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第334話 粛清命令。

終課の鐘が鳴っている。

アズパール王の書斎には、アズパール王とウィリアム、アルマ、レイラ、オルコット、王都守備隊総長、第1騎士団長、第2騎士団長が居る。

アズパール王とウィリアムは戦闘時用の軍服を着ていた。

王家の者は座っており、他の者は机を挟み対面に立っている。

鐘が鳴り終わると腕を組んで目を瞑っていたアズパール王が目を開ける。

「時間か・・・

 第1騎士団長、現状を報告せよ。」

「は!

 全対象者の監視に抜かりはありません。

 鐘が鳴る前に対象者全員が帰宅もしくは就寝したと報告が来ています。」

「そうか。

 王都守備隊総長、第1騎士団長、第2騎士団長。」

「「「は!」」」

アズパール王は懐から蝋封された封筒を取り出し各々の前に置く。

「命令!」

「「「は!」」」

「昼間の2家を含む5家。

 第2騎士団副団長を含む武官19名。

 専売局備蓄部参事を含む文官7名。

 以上を王家転覆を企てたこと、貴族間の抗争を企てたこと、機密情報を流出させたことにより粛清する。」

「「「は!」」」

3名が一斉に封筒を破り中の紙を見る。

「各員その命令書に記載されている者が対象者だ。

 王都守備隊はファーディナンド家、ハドリー家以外の3家が対象だ。

 粛清後は資料の押収もするように。

 消毒も忘れるな。」

「は!」

「第1騎士団はファーディナンド家、ハドリー家の掃討と文官の粛清だ。

 そして貴族屋敷一帯の封鎖をしろ!」

「は!」

「第2騎士団は武官の粛清だ。

 終わり次第、第1騎士団の支援に回れ。」

「は!」

アズパール王に3名が返事をする。

「行動開始は朝課の鐘、賛課の鐘までに終わらせろ。

 誰一人として討ち漏らすな。

 以上だ、行け!」

「「「は!」」」

3名はアズパール王の書斎を退出していった。

・・

「オルコット。」

「は!」

「この1年数か月の内偵と今回の慣例の首謀者を一気に処理した。

 背景ややり口等押収した物を精査してさらに発覚することもあるだろう。

 今日1日で貴族5家が居なくなった・・・新規貴族の選定をせよ。」

「は!

 どういった配分で行いますか?」

「クリフ周辺から1名、ニール周辺から1名、ゴドウィン伯爵の所から1名、テンプル伯爵から1名だ。

 選定をするに当たって、全貴族にクリフの次期王位の継承とウィリアムの公領への異動の通知をしろ。

 また、キタミザト、バビントン、アルダーソンが新貴族になった事も伝えよ。

 バビントン、アルダーソンについては、先の会議での領主持ちとその領内で研究所の所長をする事、キタミザトに関してはエルヴィス領内にて研究所の所長をする事は確定済みとする。

 研究所の設立要件については検討中とする。」

「は!」

「うむ、明日の昼からの会議で皆に発表する。

 貴族選定案を持って来い。

 通達はその後になるだろう。」

「は!

 では、私は執務室に一旦戻ります。」

オルコットがアズパール王の書斎を退出していった。

・・

「と、ウィリアム、隣の部屋の者達を呼べ。」

「はい、父上。」

ウィリアムが書斎の端にある隣室の扉を開き中の者を呼ぶ。

「父上、失礼します。」

とクリフ、ニールが入って来る。

「うむ、賛課の鐘まで付き合え。」

「「はい。」」

クリフとニールが頷く。

アルマが皆のお茶の用意を、レイラが人数分の椅子の用意をする。

「さ、座って話そうか。」

アズパール王の言葉に皆が頷き椅子に座る。


「さてと・・・粛清が始まるが。

 クリフ、ニール、聞きたいことがあるだろう?」

「はい、父上。

 全容の説明をお願いします。」

クリフが聞いてくる。

「全容か・・・

 この話は1年数か月前に遡る。」

「はい。」

「そもそもエルヴィス領のエルヴィス伯爵がいる街へゴブリンが襲撃したことの経緯を調べるように第三情報分隊を動かしたことが始まりだ。」

「第三情報分隊・・・噂されている分隊ですね。」

「噂があるのか?」

クリフの言葉にアズパール王が聞き返す。

「実態がわからない分隊の噂があります。」

「あぁ、それはそうだな。

 第三情報分隊は分隊長や隊員は我とオルコットのみ知っている。」

「なぜ公表しないのでしょうか?」

「内偵部隊だからな。」

「え?」

ニールが驚く。

「皆に顔が知られたらマズいので会議にも出て来ないし、我にだけ報告をしてくる。

 ちなみにオルコットが知っているのは名前だけで本人達に会ったこともないぞ。

 クリフ、王位を継ぐ際に第三情報分隊長が挨拶に来るはずだ。

 それまでは詮索は無用だ。

 下手に詮索すると・・・誰か居なくなるぞ?」

「・・・わかりました。」

クリフは返事をし、ニールも頷く。

「話を戻すか。

 1回目のゴブリン軍がエルヴィス領への強襲をしたことについて、我は集結方法がわからなかった。

 ゴブリン200体・・・普通なら誰かしら気が付くが誰も目撃情報がない。

 いくら戦争中だからと言ってもだ。

 なので、魔王国に面している3貴族の内偵をした。」

「3貴族?エルヴィス伯爵家にも内偵を?」

「あぁ、自作自演も考えた。

 誰かが手引きをしているのはわかるが、誰が・・・どの貴族が関与しているのか確認が必要と思ったのだが、内偵した結果3家から何も出て来なかった。

 それにゴドウィン伯爵とテンプル伯爵・・・その時は子爵だったか?

 2人はエルヴィス領が強襲されたことを目にして自領内に生息している6割の魔物の掃討を実施している。」

「6割・・・大規模過ぎませんか?

 そんな数を掃討することが可能なのですか?」

ニールが聞いてくる。

「報告書の倒した数が生息想定数の6割だったからそう言ったが・・・まぁ、各町、村の周囲をしらみつぶしに探してネグラを強襲したらしい。

 で、3伯爵は何も出なかったのでウィリプ連合国、カトランダ帝国に面した貴族を次に内偵したのだが。」

「「うちですか?」」

クリフとニールが驚く。

「あぁ、言っただろう。

 どの貴族が関与しているのか確認が必要と。

 まぁどの地方貴族も賄賂以外は出て来なかった。」

「賄賂は出てくるのですか・・・」

ニールがうな垂れる。

「あぁ、多かれ少なかれ賄賂は出るだろう・・・そこまで大事にするようなことではなく今後監視することで終わらせたのだ。

 で、次に王都勤め25家の内偵を始めたら」

「実施者がわかったのですか?」

「ふむ・・・結果としてゴブリン軍を招き入れたりしたことについてはわからなかった。今でも謎だ。

 だが、他の情報がもたらされた。」

2人が息をのむ。

「ティレット家とレルフ家がクリフの所にある専売局関連の情報をカトランダ帝国に渡しているという報告がなされてきた。」

「え!?」

クリフが驚く。

「我も目を疑ったぞ。

 各品目の生産量、おおよその備蓄量、工場が建っている場所、警備体制・・・

 もう丸裸も良い所だ。

 で、すぐに粛清しようかと思ったのだが。」

「僕が止めました。」

「ウィリアムが?」

ニールが聞いてくる。

「はい。2貴族がそこまでの情報をどうやって仕入れたのか。

 そこをもう少し調査しようと父上にお願いしたのです。」

「うむ、なので今度は王都の文官、武官・・・騎士団を内偵したのだが、第1騎士団は平時は各地方貴族の警備体制、演習内容の確認。第2騎士団が専売局の警備体制の確認をしているのだが、第2騎士団 副騎士団長一派と専売局の文官が関与していた。」

「それは・・・」

「あぁ、ズブズブだ。筒抜けも良い所だ。

 クリフの専売局の警備を変えてもすぐに向こうにわかってしまうというわけで・・・

 警備の変更等々は放置した。もう何をしても徒労に終わりそうだからな。

 万が一の為に第1騎士団5小隊がクリフの公領近くに待機していてな。

 いつでも動けるようにはしていた。

 で、今から1か月前にティレット家とレルフ家と第2騎士団 副騎士団長一派を粛清することを決め王都守備隊第一情報分隊と第1騎士団が粛清準備と監視に入った。」

「そうなのですね。」

アルマが頷く。

「で、今回のタケオの城門とその後のアリスとの演習の件だが、まったく。粛清前日に、それも粛清対象の第2騎士団が関与するとはな・・・

 我はどうすれば良いのかわからなかったぞ。

 もし第2騎士団が臨戦態勢維持になっていたら粛清は日延べ・・・

 もう・・・どんな対応が正解なのかわからん。

 まぁ第2騎士団とタケオが示談してくれてありがたかったな。

 結果的に前日に第2騎士団を疲弊させることもできたしな。」

「慣例の方にも関係が?」

クリフが聞いてくる。

「あぁ・・・会議での話が嘘という訳ではないのだが、実際はタケオ達を第三情報分隊が前日から監視していた。

 レイラの報告を受けて焦ったぞ。

 タケオ達が町に入る前日に隣町に入ってタケオ達を待ち受けて監視するように手配していたからな。」

「そうだったのですね。

 でもタケオさんが慣例実施時に第三情報分隊は何もしなかったんですね?」

レイラが聞き返す。

「あぁ、そもそもタケオ達が来る時点でどんな貴族や文官が近寄るか気になっていたのでな。

 近寄ってきた貴族の洗い出しの為に監視をしたのだが・・・

 まったく別の者が釣れてしまった。

 第三情報分隊は何があっても手出しは無用としていた。

 なので実施者の追跡に専念したのだ。

 実の所、我はタケオは自身に脅威が及べば反撃するだろうと思っていてな。反撃しないとはまったくもって考えもしなかった。

 はぁ・・・タケオの命が散っていたら今頃王都は壊滅していたな。」

「ええ。」

アルマが頷く。

「で、慣例の実施者はファーディナンド家、ハドリー家、タナー家、レルフ家の次期当主達や息子だ。」

「・・・ここでもレルフ家?」

「あぁ。情報流出と慣例、なぜか同じ貴族が関与している。

 当主は専売局関連の情報、息子は慣例を実施・・・普通に考えてレルフ家はカトランダ帝国から何かしらの指示で動いていたのだろう。

 ・・・カトランダ帝国は何を狙っているのか。

 我が国の騒乱が狙いなのか、戦の前段階なのか。

 押収物からどんな内容が出てくるのかで対応方法が決まるだろうな。」

アズパール王の言葉にその場の全員が頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 武雄が絡まない場所で国家が動いているのがよくわかる。 [一言] 復讐譚だと生き残った子供が王家に復讐を企むシーンの始まりだな。何故、襲われたか解らず家族を殺したものを恨む。
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