第313話 王城での夕飯。レイラが挨拶に。
「やっぱりプリンは最高です。」
アリスは満足そうな顔をする。
武雄達は夕飯を取ってマッタリとしながらデザートを食べていた。
「その顔が見れて安心しました。
それにしても流石は王城でしたね。
何種類もハチミツがありましたよ。」
武雄は料理をしている内に気分が好転したようでいつもの雰囲気になっており、アリスは心の中でホッとするのだった。
ミアとクゥは・・・
「主!一生付いて行きます!!」
「きゅーーー!!」
プリンを食べてから2人して武雄の足に抱きついてくる。
「あら?クゥちゃんまで。」
アリスはクスクス笑う。
「主、あれはなんですか?」
「何です?と言われても・・・お菓子ですが。」
「今まで食べたことがない物でした!
伯爵様やアリス様はあんな絶品料理を毎日食べているのですか?」
「きゅ?」
「毎日は食べていないですが、2、3日に1回くらいは出ていましたね。
と言うより毎日だったらミアちゃんも食べている事になりますよ。」
「あ・・・そうですね。
キャラメルに続き、新たなお菓子で興奮してしまいました。
主は他にも作れるのですか?」
「あとは何個か知っていますよ。
機会があればまた何か作りましょうかね。
それに明日の朝はキャラメルが出ますよ。」
「本当ですか!?主!」
「きゅ?」
クゥがミアの方を向き鳴く。
「絶品の飴です。
軟らかく牛乳の味もして美味しいのです。」
「きゅ!」
「クゥも期待していると。」
クゥが目をキラキラさせながら武雄を見る。
「明日を楽しみにしてくださいね。」
「はい。」
「きゅ。」
「タケオ様、キャラメルまで作ったのですか?」
「はい。
食材が簡単な物を作りました。
プリンとキャラメルとマヨネーズですね。」
「お肉のソースはタルタルソース・・・でしたか?
やっぱり揚げ物には合いますね。」
「覚えていたのですか。
1回しか作っていないのに。」
「あんな美味しい物は忘れませんよ。
なぜ揚げ物に油のドレッシングが合うのかが未だに不思議です。」
「そこが料理の不思議な所であり、楽しい所でしょうね。
何も知らないで聞いたら油に油では美味しくないと思うでしょうが、何故か美味しいのですよね。」
武雄がクスクス笑う。
と、部屋のドアがノックされる。
アリスが「どうぞ。」と入室の許可を出すとレイラが入ってくる
「アリス、タケオさん、お疲れ様~。
ごめんね~初日からゴタゴタして。」
レイラがラフな感じで入ってくる。
武雄とアリスは起立して出迎える。
「レイラ殿下、先のた」
「はい、ストップ。
私達3人はあの旅はあれで満足でした。
失礼な事も何もありませんでした。
なので身に覚えのないことで謝られるのは気持ちの良いものではありません。
それでもタケオさんが私達に失礼をしたと思うなら、その謝罪は今日のプリンで十分です。
私達王家一同、今までの事については気にしません。
それと私とウィリアムについては、プライベートの空間ではこれからも『さん』付けで通して貰います。
今後は公の場・・・式典や祭典等でちゃんとすれば問題ありません。
タケオさん、わかりましたか?」
「レイラさん、格別の配慮ありがとうございます。」
武雄とアリスは頭を下げる。
レイラは苦笑しながら思う「ウィリアムと一緒に考えたシナリオ通りだわ。」
「レイラお姉様、タケオ様、座って話しましょう。」
3人は室内にあった応接セットのソファに座り、武雄はお茶を作り備え付けのカップに入れて各々の前に置く。
「さてと・・・改めて。
アリス、タケオさん、王都にようこそ。
初日から大騒動だったわね。」
レイラが苦笑する。
「ホント・・・大変でした。」
「ええ。」
アリスも武雄も頷く。
「全くよ・・・
王家が招待した者を王家の者が立ち塞がって第2騎士団をけしかけて、それが終わったら招待した者が無抵抗状態で斬りつけられ・・・終いにはアリスと第2騎士団とでぶつかったしね。」
「最後のは私とレイラお姉様の所業です。」
アリスがため息をつく。
「おっと、そうだったわね。
まぁアリスと第2騎士団の件はお義父さまが『レイラと第2騎士団長からの報告を聞いてから決める』と言ったので今日の所は保留です。」
「そうですか・・・少しやりすぎたかなぁと思っていましたので激怒していないようで良かったです。」
「私はもう少ししたかったわ。
あ、今日の他のいろんな件は調査中なので私からは詳しい事は何も言えません。」
「わかりました。
あ、そう言えばレイラさん。初勝利おめでとうございます。」
「え?・・・あ!そうね!演習だけど初勝利を収めたわ!」
「ええ、王都の第2騎士団相手に指揮を取ったのですから立派ですね。」
武雄は苦笑しながら言う。
「で、タケオさん、体は平気?
斬られたのでしょう?」
レイラが心配そうに聞いてくる。
「平気ですね。ウィリアムで・・・さんにも言いましたが、剣撃を受けた後に表面の傷以外はすぐに回復させたので、支障はないです。」
「痛かったでしょう?」
「ええ、とっても。
流石にすぐには回復ができないので、斬られる痛みは・・・はぁ・・・嫌な物ですね。」
武雄がため息をつく。
「そう言えばシャツを買いに行くとウィリアムさんに言っていたのですが・・・
どこかにシャツを売ってくれるところは・・・あ、確か仕立て屋の店長さんが王都に着いている頃ですよね。
店長さん達に作って貰おうかなぁ。」
「ん?ウィリアムからは何も聞いていませんね。
なので、まだ到着していないのではないですかね?
着いたら連絡がくるはずですし・・・到着したら教えますね。」
「お願いします。」
武雄は頷くのだった。
「それとアリスはうちで預かるから良いのですけど。
タケオさん、いつカトランダ帝国に行くの?」
「え?そうですね・・・とりあえず2、3日は王都見物とかしたいですね。
レイラさん、フレデリックさんからの依頼で魔法師専門学院という所に行って、来年エルヴィス家に入ってくれそうな生徒を見てきてほしいと言われたのです。
出来ればリストか履歴書を持って帰って来てくれと。
訪問の仕方はわかりますか?」
「魔法師専門学院ね。
私が学院に面会の予約を入れておきます。
明日の朝入れるから・・・昼ぐらいにはいつ行けるかわかりますね。
それで良いかしら?」
「レイラさんの指示に従います。」
「レイラお姉様、私も行ってみたいところが・・・寄宿舎に行ってみたいのです。」
「ん?寄宿舎?・・・スミスの事?」
「はい。私やレイラお姉様は寄宿舎に行かなかったじゃないですか?
スミスがどんな所に行くのか見てみたいと思って。」
「あぁ、そうよね。
寄宿舎は貴族の子息の入学は必須だけど女子は任意だしね。
地方貴族の息女は独学でって感じだからね。
うん、わかったわ。
それも明日の朝に寄宿舎に面会の予約を入れるわ。」
「ありがとうございます。」
「良いのよ。
でね、今日の大騒動は調査中なので凄く遠くに棚上げさせてもらうけど
2人にお願いがあるの。」
「はい。」
「なんでしょうか?」
「実はね、私達第3皇子一家は公領に異動が決まったの。」
「は!?」
「はい。」
レイラの発言にアリスは驚き、武雄は頷く。
「レイラお姉様、待ってください。
という事は陛下が退位なさるので?」
「しないわよ?あの元気なお義父さまがするわけないじゃない。
ただ、徐々に決定権を移行していく時間を取ろうと思っているみたいね。
なので、私達が公領に異動したら第1皇子一家が王都に入るわ。」
「いつ引っ越すのですか?場所は?」
「最短で1年と言われたわ。
場所はエルヴィス領とゴドウィン領とテンプル領に面した場所を探すことになっているのだけど・・・
もう毎日資料が送られてきて訳が分からないの!!
土地の資料とか街とか随行する人材とか私達3人では判断がつかないの!
今日こんなことがあったのに頼めた義理ではないのはわかっているのだけど!
手伝って!お願い!」
レイラが頭を下げる。
「はぁ・・・まぁ・・・でも私やタケオ様も素人ですよ?」
「それでも良いの!今は判断する意見が欲しいの。」
「・・・わかりました。
一応、資料の整理はお手伝いします。」
「本当!?タケオさん。ありがとう!
アリスも!」
「では・・・明日の朝食後で良いのですか?」
「それで良いわ。」
レイラが嬉しそうに頷くのだった。
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