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第349話 エルヴィス家のマッタリタイム。王都での事件で謝罪が来た。

「「・・・」」

スミスとフレデリックは手紙を読み終えて何も言わないで思案している。

「そうなるじゃろう?」

エルヴィス爺さんが苦笑する。

「主、王都に・・・いえ陛下になんて返信をしましょうか。」

「レイラも陛下も今回の事件について謝罪が記載されておるの。

 それで王都で何とかケジメを付けさせるから大事にしないでほしいという旨じゃの?」

「はい。ですが、主が認めた婚約を王家が否定するとは前代未聞の珍事です。

 で、その後、タケオ様は襲撃を受けたとの事ですね。

 レイラお嬢様からの手紙では、タケオ様もエルヴィス家に被害があってはならないと無抵抗で受けたそうですが・・・

 これは流石に王都に対して厳重な抗議をするべきだと思います。」

「うむ。じゃがアリスがぶちギレて王都の第2騎士団と一戦交えたの。

 そこが問題じゃ。」

「レイラお姉様からは『演習』として第2騎士団とアリスお姉様やタケオ様は示談をして陛下も追認したとの話でしたね。」

スミスが頷きながら言う。

「いかなる理由があろうとも仕掛けた方に罪が問われる場合が多いのが今の世じゃ。

 犠牲者が1人も出なかったことは、アリスが本気でなかったからなのじゃろうが、それでもこれだけが独り歩きをするとアリスの罪を言い出す輩が出てくるじゃろう。

 だが、この件を蒸し返すとそもそも何で第2騎士団と戦ったのかの真相を調べる事になる。

 そうすると王家の者が婚約を破棄するよう強要した事とそれに第2騎士団員を連れてきたことにつながる。」

「はい。」

「王家としては、婚約を破棄するように強要したことを蒸し返したくない。

 第2騎士団としては、王家の者の命令とは言え強要の片棒を担がされ、尚且つ2人に負けたことへの恥を蒸し返したくない。

 エルヴィス家・・・まぁこの場合はアリスとタケオとしては、アリスが第2騎士団に喧嘩を売ったことを蒸し返したくない。

 なので3者はこの件には即示談で対応した。

 そう捉えるのが良いじゃろう。」

「「はい。」」

スミスとフレデリックが頷く。

「で、後の問題はタケオが襲撃をされたとの話をどう捉えるかじゃ。」

「私達への宣戦布告ですか?」

スミスが目を細めながら言う。

「街中であればそう捉えられるが・・・フレデリックはどう思う?」

「そうですね。

 たまたまエルヴィス家だったとしたら・・・王家の評判を落とす事と王家と貴族間で亀裂を生みだす工作と捉える必要があるかと。

 そうすることで一番の利益が出るのは・・・」

「周辺諸国じゃの。

 うちと王都に亀裂があるという話が国境に面している貴族に蔓延した場合、王都派と反王都派での争いになるじゃろう。

 ただでさえウィリプ連合国と面している貴族は王都を嫌っている風があるからの。」

「そうなのですか?」

「うむ、第2皇子の取り巻きじゃよ。

 結局、第2皇子は王座を継げないからの。王都から見放されていると思っているそうじゃ。

 まったく・・・領民の事を考えて領内の整備に力を注いでいれば王都の事は気にならない物を・・・

 まぁうちはいつもカツカツじゃから王都の事については気にしていないだけなのじゃが、余裕がある領地は王都も気になるのかの?」

「主は気にしなさすぎなのではないでしょうか?」

フレデリックが苦笑しながら言ってくる。

「ふむ・・・そうかのぉ。

 結局は王都は国の指針を出して後は地方貴族にお任せじゃろう?

 まぁ外交もそうじゃが、周辺諸国の動静の判断や何か非常事態があれば王都からの指示がくる。

 わしとしては、その程度の関わりでしかないの。

 まぁ陛下は領土拡張を主張する方ではないし、こっちからしっかりとした報告と納税をしていれば運営に関しては介入もないしの。」

「そうですね。」

フレデリックが頷く。

「お爺さま、うちはどんな立ち位置なのですか?」

スミスが聞いてくる。

「王都、反王都・・・どちらにも関与しない。

 まぁ強いて上げれば王家派じゃの。

 そもそもエルヴィス家は時の陛下から王都の東北を守る為に創設された貴族じゃ。

 領民の笑顔の為に良い施政を指揮するのも大事だが、まず初めに魔王国からの王都進攻を食い止めるのが我らの使命じゃ。」

「はい。」

スミスが頷く。

「さて話が逸れたの・・・抗議をどうするか・・・か。

 現状、魔王国内で不穏というより動向が変わろうとしているのは確実じゃ。

 その最中にうちと王家が争っていると思われるのはマズいと思うのじゃ。」

「確かにそうですね。」

スミスが頷く。

「では、主はどう対応されようと?」

「ふむ・・・

 陛下に対しては『王都でしっかりとしたケジメを付けるのであればエルヴィス家としては異議を唱える気はありません。』と伝えるしかないじゃろうの。

 裏書として『タケオ達が納得するのであれば私共は大事にしません。』とな。」

「畏まりました。」

「レイラには陛下への返信内容と『魔王国との国境付近で微細な変化が見られ、今王都と争う姿勢を見せると危ないと考える。陛下に口頭で伝えて欲しい』と依頼をしておくのじゃ。」

「はい、そちらも畏まりました。」

「・・・お爺さま、陛下の方に『相応の補償をします』とありますけど・・・

 補償とはなんでしょうか?」

「うむ、たぶん示談金だろうの。

 話を蒸し返さないでくれという事だろうが・・・まぁ示談金がいくらであろうと気にはしないがの。

 それよりもタケオとアリスが納得する事の方が重要じゃ。」

「そうですね。

 まぁタケオ様とアリスお姉様なら何事も無かったように帰って来そうです。」

「だろうの。

 アリスの手紙には、今回の事件が一切何も書いていないのじゃから2人して大した事とは思っていないのじゃろうの。」

エルヴィス爺さんの言葉にスミスもフレデリックも苦笑しながら頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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