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第353話 王都の仕立て屋でシャツを作ろう。

「エイミー殿下、いらっしゃいませ。」

エイミーを先頭に武雄達一行は王家ご用達の仕立て屋に入ると店員が挨拶をしてくる。

「店長さんお邪魔します。先にエルヴィス領のお二方は来ましたか?」

エイミーが店長に返事をする。

「はい、いらっしゃっております。

 またウィリアム殿下より事前に手紙も頂いており、『好きなだけ作らせてくれ』と言われております。」

「好きなだけって・・・」

エイミーが苦笑しながら武雄を見る。

「シャツは2着作れば十分なのですけどね。」

武雄も苦笑を返す。

「奥で2人は待っております。」

「わかりました。

 では、少し待っていてください。」

「「わかりました。」」

アリスとエイミーが頷き、武雄は店の奥へと向かうのだった。

・・

「そうですか、また面白そうな物を考えましたね。」

「試験小隊を持てるのなら服から変えるのもありかと思っただけなんですけどね。」

 武雄とラルフ店長が話ながら奥から戻って来る。

「タケオ様、早かったですね。」

「はい、戻りました。

 シャツが2着なので、鐘一つくらいで作って貰えるそうです。」

「え?考えていたよりもかなり早くに出来るのですね!」

エイミーがラルフ店長に驚きながら聞いてくる。

「はい、エイミー殿下。

 一緒に来た職人が王都に持ってきた資料にキタミザト様のシャツの内容もあったので待っている間にボタンや襟、袖口の大まかな意匠を終わらせていたのです。」

ラルフは楽しそうに返事をする。

「ですので、出来上がるまでこちらでお茶をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」

「はい、畏まりました。準備いたします。」

店長が店員に指示を出し、皆でお茶が出来るように椅子や机を準備をするのだった。

・・

あっという間に簡易客間が出来上がり、武雄達一行とラルフ店長が席に着いてマッタリとしている。

「キタミザト殿、奥から戻ってくる際にお2人が楽しそうに話していましたが、何を?」

アンダーセンが聞いてくる。

「いえ、試験小隊の服装について話をしていたのです。」

「服装ですか?」

アンダーセンが「服で?」と首を傾げる。

「ええ、気にはなっていたのですが・・・

 すみません、隊員さん1名立っていただけますか?」

「はい。」

座っていた第三魔法分隊の隊員が席を立つ。

「王都の方々の軍服が派手だと思うのですよね。」

武雄が腕を組みながら言う。

「え?これでですか?

 王都守備隊は明るい青を基調としていていますが、まだ抑え目な方なんですけど・・・

 それに混戦での敵味方の識別がし易いですから派手な原色を使うのが一般的なのですが。」

アンダーセンが不思議そうに言う。

「そういう物なのですか・・・

 基本的には明るい系の原色を使うのですか?」

「はい。地方貴族軍だと黄色とか赤色を使っていると思いますが・・・エルヴィス領ではどの様な色合いで?」

「うちは紺の上衣に袖口のみ赤にしていますね。

 下衣は白ですね。」

「なるほど、それは地味ですね。」

アリスの説明にエイミーが驚く。

「あれで・・・地味?」

武雄は首を傾げる。

「タケオ様はどんな物を作りたいのですか?」

アリスが聞いてくる。

「・・・皆さんに受け入れられるか心配なのですが・・・

 黄土色のような土色をイメージしています。」

「「え!?」」

皆が驚く。

「・・・タケオさん、どうしてそう思ったのですか?」

エイミーが聞いてくる。

「いえ、試験小隊は武具の試験を平時はしていますが、事変の際は偵察任務をするかもしれませんから出来るだけ目立たない服装が良いかと思って戦闘服を作りたいと。

 こんな感じなんですけど。」

武雄はその辺にあった紙にイメージを書く。

それは上下カーキ色の英国式の軍服だった。

「「・・・」」

武雄は「あれ?」と思う。

皆の反応が薄いのだ。

「ん~・・・タケオ様、両脇と両胸にポケットがあるのですね。

 トレンチコートのように肩にストラップもあって、トレンチコートに合いそうではいますけど・・・

 色が地味すぎて皆には受け入れられないと思いますよ?」

アリスが皆の意見を代表して言い、他の面々も頷く。

「そうですか・・・

 では、こういうのはどうですか?」

武雄は今度は詰襟式の海軍系の服を書く。

「白に金ボタンですか・・・シンプルですね。

 ですが・・・軍服としては、ちょっとないですね。」

「んー・・・そうですか。」

武雄は「発見を遅らせるための服という概念がないのかぁ」と思うのだった。

「キタミザト様、どうされますか?」

ラルフ店長が苦笑しながら聞いてくる。

「なんとも言えませんね。

 これは今すぐどうこうしようとは思っていませんので、エルヴィス邸に帰ったら私用で作って貰うかもしれませんね。

 それに練習用に作業服も作りたいですしね。

 作業服はこんなのなんですけど。」

武雄はまた大まかに書いてみる。

「緑の生地なのですね・・・これは地味ですね。

 皆様に不評そうですが・・・畏まりました。」

ラルフ店長が頷く。

「タケオ様の所は戦闘時の服装は地味だったのですか?」

アリスが聞いてくる。

「そうですね・・・確かに剣同士の戦いの時代では派手にしていたと思いますね。

 兵士全員を真っ赤な鎧・・・甲冑で揃える『赤備え』という事もしていたと思います。」

「赤備えですか?」

「はい。私がいた所の甲冑は基本が黒地だったそうです。

 そのなかで兵士全員が赤に統一することで戦場で目立つことが出来たらしいですね。

 戦場で目立つと相手の大物が寄って来てより武勲を上げられたそうですが、それだけ敵を引きつけてしまうので『赤揃えは武勇の証』と言われていたそうです。」

「ふーん・・・王都守備隊も赤いフルプレートでしたよね?」

アリスがアンダーセンに聞いてくる。

「はい、赤いフルプレートですね。

 アリス殿に1着下賜されておりますよね?

 キタミザト殿が仰ったように赤いフルプレートは『武勇の誉』です。」

「はい。私のは陛下からの下賜品ですね。

 という事は、タケオ様の所も色が派手な人達が居たのですね。

 なのになぜ地味に?」

アリスが「派手のままで良いのでは?」と聞いてくる。

「いや・・・戦術が変わったからですよ。

 偵察任務や少数で敵の側面を突くために目立たない服装で潜む必要があったのです。

 なので、土色や緑色など擬態色の服装に変わっていきました。

 それに・・・周りが全員派手だと逆に地味な方が目立つと思いますけどね?」

武雄はそう説明をするが「小銃の発達が最大の転換期なんだろうなぁ」と思うのだった。

「なるほど。

 確かに周りが青、赤、黄色になっていたら土色も目立つかもしれないですが・・・

 たぶん兵士が納得しないのではないですか?」

アリスの言葉に周りの面々が頷く。

「そうですか・・・まぁそれはエルヴィスさんや小隊の人達と話し合いますかね。」

武雄は難しい顔をしながら頷くのだった。


「そう言えばキタミザト様。

 爵位授与式の服装はどうされるのですか?」

ラルフ店長が聞いてくる。

「ん?・・・これではダメですか?」

武雄が自身の身なりを見る。

「タケオ様、ダメです。礼装が必要です。」

「アリスお嬢様・・・私は持っていませんが。」

「そうでしたね、では作りましょう。

 店長さん、お願いします。」

アリスが即決する。

「では、昼用と夜用を作りましょう。

 キタミザト様、奥に。」

「・・・はい。」

武雄はなぜかガックリしながら再び奥に行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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