第339話 寄宿舎訪問。(議長の謝罪?)
学院長室と書かれている部屋の前で止まり、エイミーが扉をノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
中には堂々とした出で立ちの初老の男性が起立して待っていた。
「クラーク学院長代理、アリス・ヘンリー・エルヴィス殿、タケオ・キタミザト卿をお連れしました。」
エイミーが挨拶をする。
「はい。エイミー殿下、ご足労をおかけして申し訳ありませんでした。
アリス殿、キタミザト卿、初めまして。この王立学院学院長代理をしているオーブリー・ボブ・クラークと言います。」
クラーク議長が礼をする。
「アリス様、タケオさん、学院長代理は貴族会議の議長もしています。
兼務をされるぐらい権力を持っている方なのです。」
エイミーが真顔で説明する。
「ははは、所詮は代理です。
本業は貴族会議の議長です。
本来の学院長は本日未明の爆発で行方知れずでして・・・申し訳ありませんが、私が対応させていただきます。」
「いえ、本日は、あのような件があったにも関わらず予定通りに対応いただきありがたく思います。」
「慌てふためいても良いのですが、陛下からも出来るだけ貴族は平常通り過ごすよう指示がされております。
我ら貴族と王家が共にいつもと変わらない日常を取ることで、住民に何も心配はいらないと思わせたいからとの意向がございます。」
「わかりました。」
「ささ、皆さん、座って歓談いたしましょう。」
クラーク議長が席を勧める。
「クラーク議長・・・お2人は議長と話しに来たわけではないのですよ?」
エイミーが釘を刺す。
「良いではないですか。
今日の午後もキタミザト卿の話題になるのでしょうから。
私もキタミザト卿の人となりが知りたいのですよ。」
「タケオさん、アリス様、どうしますか?」
エイミーが武雄達に顔を向ける。
「喜んで歓談させていただきます。」
「はい、タケオ様の言う通りですね。」
武雄とアリスは席に着き、クラーク議長も席に着く。
エイミーも渋々武雄達の対面に座る。
第三魔法分隊の5名は適当に空いている席に座るのだった。
「さてと・・・キタミザト卿、アリス殿。
この度は王都での不祥事・・・貴族会議議員の家族が取った行動。
誠に申し訳なく思います。」
クラーク議長が頭を深々と下げる。
武雄は真顔で謝罪を聞いている。笑みはない。
「私が議長を務めており、監督責任があるのは重々承知しております。
再発防止策も現在各議員から持ち寄って精査しており、今後はこのような事がないよう貴族会議議員一同努めて参ります。
また、陛下や王家からの補償提案が審議中でして正式に確定しておりません。
何卒、もうしばらくお待ちになってください。」
「クラーク議長。
私は今後同様な事がなければ良いと考えています。
今回の件については、王都の判断を尊重したいとは考えてはいます。
が、私が補償内容に納得するかは別問題です。」
「え!?」
エイミーが驚く。
「ちょっと・・タケオ様?」
アリスが武雄の手を握る。
「王家の方々からの謝罪は受け入れましょう。
ですが、貴族会議からの謝罪については私は補償等の中身を見てから受け入れるかを考えます。」
「ふむ・・・そうでしょうね。
実施者が我ら貴族会議議員の家族なのですから・・・それくらいは当然でしょうね。
キタミザト卿、それで構いません。
今日の会議で補償内容を確定させます。
まずは中身を見てご納得いただけるなら貴族会議からの謝罪を改めてさせていただきます。」
「わかりました。
クラーク議長、よろしくお願いします。」
「はい、わかりました。
キタミザト卿がご納得いただける内容にしてみせます。
さて・・・ご一行が来た目的であるエルヴィス家のスミスの部屋は203号室になります。」
「は!?203号室!?」
エイミーが再び驚く。
「エイミー殿下・・・そんなに嬉しがらなくても良いのですよ?」
クラーク議長が苦笑しながら言う。
「別に喜んでいま・・・ちょっと待ってください。
グレースの部屋はどこですか?」
「201号室ですね。」
「・・・」
エイミーが無言で頭を抱える。
「えーっと・・・部屋割りで何かあるのですか?」
アリスが聞いてくる。
「2階は貴族の子供達の個室が割り当てられているのです。
王家が201から順に入って行くのですが・・・
現在、201号室がパット殿下、202号室がエイミー殿下になっており、
来年の春にはエルヴィス家のスミスが203号室で、アズパール大公の孫娘のグレース殿下はパット殿下が卒業されますので201号室になります。」
「・・・あれ?なんで王家の隣に?」
アリスが聞く。
「陛下とニール殿下の意向です。」
「お爺さまと父上か・・・」
エイミーがガックリとする。
「あぁ・・・これはなんとなくですが・・・
スミス坊ちゃん争奪戦なのでしょうか?」
タケオが苦笑しながら言う。
「ええ、今日の朝お2方より『よろしく!』と力強く言われてしまいました。」
「もう・・・なんで・・・」
エイミーが顔を赤らめてうな垂れている。
第三魔法分隊の面々は苦笑しか出来ずにいる。
「・・・まぁ、私としては何も言えないですね。
アリスお嬢様はどう思いますか?」
「えーっと・・・スミスとエイミー殿下がお互いに好き合うのでしたら特には・・・」
武雄もアリスも苦笑しか出来ないのだった。
「お2方の意向もそうなのですが・・・
実際の所は、エルヴィス家の嫡男ですからね。
ここを卒業すれば即当主になってもおかしくない。
さらにはレイラ殿下と鮮紅のアリスが姉という家名が今回入って来る貴族達から頭2つ分ぐらいは抜け出ています。
そうやって考えたら王家の隣に来れるのはエルヴィス家だけだったのです。
偶然とは怖いですね?こっちの思惑が全部ピッタリに。」
クラーク議長は苦笑しながら部屋割りの説明をするのだった。
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