第351話 昨日の干物屋。変なキノコ発見。穀物問屋にも寄ってみよう。
マイヤーと別れた武雄達は昨日の干物屋に来ていた。
武雄とアリスはこの店にある小魚のぶつ切りを大量の塩で塩漬けにした物を全部購入し、エルヴィス領の北町のワイナリーに送ろうとしたら店長から「ワイナリーに腐っているものを送るとワインが全滅する可能性が高いですよ?」と忠告を受けたのでエルヴィス邸に送るよう手配を済ます。
「では、この手紙も添えて送ってください。
輸送中の割れには注意をお願いします。」
「畏まりました。」
「タケオ様、他にも何か買いますか?」
「ん?そうですね・・・そう言えば全部の棚をまだ見ていませんでしたね。
軽く見ますか。」
武雄達が棚を軽く見ていく。
・・
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エイミーにミアもクゥも懐いたようでチビッ子達は2人ともエイミーに抱かれていた。
そんなエイミーを先頭に皆が「これは美味しそうだ。」「これはどうやって料理をするのだろう?」とか言いながら進んでいたのだが、ある棚の前で最後尾を歩いていた武雄がピタッと止まって考え込んでしまう。
「タケオ様、どうしました?」
ちょっと先を歩いていたアリスが戻って来る。
「ん?・・・どうという訳ではないのですけどね・・・」
武雄が言いよどむ。
アリスが棚に掛けられた商品名を見る。
「な!・・・タケオ様!」
顔を赤くして武雄をジト目で睨んでくる。
「え?私が悪いのですか?」
武雄が苦笑を返す。
「なんでこんなものを見つけるのですか!?
『精力キノコ』って何ですか!
名前に精力なんてつける意味が分かりません!」
「いや・・・私もほとんど同じ感想ですよ?
何だろうなぁと思って。」
「こんなの怪しいに決まっているでしょう!?」
「怪しいか怪しくないかではなくて『本当に効くのか?』が重要です。」
「うぅ・・・そうですけど・・・
まさか、試そうなんて思っていませんよね?」
アリスは若干上目遣いで聞いてくる。
武雄は「それはどういう意味でしょう?期待しています?」と思い、微妙な顔をアリスに返す。
そう言えばウィリアムさんが『レイラさんの目を盗んで買うのが大変だ』と言っていたなぁと思う。
・・・武雄は何も言わずに精力キノコを5個取る。
「タケオ様!?まさか!?」
「買いましょう。」
「その・・・ミアちゃんもクゥちゃんもいますけど・・・」
「・・・まぁ、そこはそれで・・・それに食べるのは、私達だけではないですし。」
「どういう・・・まさかレイラお姉様に?」
「今日の夜が面白そうですね。
あ、一応、店長さんに調理方法を聞いてみましょうかね?」
「タケオ様がやる気なのは伝わってきます。
でも体に害があれば買いませんからね?」
「そこは当たり前ですよ。」
武雄とアリスは皆の目を盗み店長を探すのだった。
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干物屋を出て今は王家ご用達の仕立て屋に向かっている。
支払いはエイミーが「レイラお姉様より第3皇子一家の経費で落とすと言われました」と言って率先して払っていた。
「キタミザト殿、何を買っていたのですか?」
アンダーセンが聞いてくる。
「ええ、干しキノコ(精力キノコ)と干しエビを買いました。」
「今日の夕飯はタケオさんが作るのですか?」
エイミーは少し期待した目を向けてくる。
「ん?エイミーさん、気になりますか?」
武雄は微笑みながら聞いてくる。
「はい!今日は王家一同で夕食を取る事になっているのです!
もうすぐ父上も領地に帰るようですし、皆で食べれるのは随分先になりそうですから。
なにか1品作って貰えませんか?」
「え?」
後ろにいたアリスが驚きの顔を向けてくる。
「ん?アリス様、どうしました?」
「いえ・・・王家の方が一同に会するとどんな風な夕飯になるのかなぁ?と。」
アリスは少し目線を逸らせながら質問をする。
「大して変わりませんよ?なのでタケオさんが作ってくれると美味しい物が食べれると思って。」
「そうですね・・・食べたいですか?」
「はい!」
「・・・良いですよ♪」
武雄は軽く考えてからエイミーに向かって優しそうに微笑む。
エイミーは「やったね!」と嬉しそうだ。
アリスは後ろから「タケオ様が悪だくみしている顔をしている」と呆れるのだった。
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武雄達は王家ご用達の仕立て屋に向かう途中にある穀物問屋に寄っていた。
「んー・・・」
武雄が一通り見た後、店の一角で悩んでいた。
「タケオさん、何を悩んでいるのですか?」
エイミーが聞いてくる。
「いえ、探している穀物がなくてですね。」
「なんていう物ですか?」
「米とかライスというのですけど。」
「んー・・・食べたことがないですね。
美味しいのですか?」
「そうですね、私がいた所の主食でしたね。」
「主食?」
「はい。こちらではパンやパスタが一般的ですが、私がいた所では米やライスという穀物を炊いて食べるのが一般的でした。
もちろんパンやパスタも食べていましたけどね。」
「食べ物が豊富だったのですね」
「ええ、美味しい物が一杯でしたよ?
ちなみに米があったら私の知識だとあと2倍くらいの数の料理が出来ますね。」
「え!?それは絶対見つけるべきです!?
国中を探してみますか!?お爺さまや父上に頼んでみますか!?」
エイミーが興奮気味に言う。
「いや・・・そこまでは・・・でもいつか見つけてみたいですね。」
武雄は苦笑する。
「むぅ・・・」
エイミーが腕を組んで悩む。
「はは、気長に探すべきですよ。
まずは今日の夕飯ですね?」
「はい!よろしくお願いします!」
武雄とエイミーは笑い合いながら他の棚を見に行くのだった。
・・
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「タケオ様、何かありましたか?」
アリスが聞いてくる。
「そうですね・・・これなんかどうでしょう?」
武雄がそこにあった豆を取る。
「んー・・・なんでしょう?固い殻の豆に見えますが。」
「銀杏木の種だそうです。
なんでも冒険者組合初代組合長の酒のツマミだと書いていますね。」
「本当ですね。」
アリスが但し書きを見て頷く。
「これも使いましょうか。・・・あ、小売りをしてくれますかね?」
「聞いてみましょうか。」
武雄とアリスは店員を探すのだった。
・・
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「エイミーさん、ありがとうございます。」
武雄がエイミーにお礼を言う。
「いえいえ、今日の夕飯の為です。」
エイミーが嬉しそうに返事をする。
問屋なので小売りは出来ないと最初は言われたのだが、エイミーが店長に「お願い♪」といった瞬間OKになった。
この問屋はエルヴィス邸のある街にも卸していたので、小豆を卸して貰えるように頼み店を出てきたのだった。
「じゃあ、仕立て屋に向かいましょう。」
エイミーの掛け声のもと武雄達一行は移動し始めるのだった。
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