第312話 ・・・戦略の基本は胃袋を攻めろです!
「はぁ・・・」
武雄は、椅子に座りでっかいため息をついていた。
「あの~、タケオ様?大丈夫ですか?」
アリスが心配そうに声かける。
「うぅ・・・まさか皆さん・・・全員に騙されていたとは・・・」
さらにガックリとうな垂れる。
武雄達一行はレイラが手配した来賓用の部屋に通されていた。
他の面々は先の戦闘の後始末と反省会で広間にて会議中。
「アリスお嬢様やエルヴィスさんも最初から?」
「ええ。陛下から『面白そうだから』と言われて・・・」
「とっても失礼な事を言った気がするんですが・・・」
「・・・王が王都を離れてどうするの?とか陛下がトレンチコートをくれと言ったら欲しいなら買えば良いでしょうとか・・・他にもいっぱい言いましたね。」
アリスは首を捻って思い出しながら言う。
「あぁぁぁぁ・・・」
武雄は頭を抱える。
「アリス様、主は何をしたのです?」
「きゅ?」
チビッ子達は何が何やらわからず、とりあえず落ち込んでいないアリスに説明を求める。
「そうね、ミアちゃんが来る前の話だものね。
実はね、タケオ様がうちに来てしばらく経った時にね。
唐突にレイラお姉様とウィリアム殿下と陛下が遊びに来てね。」
アリスはミア達に簡単に説明をするのだった。
・・
・
「で、さっき3人の正体がわかったのよ。」
「ん~・・・主、斬首ですね。」
「きゅ。」
チビッ子達は判決を下す。
「・・・」
武雄は、ガックリとする。
「いやいやいや。タケオ様、そこは平気ですよ。
だって、あの3人はかなり楽しんでいましたから。」
「そうでしたか?
はぁ・・・でも、失礼な事を言った事実は変わりませんよね?」
「そこは・・・まぁ否定できませんが・・・」
「主。」
「どうしました?ミア。」
「お腹が空きました。」
「きゅ。」
チビッ子達が空腹を訴える。
「はぁ・・・そうですね、どんな状況でもお腹は空きますよね。
・・・ん?」
「タケオ様、どうしました?」
「王城での夕飯の時間が何時なのかはわからないですが、ここの料理人さんに頼んで何品か作らせて貰えるように頼んでみましょうか。
3人とも私の料理は喜んで食べてくれたので、少しは帳消しにしてくれるかも・・・」
武雄は思案する。
「とりあえず、このベルを鳴らすとメイドか執事が来るのでしたか?」
「そう説明されましたね。
アリスお嬢様、とりあえず呼んで料理をさせて貰えるか聞いて貰わないといけませんよね。」
「はい。」
アリスはベルを鳴らし、執事かメイドを呼ぶのだった。
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広間にて行われていた王家と貴族会議議員、文官幹部による会議は本日は終了した。
武雄を襲った者の特定は明日以降になり、また第2騎士団長への聞き取りも一旦時間を置こうとなった。
で、広間には王家一同と第一近衛分隊数名とマイヤーが残ったのだが。
「はぁ・・・」
アズパール王はでっかいため息をついている。
「父上、さっきからため息ばかりしていますよ?」
クリフが苦笑しながら言う。
「あぁ・・・そうだな・・・いかんな。
はぁ・・・それにしても・・・まさかこんな形でタケオに正体を明かすとは考えていなかったな。」
「言った矢先に・・・
それにしてもすっごく驚いていましたね。タケオさん。」
レイラが苦笑しながら言う。
「そうだね、タケオさんが固まっていたね。
良く部屋まで行けたよね。」
ウィリアムも苦笑する。
「え?そんなに?」
アルマが聞く。
「ええ、それはもう大変でした。
アリスが肩を貸しながら連れて行くくらいのショックを受けていてね。」
レイラがクスクス笑いながら言う。
「王都に着いたら戦闘をさせられ、無抵抗で斬りつけられ、第2騎士団と戦闘して、お爺さま達に騙されたことがわかって・・・
タケオさんが可哀相です。」
エイミーが武雄に同情する。
「う・・・孫娘に非難されておる・・・
だが、その通りなんだよなぁ。
クリフ、ニール、ウィリアム・・・どうすれば良いのだ?」
「「「知りません。」」」
兄弟は声を揃えて答える。
「うぅ・・・息子にも見放された・・・
レイラ、お主が最初に正体を隠すことを提案したのだ。何か策はないか?」
「ないですね。」
レイラが即答する。
「あぁ・・・そうだよなぁ。そんなポンポン良い策が出てくるわけないよなぁ。
でも正体を隠したことによって武雄の知識を聞けたという所もあるし。
あながちレイラの提案が悪かったわけではない。
だが・・・帰る時に教えるべきだったな。」
「ですね。」
アズパール王の言葉にウィリアムが頷く。
「はぁ・・・とりあえず王城のふざけた慣例の実施者がわからない限り我はタケオには会えんだろう。
明日の昼には実行犯くらいはわかると良いのだが・・・」
「あ、私は後で会ってこようかな。」
「そうね、レイラが招いたのだからちゃんとタケオさんに挨拶は必要ね。」
ローナが言う。
「そう言えばパットはどうした?」
「自室にて反省させています。」
アズパール王の質問にクリフが答える。
「あの最中でもか?」
「ええ。部屋の前に門番を置いてトイレ以外は出さないとしましたし、途中から第1騎士団が守りに入っていましたので。」
「そうか・・・まぁ、明日まで反省させておけ。」
「わかりました。」
クリフが頷く。
と、ノックをして王城の料理長が入室してくる。
「陛下、夕飯の用意が出来ました。
何やらお疲れとお見受けいたしましたので、このまま広間で夕食を取られますか?」
「もうそんな時間か・・・今日は慌ただしかったからな。
このままで良いだろう。皆良いか?」
アズパール王はそう言いながら見回し、皆が頷くのを確認する。
「では、料理長、支度を頼む。」
「はい。」
と、扉が開きメイド達が配膳を開始する。
「・・・ん?」
「え?」
「なんで?」
アズパール王とウィリアムとレイラが配膳されていく料理を見て驚く。
「これはまた美味しそうだな。」
「へぇ、知らないソースが出てきたわね。」
「何でしょうね?」
「わー♪揚げ物だ。良い匂い。」
「ほぉ、良い匂いだな。エイミー、これは王都では普通か?」
「違いますよ父上。それにしても美味しそうです。」
「目の前に夕飯が並ぶと途端にお腹が空きますね。」
他の面々は空腹で料理に楽しみなようだが、3名はマジマジと見ている。
「ん?お義父さま、ウィリアム、レイラ。何を固まっているの?」
「いや・・・固まってはいないがな・・・
料理長・・・どういうことだ?」
アズパール王が訝しげに聞く。
「はは、流石は陛下、気がつかれましたか。
実は先ほどキタミザト殿が来られましてね。
『お3方がエルヴィス邸に滞在されている際に大変失礼な言動をしてしまったので、こんな事でなかった事にはできないでしょうが、私が今出来るのは料理ぐらいですので、用意を手伝わせてほしい』と頼まれましてね。
レイラ殿下から頂いていた例のメモを書いた方が直々に作るとあっては、王城の全料理人が『キタミザト殿に作っていただきましょう』となりまして。
本日のメニューでデザートとお肉のソースがキタミザト殿作になっております。」
料理長の言葉を聞いて3名を除く王家一同はマジマジと料理を見つめる。
「これが・・・レイラの報告にあった至高のデザート・・・」
誰かがぽそっと呟く。
「はぁ・・・タケオ、先手を打たんでくれ・・・
こちらが何かタケオ達にしなければいけないのに・・・」
アズパール王がガックリとする。
「あの・・・お爺さま、食べたいのですけど。」
エイミーが聞いてくる。
「あぁ、そうだな。では食べようか。」
王家一同が一斉に食べ始めるのだった。
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