第325話 武雄達の城門での考え。
時間的には会議が始まった頃の話になる。
武雄達は城を出て近くのカフェで昼食後のお茶をしていた。
「はぁ~・・・城の外は気兼ねしなくて良いから楽だわ。」
レイラがダラっとして椅子に座っている。
「レイラお姉様・・・ちゃんとしないと・・・」
アリスが苦笑する。
「え~??良いじゃない。護衛が居ない外出なんて王都に来て初めてよ。
それに店の一番奥だし、誰も見ていないでしょうから構わないでしょう?」
レイラがダラッとしながら答える。
「レイラさん・・・第一近衛分隊の隊員さんが先ほどからあちらのテーブルに居ますよ?」
「え?嘘!?」
レイラが周りを確認するとこちらを見ながら苦笑している兵士達のテーブルがあった。
「あ・・・失敗した。
はぁ・・・それにしてもタケオさん、なんで第一近衛分隊の隊員とわかったの?」
レイラはそそくさと姿勢を正しながら質問をする。
「昨日の第2騎士団との戦闘でマイヤーさんが連れてきていた方があのテーブルにいるので。」
「なるほどね。
そう言えば、気になっていたのだけど・・・ウィリアムもいないし質問して良い?」
「なんでしょうか?」
「アリスもタケオさんも城門でパットに婚約を破棄するように言われたんでしょう?
なんで怒っていないの?
婚約した後に他人にその者と婚約するのは自分だと言われたら怒るじゃない?」
「え?子供の戯言に一々怒ってどうするのです?」
武雄が不思議そうな顔をして答える。
「え?どういうこと?・・・パットは第1皇子の息子よ?
・・・アリスを寄こせと言ったと聞いたのだけど?」
「ええ、私もそう言われた気がしますが・・・
でもパット殿下はまだ子供でしょう?年齢は知りませんが。」
アリスも不思議そうな顔をする。
「・・・なんでアリスは王家の人を知らないのよ。」
「特に知る必要はないと思って・・・皆様に『殿下』と付ければ良いかと・・・
お妃方以外は気にもしていませんでした。
それにわからなければレイラお姉様に聞こうと思っていました。」
アリスが苦笑する。
「パット殿下はスミス坊ちゃんと大して変わらない年齢なんでしょうかね?」
「・・・タケオさん、どうしてそう思うの?」
「見た目が若いですし、あんなことは大人なら言わないでしょうから・・・
スミス坊ちゃんが12歳でしたか・・・14歳くらいなのでしょうかね?
あ、逆に低いという可能性も・・・でも見た目はスミス坊ちゃんと同じか少し上のような気がしますね。」
「という事はエイミー殿下が12歳か13歳くらいですかね?」
「ですかね?それにしてもエイミー殿下、可愛かったですね。」
「ですね。妹にするならエイミー殿下が良いですね。」
「あぁ、アリスお嬢様は3女で下はスミス坊ちゃんですものね。
妹も欲しかったのですか?」
「ええ、妹がいたらどうなったかなぁと昔は思いましたね。」
武雄とアリスはエイミーを妹にしたらどうなるか笑いながら話す一方でレイラが難しい顔をしながら考えている。
「・・・タケオさん、アリス、例えばよ?
成人した男子がタケオさん達の婚約に不服を今になって申し立てて来たらどうする?」
「そもそも他人の婚約に後から異議を申し立てる事自体がいかがな物でしょうか・・・
と、そういう建前でなく正式に言われたらなのですよね?」
「ええ。」
「・・・アリスお嬢様、私の感覚だと突っぱねる権利が私にはあると思うのですが。」
「はい。タケオ様は申し立てを気にする必要はありませんね。
応える義務もありません。」
「と、相手に突っぱねると怒って今回のような決闘になりますか?」
「なるのではないですか?
正式に決闘を申し込んでくれば受けないといけないですね。」
「・・・何だか・・・それで良いのでしょうかね?
で、勝った方がアリスお嬢様と婚約できるのですか?」
「・・・たぶんそういう流れになるのでしょうね。」
アリスも悩みながら答える。
「唐突にアリスお嬢様を物扱いしている気がして何だか嫌なのですけど。
まぁ決闘ですか・・・腕を1本ぐらい切り落とせば良いのですかね?」
「タケオ様、腕は2本しかないですよ。」
「・・・1本か2本切りつけて魔法ですぐに回復させれば問題にならないでしょうね。」
「ですね。」
武雄とアリスは協議を普通にしている。
「・・・つまり、タケオさんは今回は若者の悪戯だと?」
レイラが聞いてくる。
「悪戯とは思っていませんが、近所の綺麗なお姉さんが婚約したから悔しいという思春期の男の子特有の感情だと思っています。
こればっかりは苦笑するしかなかったですね。」
「じゃあ、なんで戦ったの?
子供の戯れ言と一蹴しても良かったのではないの?」
「子供の癇癪に大の大人が出てきたので『なにやってるの?』的に対処しただけです。
で、パット殿下はおいくつなのでしょうか?」
「・・・今は言えません・・・」
レイラが難しい顔をさせて言う。
「・・・わかりました。」
武雄は「王家だからその辺の詳細な事も街中では言えないのだろう」と思い追及はしない。
「ところで、アリスお嬢様。王家の者から求婚されましたが、断ってよろしかったので?」
武雄はクスクス笑いながらアリスに聞く。
「ええ、籠の中の鳥になる気はありませんよ。
どこに行くにも護衛がいる生活は気が滅入りそうです。
私は権力も財力もないタケオ様で十分です。」
「・・・タケオさんは十分に権力と財力を手に入れていると思うけど・・・
まぁ、タケオさんと一緒なら飽きはしないわよね。
美味しい料理も食べられるしね。」
「そこが一番です!」
アリスが満面の笑みで答える。
「おや?私の魅力は料理でしたか。
アリスお嬢様の料理人人生も楽しそうですね。」
武雄も笑顔で答える。
「それは私も参加させて欲しいわ。
あ・・・ちょっと失礼。」
レイラが席を立つ。
「レイラお姉様?」
「ちょっと野暮用ね。少し待っててね。」
「わかりました。」
アリスが頷く。
レイラは兵士達がいるテーブルに近づき、兵士2人とテーブルを離れていくのだった。
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