第330話 どうやって見つけたのか。ウィリアムの境遇。
「父上、どのようにして慣例の犯人を特定したのですか?」
ニールが聞いてくる。
「ん?怪我を負った従者が人目を避けてまずはどこに行くと思う?」
「・・・傷を治しに・・・でもどこに?」
「・・・報告書にあったのだが・・・
町はずれの魔法具商店でケアをかけてもらい、すぐに代わりの着替えを最速で作っていたそうだ。
王都守備隊がその被害者を探し当てて事情を聴き、犯人像を絞ると共に、昨日王城内に居た人物とすり合わせをしたらこの2人だった。
で任意で事情聴取したら白状したという訳だ。」
「・・・なんで主にバレないのでしょうか?」
クリフが質問する。
「・・・その質問の答えが今回の王家転覆と我が判断した理由だが・・・
そもそもこの2名はウィリアム宛に訪問に来た新貴族や豪商の従者を狙っていた。」
「「え!?」」
クリフとニールが驚く。
ウィリアムは事前に報告書を見て知っていたのだが、伏し目がちにアズパール王の言葉を聞いている。
「王城内でのウィリアムの立場は微妙だ・・・
次期王位の継承はほぼない状況で武官、文官共にあまり良い待遇はされていない。」
「陛下それはち」
オルコットが何か言おうとするがアズパール王が手を上げ止める。
「オルコットは否定するだろうが・・・
事実ウィリアムはニールが領地に異動した後、いろいろ王都の事を想って提案していたが、ことごとく実施されなかった・・・ウィリアムには苦労をかけているな。
それでもウィリアムに挨拶に来る新貴族や豪商はいた。
特に豪商はウィリアムが何とか王都を住み良い街にしようと下準備をするために知り合い、意気投合した者達だったのだが・・・その従者がこれらに狙われた。
ウィリアムに挨拶に来る者はウィリアムの境遇を理解している者がほとんどだ。
そして従者もそれを知っていたらしい。
主を経由してウィリアムに直訴しても良かったものを・・・慣例をされた者は報告を上げなかったそうだ。」
「何故でしょうか?」
クリフが聞いてくる。
「わからんな。
まだそこまで被害者の声を集約できていないらしい。
直訴しても自身の主の評判を落とすと考えたのか、ウィリアムがさらに孤立するのを哀れんだのか・・・
慣例を受けた者が何を考えたのか・・・まだわからんよ。
もしその時に言ってくれていたら今の今までこんな行為を慣例などと言わせはしなかったな。
即刻制裁をしていたさ。
だが、事実として直訴はされていない。」
「はい。」
「あの2家の息子にしてもウィリアムを窮地に貶めるのが目的なのか、王家の評判を下げるのが目的なのか、騒乱が目的なのか・・・
はたまた全部なのか・・・これから解明するしかない事だ。
時間はかかるだろうが徹底的に調査する必要があるだろう。」
「はい。」
クリフが返事をする。
「さてと・・・
城内の警備局長はいるか?」
「は!」
文官の中から1人が席を立つ。
「今回の件をどう思う?」
「当日の警備兵が別室待機なる文言を変とは認識していましたが、放置してしまいました。
すぐにキタミザト殿をお探しすれば、ここまでの大事にはならなかったと考えます。
誠に申し訳ありませんでした。」
「ふむ・・・まぁそうだな。
だが、逆を言えばタケオが居たからこそ発覚したとも言える。」
「はい。」
「そこでだ。
今の受付をすれば終わりという行程ではなく、抜本的に城の入り口から受付そして客間ないし招待者への案内までの一連の行程を見直せ。
こんなことは二度とあってはならない。
それに受付をした警備兵・・・採用してまだ2年らしいな。」
「・・・はい。」
警備局長が難しい顔をして俯く。
「・・・減給3か月だな。」
「え?」
警備局長が顔を上げる。
「さすがに2年目の者に全責任を負わせられんだろう・・・
上司と同僚・・・お前もだが・・・警備局全員が減給3か月だ。」
「は!陛下、寛大な処置ありがたく思います。
我ら警備局一同、今後このような事がないよう再発防止を徹底し、警備を厚くするようまい進して参ります。」
警備局長が深々と頭を下げる。
「軍務局長。」
「は!」
呼ばれた男性が席を立つ。
「ふむ。
軍務局長、警備局長、両局には採用してから中堅になるまでの教育の仕方を変更せよ。
警備の仕方や王都の法律の熟知度等々も加味した物を作れ。
もちろん不埒者を取り押さえる事や殲滅する技量も重要だからな。」
「「は!」」
軍務局長と警備局長が返事をし、席に座る。
「今後このように王城内で我ら王家の許可なく無辜の民を傷つけた者には厳罰に処す。
オルコット、クラーク。
文官、武官、貴族関係ないからそのつもりで周知させろ。」
「「は!」」
名指しされた2人は返事をするのだった。
「ウィリアム、過去に遡って慣例を受けた者に謝罪と迷惑料を払わないといけないだろう。」
「はい。」
「一人当たり金貨100枚を用意する。」
「わかりました。
報告書を読み順次謝罪に行きます。」
「うむ。
もし豪商の者がウィリアムの異動先に一緒に行くと言うなら出店の便宜も計れ。」
「はい。」
「次はタケオの件だが」
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隣室の武雄が席を立つ。
「タケオ様?」
アリスが「どうしたの?」と言う顔をする。
「これ以上は聞く必要がないでしょう。
慣例に対しては今後は返り討ちにしても良いとわかりました。
私への対応内容は今聞いてしまうのは不公平でしょう。
私は部屋に戻ります。」
「そうですね。
では、私も」
「きゅ。」
「主、戻りましょう。」
「わかったわ。
アリス達を部屋まで送って頂戴。」
「畏まりました、レイラ殿下。」
武雄達一行と案内の執事は退出するのだった。
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