表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
352/3563

第344話 魔法師専門学院へ。(臨時面接。)

学院長室の扉の前で女子3名が緊張している。

「ジーニーちゃん、ケイちゃん・・・どうして私も呼ばれたのだろう?」

1人の学生がうな垂れながら他2名に聞いてくる。

「さぁ・・・さっきの演習かしら?

 でも学院長に呼ばれるほどの失敗はパメラはしていないよね?」

ケイと呼ばれた学生が思案しながら言う。

「うぅ・・・2人には面倒ばっかり・・・ごめんね・・・」

パメラが涙目になりながら謝る。

「同級生でしょう?気にしないの!

 みんなで卒業するんだから!」

ジーニーがパメラを励ます。

「うん!」

パメラは頷く。

「じゃ・・・入ろうか・・・」

ジーニーが扉をノックする。

中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。

中には複数の人が扉の方を向いて座っていた。

「学院長、失礼します。

 409番ジーニー・ブロウズ、423番ケイ・ケー・・・

 アリス様!!!」

中に居た1人の人物を前にジーニーは固まる。

「・・・すみません、皆さま・・・

 409番ジーニー・ブロウズ!!最後までやり切りなさい!」

トレーシーが皆を前に怒鳴る。

「はい!申し訳ありません!

 409番ジーニー・ブロウズ、423番ケイ・ケード、412番パメラ・コーエン。

 3名、指示により参りました!」

3名が横一列に並び礼をする。

「はい・・・まったく・・・まぁしょうがないか。

 アリス殿、左から順にジーニー・ブロウズ、ケイ・ケード、パメラ・コーエンです。」

トレーシーは呆れながら言う。

「わかりました。」

アリスは席を立ちジーニー達に近寄りジーニーとケイの手を取る。

「遅くなってごめんなさい。

 アナタ達のお父さんは立派に勤めを果たしてくれました。

 私と一緒に街を救ってくれてありがとう。」

アリスは2人の手を握りながら感謝を述べる。

「「アリス様!ありがとうございます!」」

ジーニーとケイは涙を流しながら答える。

「アリス殿、いろいろ話をしたいでしょうが・・・」

トレーシーが声をかける。

「はい、私事でお時間を取らせてすみません。」

と、アリスは2人に手に力を込めて微笑みを向けてから席に戻る。

ジーニーとケイは涙を拭う。

「さて・・・気持ちを持ち直す時間が必要でしょうが・・・

 こちらの方々にお名前と簡単な自己紹介だけでもお願いいたしましょうか。」

「タケオ・キタミザトです。

 アリス・ヘンリー・エルヴィス様の部下で婚約者です。」

「「アナタが・・・」」

ジーニーとケイは驚く。「あの戦闘報告の指揮官だ」と。

「第2皇子ニールの長女、エイミー・ニール・アズパールです。」

「王都守備隊 第三魔法分隊長 ドム・アンダーセンです。

 控える4名は私の部下になりますので自己紹介は省かせていただきます。」

「「「・・・」」」

学生3名が固まる。

「あぁ・・・こうなりますよね。

 エイミー殿下、アンダーセン分隊長、すみません。」

トレーシーが平謝りをする。

「構いません。ねぇ?第三魔法分隊長?」

「はい。」

「ありがとうございます。

 では、本題に入りましょう。

 409番ジーニー・ブロウズ、423番ケイ・ケード。

 2人は第一志望がエルヴィス領で間違いないね?」

「「はい!」」

2人は返事をする。

「ふむ・・・キタミザト卿。」

「はい、わかりました。」

「え?卿?」

ケイが呟いてしまう。

トレーシーは「あちゃぁ・・・」と頭を抱える。

「ふふ、私キタミザトはこの度、爵位を拝命する事になりました。

 で、エルヴィス領にて研究所を創設する事にもなったのですが、アナタたち2人のうち1名を試験小隊に採用できるのか・・・確認を取らせて欲しくてお呼びさせていただきました。」

武雄が微笑みながら言う。

「質問をよろしいでしょうか?」

「構いませんよ。」

「試験小隊とはどんなことをするのでしょうか?」

ジーニーが確認をする。

「平時においては武具の試験運用と戦術の考察です。

 領内の事変に対しては騎士団、兵士とは別に動く独立部隊となります。

 と言っても人員は少ないので前面に立って武勇を発揮するという訳ではありません。」

「そうなのですか。」

ジーニーは頷く。

「まぁ、まだ設立が決まっただけですので、具体的に何をするかは決まっていませんね。

 これから手探りでやっていきますよ。」

武雄が苦笑をする。

「ちなみにですね。

 キタミザト卿の研究所は我ら王都守備隊と同格組織になる運びです。

 陛下の直属機関になります。」

アンダーセンが補足する。

武雄は何も言わないが「そこは初めて聞きましたが?」とアンダーセンに目線を送るとアンダーセンは苦笑を返してくる。

「私達2人の内1名なのですか?」

ケイが聞いてくる。

「はい・・・学院長、採用数を言っても良いですか?」

武雄がトレーシーに言う。

「・・・構いません。あと数日ですから。」

「今年のエルヴィス領での魔法師小隊への採用は3名とする意向があります。」

「「え?」」

ジーニーとケイが驚く。

自分たちの代では4名がエルヴィス領を志望しているし、過去の求人人数が4名だったから安心をしていた。

「それは何とかなりませんか?」

「ごめんなさい。現時点では採用についてはお爺さまである伯爵と武官、文官で考えています。

 ですので、魔法師小隊へは3名、第4小隊に4名とする意向なの。」

アリスが申し訳なさそうに言う。

「エルヴィス家第4小隊・・・」

今まで黙っていたパメラが顔を曇らせながら呟く。


学生の間では地方の貴族で兵士の事務方の求人があることは知られている。

通称「敗者の部隊」・・・学院の成績劣等者が行くとされる部隊。

そこに行くものは兵士として前線では働かない。事務方の仕事をすると言う。

最前線の魔法師部隊に憧れて入って来る学生たちには不評であり、未来が閉ざされた感があるのだ。


パメラは思う。「あぁ・・・しょうがないか・・・成績が悪いし・・・」

「あ・・・一人落ち込んでいますが・・・タケオ様、どうしましょう?」

アリスが心配そうに武雄に聞いてくる。

「思った通り第4小隊は不評ですね。」

武雄が苦笑しながら言う。

「確かに第4小隊が兵士の事務方であるのは事実です。

 魔法師を目指して切磋琢磨している皆さんからは不評でしょうね。

 ですが、兵士880名の事務を支える第4小隊は組織運営の要です。

 物資の管理、各小隊の運用計画、給料の支払い等々とっても大事なのです。

 そこだけは間違ってはいけませんよ?」

「はい・・・」

パメラが頷く。

「・・・他領がどうなっているかは知りませんが・・・

 今後、第4小隊にある任務が追加される運びなのです。

 それは伯爵家や文官の長期移動をする際の護衛兼庶務が入ります。」

「警護と庶務?」

ケイが聞いてくる。

「ええ。帯同してもらい緊急時の防御線の構築と食事等のお手伝いです。

 はっきり言えばアクアで水を作ったり、ファイアで火を起こしたりして欲しいのです。

 万が一、襲撃があった場合は護衛兵士の補助をして防衛戦の構築、負傷者の手当ですね。」

「打って出ないのですか?」

アンダーセンが聞いてくる。

「なんでこっちから質問が?

 まぁ良いでしょう。

 出ませんよ。第4小隊は護衛対象者の生命を最後まで守り切るのが任務です。」

「タケオさん、普通の護衛任務と何が違うのでしょうか?」

エイミーが聞いてくる。

「簡単に言えば戦闘には関わってはいけません。護衛対象者の身に沿って健康管理をするのが目的です。

 なので防衛線が崩壊する前に護衛対象者とその場から逃げ、無事に町や街まで護衛するのです。」

「陛下警護である近衛分隊と同じ任務ですね。」

アンダーセンが頷く。

「王都守備隊でもそう言った役割が?」

「ええ。近衛分隊は我ら戦闘系分隊を置いてでも陛下と王城まで帰還することが求められています。

 そもそも我ら王都守備隊の本来の姿は、警護任務部隊ですからね?

 戦争をする部隊ではないのです。」

「・・・あれほどの戦力で?」

エイミーが呆れながら聞いてくる。

「はい、少数精鋭です。

 極稀にどこかの戦場で息抜きをさせていただいていますが。」

アンダーセンが苦笑する。

「息抜きの方法が変だと思うのは私の考え違いでしょうか・・・」

トレーシーが頭を捻る。

「なので、第4小隊はこれから戦争で矢面に立たなくても十分大変な業務が待ち受けています。」

武雄が話を締めくくる。

「はい。」

パメラはいつの間にか話が大きくなっていて頷くしかないのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ