第348話 エルヴィス家のマッタリタイム。パンを作ったよ。
エルヴィス家の客間でエルヴィス爺さんとスミス、フレデリックが昼食後のティータイムを楽しんでいる。
「今日の昼食は絶品だったのぉ。」
とエルヴィス爺さんは言い、スミスとフレデリックも頷く。
「ジョージや料理人達が数日、試行錯誤していましたね。
どれも上手く出来上がっていました。」
「タケオが残していった宿題じゃったの。
えーっと・・・何だったかの?」
「『ピザ』と『クロワッサン』と『クリームパン』です。」
フレデリックが説明をする。
「うむ、見事な出来であったの!」
「はぁ・・・ピザも美味しかったですし、クリームパンもホイップクリームをパンに入れる発想は凄いですね。」
スミスがうっとりしながら感想を言う。
「うむうむ、そうじゃの。
タケオの所では数十のパンの種類があるそうじゃが・・・
この感じを見ると期待が膨らむの。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「ピザにおいては簡単に作れることといろいろな具材を選べるとの事で幅が広がりそうだとジョージが言っておりましたね。」
「うむ、今後の食事が益々楽しみになるの。」
と、客間の扉がノックされる。
エルヴィス爺さんが入室の許可を出すと執事が扉を開け入って来る。
「失礼します。お食事中に手紙が届きましたのでお持ちいたしました。」
「うむ、ご苦労じゃった。」
「こちらになります。」
執事は4通の手紙をエルヴィス爺さんに渡し、退出していった。
「ふむ・・・」
「主、どうされましたか?」
「1通はアリスから、1通はレイラから、1通は陛下から、1通は王城の料理長から・・・
なんで別々に送って来るのじゃ?
そこはかとなく嫌な予感しかしないのじゃが・・・」
エルヴィス爺さんが腕を組んで悩む。
「お爺さま、タケオ様が何かしたのでしょうか?」
「そこは明らかじゃの。
・・・見ない訳にもいかないのぉ・・・どれから見るか・・・」
と、王城の料理長からの手紙を取る。
「主、簡単そうなのを選びましたね?」
フレデリックがエルヴィス爺さんに確認する。
「うむ・・・まずは楽そうな問題から行く。」
と封書を破りなかの文言を読む。
「・・・ふむ、向こうでタケオがマヨネーズを作ったそうじゃ。」
「あれ?レイラお姉様にタケオ様はレシピを教えていたのですよね?」
スミスが首を傾げる。
「うむ、なんでもマヨネーズを作る際のレモンの種類によって風味が変わる事がわかったそうじゃ。」
「?・・・なんでそんな報告を?」
「向こうから情報を出すからこっちからも何か料理のレシピをくれ・・・
そう言いたいのじゃよ。」
エルヴィス爺さんが「ふふん」と鼻を鳴らす。
「・・・別に報告されなくてもタケオ様が帰ってくればわかるのに・・・
王都の人は強欲ですね?」
スミスがため息をつく。
「それだけタケオの料理を知りたがっているのじゃろう・・・
フレデリック。料理長にコレを渡して何か渡せそうな簡単なレシピを返送しよう。」
「畏まりました。ジョージにそう伝えます。」
「うむ。頼むの。」
フレデリックがエルヴィス爺さんから手紙を受け取る。
「さて・・・次か・・・アリスにしようかの。」
アリスからの手紙を読みだす。
「・・・ほぉ。
スミス、フレデリック、タケオが貴族になったぞ。」
「やはりですか。」
「うれしい事ですね。
以前話していた研究所所長に?」
「うむ、確実にされるそうじゃ。
で、王家からの推薦じゃからミドルネームを決める手はずになったそうじゃ。」
「へぇ。で、アリスお姉様は何と言ってきているのですか?」
「うむ。タケオがミドルネームに『エルヴィス』を使って良いか聞いているそうじゃ。」
「え!?うちの家名を入れるのですか?」
「タケオの覚悟とみるが・・・普通は名前の方を入れるの。
それにアズパール王国の慣例じゃと初代ではミドルネームは大恩がある方の名前を入れ、子供のミドルネームは親の名前を入れるかもしくはミドルネームも継承されるかを選ぶのじゃ。
うちは初代様の名前がミドルネームじゃの。
なのでエルヴィス家ではミドルネームも継承されていく。」
「はい。タケオ様は継承でしょうか?」
「そうじゃろうの。
タケオはエルヴィス家に恩があると示したいのじゃろうの。」
「主、どうされますか?」
「わしは良いと思うのじゃが・・・スミスはどう思う?」
「僕ですか?名誉な事だとは思います。
タケオ様ならエルヴィスの家名も落とさないでしょうし。
むしろうちの家名が上がりそうです。」
「うむ、ではこれは許可しようかの。
アリス宛にエルヴィスの家名を入れることを許可する旨の返送を頼む。」
「畏まりました。」
「それとアリスの手紙にも料理のことが書いてあるの。
『家に帰ってきたら王都で発表しない料理をタケオ様が作るから期待して待っているように』
・・・また新しいのを作るのかの?
これは期待せずにはおれぬの。」
エルヴィス爺さん達は期待に胸を膨らませるのだった。
「さてと・・・あと2通か・・・」
レイラからの手紙を読みだす。
「・・・」
何も言わずエルヴィス爺さんは眉間に皺を寄せながら読み進める。
そしてアズパール王からの手紙を次に読みだす。
「・・・」
エルヴィス爺さんは手紙を読み終え、腕を組んで窓の外を見て考え事を始める。
スミスもフレデリックも何も言わないで待っている。
「はぁ・・・これが最後で良かったの。」
しばらく考えていたが2人の方を見てため息交じりに言葉をこぼす。
「お爺さま、どうされたので?」
「何と言うか・・・まぁ2人ともとりあえず2つとも読んでみよ。」
エルヴィス爺さんがスミスに手紙を渡すのだった。
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