアワする。
「はい。先ほども言いましたが、私は今後同様な事がなければ良いですし、今回の件については、王都の判断を尊重したいと考えていますので。」
武雄が普通に返す。
「本当にごめんなさいね。」
セリーナが苦笑をする。
「で、タケオさん。何を作ってくれるの?」
レイラが楽しそうに言う。
「茶碗蒸しですね。
下準備は今しています。」
武雄が今日の夕飯をバラすが。
「茶碗蒸しって何?」
レイラが聞いてくる。
「レイラお姉様、プリンの夕飯版です。」
「まったく想像ができないわ・・・」
アリスの説明を聞いてレイラ達が「んー・・・」と悩む。
「タケオ様、説明をお願いします。」
「はいはい。
プリンは卵と牛乳と砂糖を混ぜて蒸しますが、茶碗蒸しは卵と出汁と具材を入れて蒸します。」
武雄が簡単に説明をする。
「言われると似ていますね。
料理長、そんな料理がありますか?」
セリーナが聞いてくる。
「王都の過去のレシピを見てもそのような料理はないのです。私も先ほど聞いて驚きました。
プリンも衝撃的でしたし、その調理法を使って夕飯版を作れるとは・・・
いやぁ、長年の研鑽がこの数日で無駄になるぐらいの衝撃でした!」
料理長は笑いながら言ってくる。
「アリスは食べたことがあるの?」
ローナが聞いてくる。
「はい、ローナ殿下。タケオ様が作ってくれました。
美味しかったです。」
「あの時は出汁の試作でスープ2種類と茶碗蒸しでしたか?
小魚、海老、シイタケの3種類の出汁が美味しかったですね。」
アリスと武雄が楽しそうに言う。
「・・・アリスが海老?」
レイラが訝しむ。
「レイラさん、その件は知っていますし、解決済みです。」
「そう・・・わかったわ。」
レイラは納得する。
「ん?アリス様は海老がダメなのですか?」
エイミーが聞いてくる。
「いえ、この間初めて食べたのですが美味しかったです♪
タケオ様が今日も同じものを作ってくれると言ったので期待しています。」
アリスはエイミーにニコニコしながら言う。
その様子をレイラが朗らかに見るのだった。
「タケオさん、その茶碗蒸しにするとして。
皆に出すのですね?」
セリーナが聞いてくる。
「はい。王家の皆様に出そうかと考えていますが、どうかされましたか?」
「いえ・・・男性陣のみにそのキノコを使用する事は可能ですか?」
「可能です。器の色を変え女性陣には干しシイタケで作った茶碗蒸しを、男性陣には精力キノコを使った物を出せるかと。
料理長、どうでしょうか?」
「可能です。キタミザト殿の言葉通り、取違いを防ぐために色違いの器をご用意いたします。」
「セリーナ、どうしたの?
私達が食べても効果はないのでしょう?」
ローナがセリーナに聞いてくる。
「いえ、効果がないのであれば効果がある男性陣のみに集中して出す方がより良いと思います。」
「まぁ・・・確かにそうね。
料理長、お願いします。」
「はい、畏まりました。」
料理長が頷くのだった。
「キタミザト殿、キノコの出汁は全て茶碗蒸しに使用するのですか?」
「ええ、今回は2種類を作りましょう。
1つは女性陣用の干しシイタケの出汁を使った茶碗蒸し、1つは男性陣の精力キノコの出汁を使った茶碗蒸し。
厨房も広いですから混在を予防する為に別々の所で作りましょう。」
「そうですね。」
武雄と料理長が頷きながら確認をしていく。
「では皆さま、お先に退出して厨房に戻らせていただきます。」
武雄が皆に言う。
「はい!タケオさん、夕飯をお願いね!」
レイラが楽しそうに言うのを見届け武雄と料理長が退出して行くのだった。
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