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第319話 王立研究所の人員はどうしよう?と川に面した候補町。

「あれ?・・・今更で申し訳ないのですが、決めたのは良いのですが、その部署から拒否はされないのですか?」

武雄が質問をする。

「それは総務局に確認しましたよ。

 王家関係の人事で各局から数人を選ぶ場合は、現在の仕事場より優先されるそうです。

 但し、その部署丸ごと全部とかになると話し合いが設けられるそうですが、基本的には部署丸ごと全部はダメと言われましたよ。」

「なるほど。」

ウィリアムの説明に武雄は頷くが、すぐに「んー」という感じで悩み始める。

「タケオさん、なにか?」

レイラが聞いてくる。

「あ、ウィリアムさん達の事ではないのです。

 ・・・レイラさん、研究所設立は、ほぼ確定なのですか?」

「はい。タケオさんの所長就任は決定しています。」

「そうですか・・・なら試験小隊の設立が含まれますよね・・・

 その人事はどうしようかと思って考えていました。」

「お爺さまの所から引き抜きをしますか?」

アリスが聞いてくる。

「エルヴィス領の兵士から採用するのも手なのでしょうが・・・

 試験小隊の主だった人員は王都から選びたいと思います。」

「なんでですか?」

アルマが聞いてくる。

「私が任される予定の研究機関は王立なのです。

 なら王城の文官の息がかかった武官か研究員が送り込まれて来ると思います。」

「確かに十分に考えられますね。」

ウィリアムが頷く。

「王立である以上、監視はされるでしょう。

 ですが、限られた予算なのです。頭でっかちで文句を言うだけの人間は要りません。

 なら、送り込まれる前にこちらから積極的に王都の武官を採用して王都に隠し事はしませんという体を取ろうかと。

 試験小隊なら武器の評価や戦術考案もしてもらいますからね。

 その報告書を書くついでに私の監視報告もされるわけです。

 王都の文官に勝手に人選された者よりも私が面接してから採用した者に監視された方がまだマシという所でしょうかね。」

「・・・同じ監視をされるならタケオさんが気に入った者に監視されたいと・・・

 ちなみにタケオさんの採用基準は何ですか?」

アルマが聞いてくる。

「私の採用基準・・・発想力が豊かか実務者能力があるか・・・面白いかです。

 出来れば歳が上の経験豊富な方が良いのでしょうね・・・」

「面白い?・・・そんな採用基準があるのですか?」

「まぁ面白いというのはアレですけど・・・私は楽しんで研究がしたいので、気分を害さない人が良いでしょうね。」

「なるほど。

 タケオさんもこの履歴書の束から選んでみますか?」

ウィリアムが聞いてくる。

「・・・この履歴書はあくまでウィリアムさん達の随行可能者なのでしょう?

 それを試験小隊に採用しても良いものなのか・・・

 この履歴書から選べるのならとてもありがたいのですが。」

「ふむ、そこは父上に確認してみましょう。

 今日の午後は王家と貴族会議と文官で会議です。

 僕がタケオさんの考えを皆に質問してきます。」

「よろしくお願いします。」

武雄はウィリアムに頭を下げるのだった。

・・

「さてと、武官と文官のトップは決めましたね。

 次は僕たちが移動する街の事です。」

「「はい。」」

アルマとレイラが返事をする。

「「・・・」」

武雄とアリスは黙って聞いている。

「この1週間で領地内の街候補から2つまで絞り混みました。

 1つは農地の中の町でもう1つは川に面した町です。

 クリフ兄上の専売局の移設を考えると町の近くに開発が可能な土地があるのはこの2ヶ所だけだから選びましたが・・・

 最終判断をする前にタケオさん、アリスの意見が欲しいですね。」

「レイラお姉様達は、どちらも良いと思っているのですか?」

アリスが質問をする。

「そうなのよ。

 農地の中の町も川に面した町も街道の要所ではあるし、兵士が駐留するだけの大きさも少しの改修で現在の町から街に拡大が可能な所も選定の理由なのよ。」

「なるほど。」

武雄は頷く。

「タケオさん、2つの土地の資料を見てもらって思い付いた意見を言ってください。」

アルマが言う。

「・・・わかりました。

 資料を見せてください。あとこの近辺の地図も用意してください。」

武雄の言葉にウィリアム達が資料を武雄の前に置き始めるのだった。

・・

「んー・・・」

武雄は首を傾げ腕を組みながら悩んでいる。

武雄以外の者はまったりとティータイム。

アリスに至っては「私はわかりませんからタケオ様よろしくお願いします。」と選定を放棄していた。

「タケオさん、どう思います?」

レイラが聞いてくる。

「この川に面している方なのですけど・・・

 川の資料が・・・川幅と深さはどのくらいなのですか?」

「えーっと・・・その資料は・・・これかな?」

アルマが自分の机から資料を持ってくる。

武雄は資料を読み始める。

「タケオ様、川に何かあるのですか?」

アリスが聞いてくる。

「いえ・・・ちょっと気になって。

 私の知識だと、城というのは大別すると3種類あります。

 山城、平山城、平城です。」

「んー・・・その特徴はなんでしょう?」

「山城は、山の山頂に作り自然の地形を生かした要塞です。

 平山城は、低い山や丘、そしてその周辺の平地を含んだ土地に建てた城。

 平城は平地だけを利用して築かれた城の3種類です。」

「はい。」

「山城、平山城、平城はその順番に防衛施設から政治機能を求めた施設としての意味合いに変わってきます。

 今回の農地の中の町も川に面した町もウィリアムさん達は防衛拠点ではなく政治や経済の町を望んでいるという事が選定した地域を見るとわかります。」

「「はい。」」

レイラとアルマが返事をする。

「私がこの2地域を見た時にパッと浮かんだ考えは、1つ目は領内の農地や産業の発展主軸とした選定、2つ目は物流拠点を主軸とした選定と思いました。」

「物流拠点?」

ウィリアムが聞いてくる。

「はい。

 先の川の資料で書いていましたが、この川・・・幅も300mと広く、そして水深20~25mと深いです。

 ・・・どうやってこんなところに橋を架けたのか・・・気になりますが・・・まぁ良いです。

 で、この川ですけど資料によればエルヴィス領とドワーフの国との間が源泉とありますね。

 エルヴィス領の東町とエルヴィス邸がある街の中間を通り、ゴドウィン伯爵領の王都寄りを通って、河口はテンプル伯爵領に至っているとあります。」

「あ、あの川ですか。

 レイラお姉様、東町までの中間にある舟遊びができる川ですよね?」

「・・・あぁ、昔、アリスがスミスを溺れさせた川ね。」

レイラが思い出しながら言う。

「あれは・・・た・・・たまたまですよ?」

アリスが「しまった」という顔をする。

「・・・その辺の経緯は怖いので聞きませんが・・・

 アリスお嬢様、エルヴィス領の川の幅と水深はどのくらいでしたか?」

「え?・・・そうですね・・・

 川幅は20m程度でしたか・・・深さは・・・4mかもう少し深かったかと思います・・・」

アリスが「んー・・・」と悩む。

「・・・どれだけの水量が湧き出ているのでしょう・・・不思議ですが・・・まぁこれも今は気にしないでおきましょう。

 で、これは水運が出来ると思います。

 それもご丁寧に3伯爵領にも面している。

 商船の航行や兵士の輸送にも活躍ができそうです。」

「んー・・・船での物流ですか。」

ウィリアムが悩む。

「ウィリアムさん、ダメなのですか?」

「いえ、そうでないです。

 ただ、うちの王国は水運を重視していないですね。

 はっきり言えば考えていません。

 大きい川は実はその川ぐらいしかなくてですね。

 あとは船が通れるような深さがある川がありません。

 川の数は多いのですけどね。

 船と言えばテンプル領みたいに海に面した領地での漁船というイメージが強いはずです。

 あとは他国との大型輸送船でしょうね。」

「なるほど。

 では、小型の運搬船を考えないといけないのですか・・・」

「ちなみにタケオ様、小型の運搬船はどうやって動くのですか?

 タケオ様の考えを教えてください。」

アリスが聞いてくる。

「え?何かしらの動力で動かすか、帆を張って風を受けるか、人で漕ぐか・・・」

「タケオさん、この王国での漁船は確か帆を張っていますよ。

 他国の大型輸送船も帆を張っていたような気がしますが。

 遊ぶ船は手漕ぎですね。」

レイラが武雄に言う。

「・・・風が止んだらどうするのでしょうか?」

「魔法師達がエアロとかサイクロンで風を起こして進むのです。」

アルマが言う。

「はぁ・・・」

武雄は生返事を返してしまう。「そりゃ、動力機関は発展しないよね。」と思うのだった。

「ふむ、タケオさん的には川に面した方が地域経済が発展すると思うのですね。」

「はい。

 川を利用しての輸送が出来るようになれば、都市間の移動時間が短縮できると思います。

 そうすると今まで届けられなかった食材や物資が流通出来るようになり、産業の発展が望めます。

 また、軍事的にも移動時間が短くなる為、消費する食材が減る事による戦のコスト削減が見込めます。」

ウィリアムの問いかけに武雄が答えるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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