第336話 24日目 完了を告げる爆発音。
王都に爆発音が響き渡る。
「!?」
アリスと武雄はベッドから飛び起きる。
武雄が照明をつける。
「皆!?無事ですか!?」
「タケオ様!平気です!」
「きゅ!」
「主!私もクゥも平気です!」
皆が武雄に返事をする。
「アリスお嬢様、とりあえず着替えましょう!」
「はい!」
「ミアとクゥはいつでも動けるように。」
「はい!」
「きゅ!」
武雄とアリスは身支度を整え始める。
武雄は時計を確認する。
「4時か・・・」
・・
・
装備も付け終わり、「さて、どうしようか?」と思った時に扉がノックされ、アリスが「どうぞ」と返事をすると執事が入って来る。
「失礼いたします。」
執事も少し慌てているようで息を若干切らしている。
「何事ですか?」
「はい、王城近隣の貴族の屋敷がある区域で複数の屋敷が爆発し、炎上しています。
幸いなことに王城への飛び火はありません。
現在、警備局の兵士と第1騎士団、第2騎士団による消火と貴族区域の封鎖と近隣住民の避難誘導が行われています。
確認をしており報告が遅くなり申し訳ございませんでした。
つきましてはキタミザト殿ご一行には部屋で待機をしていただきたくお願い申し上げます。」
「いえいえ、確認は大事です。
王城への被害はないのですね?」
「はい。炎上している貴族の屋敷は王城からは風下となります。
こちらには延焼はない物と考えております。」
「わかりました。
レイラ殿下達はどうされていますか?」
「王家の方々は広間に集合されております。
また王城内の王家の方々が居る区画とこの部屋がある区画も王都守備隊により警護されております。」
「わかりました。
少し落ち着いたらで構いませんので、小腹を満たす物を頂けますでしょうか。」
「畏まりました。
現在、王城内の料理人が兵士用の戦時食と避難した近隣住民の炊き出しを開始しております。
少しお待ちいただくかもしれませんが、お持ちいたします。」
「対応している兵士や避難されている住民が最優先なのは当然です。
なので少し落ち着いてからで結構です。」
「畏まりました。」
執事が礼をして退出していった。
・・
・
「貴族の屋敷がある区域で爆発ですか・・・」
「昨日の会議の後の事件・・・王都は怖い所ですね。」
「ふぁぁ・・・」
「くわぁ・・・」
チビッ子2人が眠そうにあくびをする。
「ミア、クゥ、移動はしなくて済みそうなので寝ていて良いですよ。
何かあれば2人とも起こしますから。」
「わかりました、主・・・」
「きゅ・・・」
2人はベッドまで飛び、毛布に包まる。
武雄とアリスは机の横にある椅子に座り、お茶の用意を始めるのだった。
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広間には第1皇子家族と第2皇子家族とアルマとレイラが揃っている。
エイミーとパットは今日は寄宿舎に戻って寝ていた。
明日は夕飯のみ王城に来る予定だ。
「お母様、大丈夫なのでしょうか?」
アンがセリーナに聞く。
クリナはアルマがあやしている。
「まぁ、こちらに被害はないとは言っていたし、大丈夫なのではないかしら。
問題があれば私達は避難させられるからね。」
セリーナがアンの頭を撫でながら言う。
クリフとニールは炎上している貴族の屋敷が見えるらしく窓越しに見ている。
「アルマ、レイラ、王都ではこんなことが頻繁にあるの?
王都に引っ越してくるのに不安があるのだけど?」
ローナが聞いてくる。
「少なくとも私が嫁いでからはないですね。」
レイラが答える。
「そう、治安が悪いわけでもなさそうね。
とりあえずお義父さまとウィリアムが今は報告を受けているのでしょうからそれ待ちね。」
「はい。」
レイラが頷くのだった。
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アズパール王の書斎には、アズパール王とウィリアム、オルコット、王都守備隊総長、第一近衛分隊長、第1騎士団長、第2騎士団長が居る。
「報告を受けようか。」
アズパール王が座りながら対面の者達に言ってくる。
「「「は!」」」
王都守備隊総長、第1騎士団長、第2騎士団長が返事をする。
「王都守備隊はタナー家、レルフ家、ティレット家の粛清を完了しました。
撤退を完了しています。
隊内での死傷者はありません。
元当主達には尋問も実施し完了しております。
押収した資料、金品は第1騎士団と共に輸送をし、第八兵舎内の密封室にて管理しております。
詳細な報告は後日になります。
消毒後は王城の警備に入りました。
以上。」
「第1騎士団はファーディナンド家、ハドリー家、文官7名の粛清を完了しました。
団内での死傷者はありません。
2家の粛清を行った隊は火葬及び埋葬を実施し、帰投する予定です。
消毒後は王都に居る部隊で貴族の屋敷がある区域の封鎖を実施しております。
以上。」
「第2騎士団も武官19名の粛清を完了しました。
対象者以外の騎士団員に死傷者はありません。
消毒後はアズパール王立学院、寄宿舎、魔法師学院の警備に入りました。
以上。」
「うむ。
ご苦労だった。」
「「「は!」」」
「押収した資料は王都守備隊 第一情報分隊で精査し報告書をまとめよ。
金品については分解し、金、銀はそれぞれ塊にして王城の宝物庫へ。
鉄や宝石は市場にわからないように流しておけ。」
「は!」
王都守備隊総長が返事をする。
「さてと・・・そろそろ警備局長達が来るか?
今の混乱状況を聞くか。」
と、アズパール王の書斎の扉がノックされる。
「構わぬ。」
「失礼します。」
書斎の前に居る警備兵が入って来る。
「警備局長と軍務局長が参られました。」
「そうか、通せ。」
「は!」
警備兵は両名を通す。
「「失礼します。」」
「緊急事態だな?」
「は!
現在、タナー家、レルフ家、ティレット家より出火中であります。
しかし、一部の隣家以外目立った被害はなく。延焼の心配もない為、あとは鎮火を待つのみとなっています。」
警備局長が報告をする。
「3家は無事か!?」
「・・・いえ・・・残念ながら・・・
現在も確認中ですが、避難所で3家の関係者は誰1人として発見できません。」
「徹底的に確認しろ。今日は2家を追放したばかりだ・・・さらに3家とは・・・凶事は続くとでもいうのか?
それになぜ爆発したのかも確認をしないといけない。
原因がわからなければ他の貴族に注意も促せないからな。」
「は!」
「ふむ。
・・・そう言えば、被害が出た一部の隣家とはどこだ?」
「ハドリー邸です。
レルフ家と近い間隔で屋敷が建っている為、爆風で屋敷の一部に穴が開きました。
ただ、明日にでも復旧が可能と判断しております。」
「人的な被害はなかったのか?」
「はい。引き渡しの為に総監部の者が数名おりましたが死傷者はおりませんでした。」
「そうか・・・こう言った場合は見舞金は必要なのだろうか?」
アズパール王が「はて?」と首を傾げる。
「どうでしょうか・・・対象の貴族が追放されておりますし・・・
残された金品で修復は可能と私は考えますが。」
オルコットが言う。
「それは明日にでも判断しよう。
今は3家の安否と近隣住民の避難を最優先で対応しろ!」
「は!」
警備局長が礼をする。
「で、軍務局長からの報告を聞こうか。」
「は!
現在王都の内では目立った混乱はありません。
貴族の屋敷がある区域を第1騎士団が封鎖しており、野次馬が遠目から見ているぐらいです。
また、王都の門は検問を置き、通行する人や物の検査をしております。」
「不審者は居たか?」
「現在の所、発見できません。」
「そうか・・・原因がわからないならば、強盗や屋敷内での不審火等いろいろな観点から見ないといけないな。
警備局長、軍務局長。
あまり兵士を酷使させる訳にはいかないが、現状の混乱が鎮まるまで少し兵士には気張って貰わねばな。
その後は早急に第1騎士団、第2騎士団と共同で原因の究明をし、報告書を提出せよ。
では、各員引き続き対応せよ!」
「「「「「は!」」」」」
王都守備隊総長、第1騎士団長、第2騎士団長、警備局長、軍務局長が退出して持ち場に戻って行った。
・・
・
書斎には、アズパール王とウィリアム、オルコット、第一近衛分隊長が残った。
「オルコット。」
「は!」
「粛清は終わったな。
新貴族だが・・・しっかりとした教育もしろ。
今回のようなふざけた慣例の報告は、もう二度とされる気はないからな?」
「は!畏まりました。
では、陛下、会議まで失礼します。」
オルコットが退出していった。
「・・・さてと、広間にはもう少ししたら行こうか。
ウィリアム、マイヤー、座って話そう。」
「はい。」
「は!」
2人は適当にその辺の椅子を持ってくるのだった。
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