第314話 アリスと武雄貴族に内定。ミドルネーム?・・・と戦場から連れ帰った捕虜。
「あぁ・・・良かったわ・・・」
レイラがしみじみと言う。
「そんなに資料が多いのですか?」
武雄が聞く。
「多いのもあるのだけど・・・書かれていることが良い事ばかりなのよ。
なので、最終判断ができないでいるの。」
「レイラお姉様、誰かに手伝ってもらえないのですか?」
「うちのウィリアムはコネがなくてねぇ・・・
どこに頼んで良いのかすらわからないわ。」
レイラがガックリとする。
「まぁ、それは明日、資料を見ながら皆で考えましょう。」
武雄がレイラに言うとレイラも頷くのだった。
「そうそう、私達の事を話してしまったけどね。」
と、レイラが小さな指輪が入るような小箱を2個胸の谷間から取り出し、机に置く。
「・・・レイラお姉様、どこに仕舞われていたのですか?」
アリスはため息をつきながら言う。
「いや・・・取られちゃまずいだろうと思って・・・それにこのドレスには収納場所がないのよ。」
レイラが苦笑を返す。
「はぁ・・・極稀にレイラお姉様の思考がわからなくなります。」
アリスがガックリとする。
「ごめんね~こんな姉で。
で、これなんだけど。」
レイラは全く気にしないで話を進める。
机に置かれた小箱を開け2人に見せる。
中には王家の紋章入りのピンバッチ(ネジ留め)が入っていた。
「アリス、タケオさん、2人とも貴族になりましたよ。」
「え?もう決まったのですか?」
武雄が驚く。
「はい。タケオさんは男爵に、アリスは騎士に決まりました。
通達は所属先にされるからお爺さまの所に行くようになっているけど、2人は王城に居ますからね。
先に証を渡しておきます。
私達王家が金、貴族が銀、騎士が銅のバッチです。
城に来る時はこれを胸元に着けていれば、受付で記入しなくて良いですからね。
受付に要件を言えば取り次いでくれます。」
「私が男爵・・・何だか変な感じです。
良いのですか?」
「タケオさんは、その実力があると私達は考えています。」
「んー・・・そうですか・・・
何か式典があるのですか?」
「正式な授与式は、タケオさんがカトランダ帝国から戻ってからになるわね。
実はね、タケオさんが考えた研究所の件なのだけど・・・
今、再協議中なのよ。」
「再協議?」
「ええ。私達の異動とも絡んで、もっと良い研究所の運用方法があるのでは?
となっていて少し時間がかかりそうね。
あ、タケオさん、安心してね。王都に詰めなくても良いし、領地持ちにもしていないから。
あくまで研究所所長に任命するのは決定事項よ。」
「はぁ・・・たったの1週間で設立決定まで持って行ったのですか・・・早いですね。
私は2か月ぐらい先かと思っていましたよ。」
「ふふ、それだけ王家がタケオさんに期待している証拠です。
心して拝命してください。」
「はい、謹んでお受けいたします。」
武雄はレイラに向かって頭を下げる。その光景をレイラもアリスもにこやかに見ている。
「えーっと・・・タケオさんは公の場では『キタミザト卿』、アリスは『騎士アリス』となりますが・・・
式典以外では、ほとんどそんなことは言われないわ。
『殿』とか『様』付けになりますからその辺はあまり気にしないでね。」
「「はい。」」
「あとは・・・タケオさん、ミドルネームを授与式までに考えてくださいね。」
「ミドルネーム?」
「貴族になったらミドルネームが許可されます。
入れる人もいれば入れない人もいてその辺は任意なのですけど。
今回は王家からの推挙という形を取っているから正式に入れることになったのよ。」
「どういったミドルネームが良いのですか?」
「そうね・・・恩ある方の名前なりを入れるのが一般的ですね。」
「じゃあ、エルヴィスとしてください。」
「あぁ、タケオさんはやはりそう言いますか。
予想した通りね。」
レイラが苦笑する。
「タケオ様、良いのですか?そんなに簡単に決めて。」
アリスが聞き返す。
「良いに決まっているでしょう。
ミドルネーム自体、私がいた所では使っていませんし、恩ある方の名前や氏名を入れて良いならエルヴィスさんの所を入れさせてほしいですね。
あ、でもエルヴィスさんに許可を貰わないといけないですかね。」
「お爺さまなら許可すると思いますが・・・
明日、お爺さまに私から手紙を書きますからそれで許可を貰いましょう。
ちなみにダメだったらどうします?」
アリスが聞いてくる。
「ん?・・・アリスにしますか。」
「え!?」
アリスは一気に顔を赤面させる。
「あの・・・その・・・私の名前を?」
「えーっと・・・嫌でしたか?
なら違うなま」
「滅相もありません!!!
喜んで!!」
アリスが嬉しそうに答える。
「アリス・・・自分の名前を入れて欲しいからと言って、お爺さまに『断って』という依頼はなしよ?」
「わかっています!
・・・えへへ♪」
アリス自身は真顔になっているつもりだが、笑みが溢れている。
「まったく・・・まぁ良いわ。
アリス、ちゃんとお爺さまに許可を貰ってね。」
「はい、明日手紙を出します。」
アリスは楽しそうにレイラはため息をつきながら話すのだった。
「それと後々で良いのだけど紋章を決めてください。」
「紋章ですか・・・使ってはいけない物はありますか?」
「王家の紋章に見間違える物はダメです。
まぁそれも含めて提出してもらって王都で吟味します。」
「わかりました、何案か作って確認してもらうようにします。」
「はい、よろしくね。」
「さてと・・・あと、妖精のミアちゃん・・・だったかしら?」
「はい?私ですか?」
ミアもクゥものんびりと3人の会話を聞いていたのだが、いきなり振られて返事をする。
「そうね、こっちがドラゴンの子供?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。
クゥ。」
「きゅ。」
クゥが机に乗る。
「レイラさん、ドラゴンのクゥです。
クゥ、この方はアリスお嬢様のお姉さんのレイラさんです。」
「きゅ。」
「ドラゴンのクゥです。」
クゥが鳴き、ミアが訳す。
「はい、よろしく。
タケオさんを発見した時も居たけど、それどころではなかったのでごめんなさいね。」
「きゅ。」
クゥが頷く。
「さて、タケオさん。このミアちゃんが戦場から連れ帰った者ね?」
「わかりますか?」
「ええ、あの報告は違和感がありましたからね。
タケオさん、簡単で良いから経緯を話してくれますか?」
「はい。では、あの戦闘の後の話をします。」
と武雄はミアを拾ってから部下にするまでの経緯を話すのだった。
・・・
・・
・
「なるほどね。
妖精を目印にしてオーガとゴブリンを誘導させる・・・か。
んー・・・何というか効率的な様な・・・非効率的な様な・・・なんとも不思議な戦法ですね。」
レイラが首を傾げながら言う。
「アリスお嬢様と同じ感想ですね。」
「あら?アリスも?」
「はい。私も不思議だなぁと思いました。」
「んー・・・タケオさんはどう思いましたか?」
「そうですね。
ミアを目印に先導させてただ真っ直ぐに歩けと命令されたのではないかと思います。」
「え?戦闘をしろではなくて?」
「ええ。私が最初砲撃をしていましたが・・・あれらは随分のんびりと歩いていたじゃないですか。
あれが不思議だったのですよね。
なんで混乱しないのだろう・・・と。
で、たぶんミアが括り付けられたオーガが倒されてから突撃が始まったと思います。」
「なるほどね、それなら確かに辻褄が合うわね。
一度、王家内でその辺の話をしたいけど・・・ミアちゃんの安全を確保しないといけないわね。
タケオさん、ミアちゃんはあくまで拾っただけなのでしょう?」
「はい、たまたま戦闘後に拾っただけです。」
「ミアちゃんの事を話さないで転移魔法の事は伝えられないわよね。
正直に言ってしまうと王城の魔法師達がミアちゃんを欲しがるかもしれないわね。
タケオさんはどう思います?」
「さて・・・ですが、ミアは部下ではありますが、私の家族も同然です。
家族に脅威が及ぶなら拒否させてもらいます。」
「そうですね。」
武雄の言葉にアリスも頷く。
「だよね~。
今日の二の舞はご免だわ。
そこはお義父さまやウィリアムと話してどうするか決めますね。」
レイラが苦笑しながら言うのだった。
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