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第340話 寄宿舎訪問。(武雄とアンダーセンの会話)

エイミーが「これ以上この話は危険だ!」と思い、さっさと退出し、武雄達一行は学院長室を退出して203号室に来ていた。

「ん~・・・」

武雄は室内に入ると見事に何もなかった。

石積の壁に窓が一つ。

広さは武雄がエルヴィス邸で初めに泊まった部屋と同じくらいでクローゼットが扉を入った横の壁内に作られている。

照明は天井から吊られた小さめのシャンデリアがあるのみだ。

武雄は今に至っても照明の仕組みがわからないでいるが・・・気にしないことにしている。


ちなみにミアとクゥは203号室に到着した瞬間、武雄達から離れ日向の場所に向かい、2人して丸くなって昼寝を始める。


「タケオさん、どうですか?

 間取り的にはどこも同じなのです。

 この部屋は私の隣なので、出入口とクローゼットの位置が反対なだけですね。」

エイミーが聞いてくる。

「見事に何もないので家具の配置が想像出来ないです。

 ・・・エイミー殿下、お聞きしたいことがあるのですが。」

「タケオさん・・・さっきから気になっていましたが・・・

 プライベートでは『さん』でお願いします。アリス様も!」

エイミーがジト目で抗議してくる。

武雄とアリスは同時にアンダーセンを見る。

「まぁ、ご本人が良いと言うのですから良いのではないでしょうか?

 公式の場では殿下でお願いします。」

アンダーセンは苦笑しながら言う。

「本当に良いのでしょうか?アリスお嬢様。」

「わかりませんが・・・するしかないのでは?」

武雄とアリスがヒソヒソ話をする。

「私が良いと言えば良いのですよ?

 ささ、『さん』付けで!」

「エイミーさん。」

「はい!何でしょう♪」

エイミーが嬉しそうに返事をする。

「・・・エイミーさん、私が各部屋を見たいとわがままを言った場合はどこまで通用しますか?」

「そうですね・・・望めばお爺さまの寝室や書斎、王城の宝物庫、第1から第3皇子夫妻の寝室、書斎以外は見られますね。

 タケオさんとアリス様ならお爺さまは許可をすると思います。」

エイミーはスレンダーな胸を張る。

「そうですか・・・アリスお嬢様、女性隊員の方々、ちょっと相談なのですが。」

「「「はい。」」」

3名が返事をする。

「エイミーさんの部屋を見てきてください。」

「は!?」

エイミーが驚く。

「エイミーさんの説明だと私達はエイミーさんの部屋は見られるそうです。

 なので、家具がどう配置されているのか、家具の種類は何を揃えるのか。

 机の高さやクローゼット内の家具の配置、ベッドの大きさ等々見てきてください。」

「「「わかりました!」」」

「え?・・・ちょっと・・・あれ?」

「はいはい、エイミー殿下行きますよ~。」

エイミーが楽しそうな3人に両脇を抱えられながら退出していく。

「あれ??・・・なんで!?・・・あぁ!私の部屋も入れておけば良かった!」

エイミーは急展開に付いて行けないようで叫び声だけを残し、3名+1名は楽しそうに隣部屋に向かうのだった。

・・

「女性3人が集まると姦しいとは言いますが・・・」

武雄がため息をつく。

「キタミザト殿、待っている間どうしますか?」

アンダーセンが苦笑しながら聞いてくる。

「そうですね・・・雑談でもしますか。

 扉を閉めてください。」

「はぁ。」

部下が一人廊下に出て扉を閉める。

「さてと・・・アンダーセン第三魔法分隊長殿。」

「はい。」

「昨日の貴族2家の追放と今日の爆発・・・王都守備隊の手際が良いのですね。」

「・・・何を言っていらっしゃるのですか?」

アンダーセンは「はて?」と首を傾げる。

「昨日の今日です。

 昨日の会議の内容を知っているなら、今日の爆発は関連があるとみるのが普通です。

 それに・・・王都守備隊が緩すぎます。

 これが犯人不特定の事件なら、こんなのんびりはしていないでしょう。

 王城警備で何日も詰めるはずです。

 明らかにもう爆発は起きないとわかっているから・・・そんな犯人はいないのがわかっているから通常の行動をせよと命じられるのです。

 でも、陛下は随分と思い切ったことをしましたね?」

「・・・」

「別に今回の追放等々に異議を唱えるつもりもありません。

 私が受けた慣例の実施者は罰を受けたのでしょう?

 それに、今後は私がやり返しても良いと言われましたので、これと言って思う所はありません。

 ただ・・・まぁ事件は大きくすれば大きくするほど真実は隠せるでしょうけど、唐突だったなぁという感想を述べただけです。

 ・・・私の独り言ですよ。」

武雄のでっかい独り言を腕を組んで聞いていたアンダーセンだが・・・

「キタミザト殿、名推理ですと言いたいのですが、残念ながら違いますね。

 ・・・確かにその通りだったら面白いのですけど。

 王城は第1騎士団と第2騎士団で固められています。

 それに陛下の考えでは、いつも通りに行動することで住民に対して安心感を与える狙いがあります。」

「そうなのですか・・・陰謀渦巻く!というのは題材としては王道でしょう?」

「ははは、そうですね。

 本屋での流行り物はその手の物らしいですね。

 それに私達からすれば陰謀が渦巻く前に発覚して欲しい物ですね。

 仕事が多くなってしまいますよ。」

アンダーセンは苦笑しながら言う。

「確かにそうですね。対処する方の身になれば・・・早めに発覚して他の人に対処してほしいですよね。」

「そうです。

 そうだ、キタミザト殿。私からも一つお聞きしても良いでしょうか。」

「ええ、何なりと。」

「先ほどクラーク議長に苦言を言っていましたが、どうしてでしょうか?

 あのまま謝罪を受け入れても良かったのではないですか?」

「先ほども言いましたが、王家からの謝罪は受け入れようと思います。

 というより、どんな補償内容でも受け入れる気はありますからね?

 それが王都の判断と言うならそれを持って私が王都を評価するだけです。

 評価結果は秘密ですけど。」

「では、なぜ?」

「私はウィリアム殿下達王家が捻出しようとしている補償金額に異議を唱える気はありません。

 ただ・・・先ほどのクラーク議長の説明を聞いてしまうと、王家が支払う事だけで終わらせようとしているのが気になります。

 まぁ最高責任は王家なのでしょうから、王家から払うと言われてしまえばそれまでですが・・・

 首謀者達が居た貴族会議議員が無傷なのが気になりますね。

 私は、貴族会議議員が自身の報酬を削るなど、何らかの形で反省をするのかを見ているのです。」

「キタミザト殿、それは随分と強硬な手段なのではないでしょうか?

 それでは今後、貴族としてやっていくのに支障があるのではないですか?」

アンダーセンが難しい顔をする。

「でしょうね。

 ですが・・・そもそも、その前提は間違っていますからね?」

「何をでしょうか?」

「私もアリスお嬢様も別に『どうしても貴族になりたい』と思っているわけではありませんから。

 クラーク議長に対して強硬な言い回しをして何か報復されても別に気にしませんし。

 まぁエルヴィス家に対して報復をするなら・・・対抗しても良いですけど。

 クラーク議長も地方貴族を敵に回す考えはないでしょうね。

 先ほどの会話でもエルヴィス家には言及しませんでしたし。」

「「え!?」」

アンダーセンと部屋にいた部下が驚く。

「私はなりたいと思って貴族にはなっていません。

 今すぐ返上しろと言うなら返上します。」

「ちょ・・・ちょっと待ってください。

 貴族は特権階級ですよ?それをいらないと?」

「ええ、私には貴族になる意味がそれほどないですからね。

 貴族でなくても研究は出来ます。

 それにお3方がエルヴィス邸に遊びに来た際に『王都には勤める気はないし、領地持ちになる理由もない。』と言いました。

 それでも陛下やウィリアム殿下は私を貴族にさせて国に留まらせたいと考えているようですね。

 なので研究所所長という特別職と研究費用を捻出しようとしています。」

「・・・」

「こと私に関しては普通の貴族ではないのです。貴族への憧れも薄いですし・・・

 陛下達が私を貴族にさせたいのも、私が国外流出した場合に国が受ける損害と私への報酬額を見比べた場合、報酬の方が安いからでしょう。

 それに研究所を私が運営することになれば、私の知識を国で使えるという利益もありますからね。」

「と、言うことは・・・簡単に言えば、王都を裏で牛耳ると?」

「あぁ、それはないですね。

 私もアリスお嬢様も基本的にエルヴィス領や家族が大好きなのです。

 エルヴィス領が発展していくこと、スミス坊っちゃんがちゃんと成長してくれることが望みなのです。

 私はエルヴィス領の事で手一杯なんですよ。

 国政の事を考える余裕はないですね。

 研究をする気になっているのも、最前線に立つ兵士達の生存率を高めたいと思っているだけですから。」

「そうなのですか?」

「そもそも、私の知識では地方を発展させるくらいが関の山なんです。

 国全体で使えるかは微妙です。」

「本当に?」

「少なくとも私はそう思っていますね。

 あとは私の知識を見て、国政がわかる人が応用し実施すれば良い事です。」

「・・・それは・・・陛下はご存じなのでしょうか?」

「知っていますね。」

「そうですか。」

アンダーセンが腕を組み何やら考える。

と、扉が開きエイミー達が帰ってきた。

「タケオ様、戻りました!」

「おかえりなさい、アリスお嬢様。

 エイミーさんもありがとうございました。」

「はい・・・」

エイミーはちょっと・・・いや、かなり疲れた顔を武雄に向ける。

武雄はそんなエイミーを苦笑しながら迎えるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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