第329話 貴族会議再開。陛下の判決。
とある一室にレイラ達と城門で皆を待っていた執事数名が入って来る。
入って来た以上の椅子が並べられていた。
「さてと。アリス、タケオさん、この部屋にしばらく居てね。
あまり声を大きくしちゃダメですからね?」
レイラが真面目な顔つきで言い武雄達は頷く。
「レイラお姉様、ここは?」
「ふふ、広間の横にある控室よ。
普段、会議中は誰も入れないのですけどね。
ウィリアムが私達はここで待機するように指示を出したらしいわ。」
レイラの言葉を聞きながら皆が座る。
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広間の扉を開けアズパール王が入室してくる。
アズパール王が座り、立っていた皆が座ると王家(3皇子とパット)と貴族会議議員、文官幹部、王都守備隊総長と第1・第2騎士団長による会議を再開した。
「さてと・・・皆いるな?
パット。」
「はい!」
パットは起立する。
今度は顔を青ざめさせ、若干震えている。
「ふむ・・・その顔を見れば事の重大さがわかった様だな。
もういい、座れ。」
「はい!申し訳ありませんでした!」
パットは座り、うな垂れる。
「クリフ。」
「は!」
アズパール王の呼びかけにクリフが立ち上がる。
「・・・今回は伯爵が認めた婚約を王城の門前で王家の者が破棄するよう命ずる前代未聞の珍事が発生した。
そして王家の命令を地方伯爵の配下が拒否する珍事も発生した。
世間の評判はどうなる?」
「第1皇子の息子の評判はがた落ち。
エルヴィス伯爵は王家の命令を拒否し、謀反を企む気配あり・・・と。」
「クリフ、それは違うな。
第1皇子の息子ではない。王家の評判が落ちるのだ。
そしてエルヴィス家はパットの思い付きで謂れのない誹謗を受ける。
世間は面白可笑しく噂する。
『鮮紅を射止められなかった王家と、王家の求婚を無下にしたエルヴィス家の対立は?』と煽るかもしれない。
・・・クリフ、パットに対してちゃんと罰を与えよ。
しっかりと教育しておけ。
お前の後はパットなのだからな。」
「は!陛下、この度の件、申し訳ございませんでした。」
クリフが頭を長い時間下げる。
「・・・でだ。
今回の件なのだがな。
パットは15歳で成人の扱いはされるが寄宿舎に入っているので、王家の特例で成人扱いはしないという風にする。
かなり強引だが・・・アリスとタケオにはそれで納得してもらう。」
「はい。」
「エルヴィス伯爵にも迷惑をかけるだろう。
エルヴィス伯爵、アリス、タケオ、3者に対し相応な金額を・・・示談を申し込む。
その際の詫び状の内容と支払い可能な金額を後で話し合いたい。
会議終了後、第1皇子一家皆で我の書斎に来るように。」
「は!畏まりました。」
クリフは再度頭を深々と下げてから座る。
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広間の横にある控室。
武雄とアリスが2人にしか聞こえないように内緒話をしている。
「タケオ様、何だか大事になっていたのですね。」
「そうですね。
パット殿下は成人されていたのですね。
だからレイラさんも微妙な回答しかしなかったのですね。」
「・・・んー・・・
これはどう動くのでしょうか?」
「さて・・・少なくともエルヴィス家が特別扱いをされる期間が発生しそうですね。」
「お爺さま・・・目立つの嫌いなのですけど・・・」
「まぁ・・・王家の方が穏便にすると言っているのですから『そうですか』と言って時間が過ぎるのを待つしかないですね。
時間が経過すれば噂も聞こえて来なくなるでしょう。」
「そうですね。
今は大人しく家の中にいるしかないですね。」
2人は頷くのだった。
ミアとクゥはお昼寝タイムに入りました。
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「さてと・・・
ファーディナンド、ハドリー、居るか?」
「「は!」」
アズパール王に呼ばれた貴族会議の者が席を立つ。
「おお、すまんが前に来てくれ。」
アズパール王の言葉に「なんで?」という顔をしながら前に出てくる。
アズパール王の前に立った時・・・
バサッ・・・
アズパール王は紙の束を2人の前に放り投げる。
「今回、タケオに慣例をしたのはお前たちの息子達だ。
それがその報告書だ。
内容は簡単に言えば王家転覆を狙ったものだ。」
「あ・・・え・・・」
「・・・そんな・・・まさか・・・」
2人の顔が蒼白になっていく。
「信じられないかもしれないが事実だ。
さきほどお主達の息子から自供も取れた。
2人は家に帰せないがな・・・」
「「・・・陛下・・・」」
2人はガックリと膝をつく。
「お主達は先々代から貴族になっていたな・・・
残念だがそれも今日までだ。
今まで王家に忠誠を誓ってくれたこと・・・感謝する。
今後は王都以外で余生を過ごせ。」
アズパール王は一旦、そこで言葉を止め、席を立ち2人を見る。
「王家転覆を狙った事により現時点を持って2家の爵位を剥奪する!
王都より即刻一家を退去させよ!」
「「は!」」
オルコットとクラーク議長が返事をする。
「王都より2家族を連れ出せ!」
王都守備隊総長が号令を発すると扉が開き王都守備隊隊員が入って来てグッタリしている2人を広間から連れ出す。
・・
・
「はぁ・・・貴族を裁くか。」
アズパール王はため息をつきながら席に着く。
「陛下・・・軽い刑で終わらせたこと・・・本当によろしいのですか?」
クラーク議長が聞いてくる。
「・・・あの2家の者は今後、死ぬまで監視の目はついてくる。
確かに殺す事は簡単だ・・・だが一瞬で終わる死刑は本当に今回の罰として正しいのか?
これから死ぬまでの期間、自分達の家族が・・・王家転覆を目論んだ息子を恨みながら生きそして死んでいくのが最良の刑だと思う。」
「陛下がそうおっしゃるのでしたら・・・
わかりました。あの2家の関係者は今後武官、文官、貴族・・・未来永劫どれにも就けない事、周知いたします。」
「あぁ。」
アズパール王が頷くのだった。
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