表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
317/3564

第310話 選手交代。

「はぁ・・・ワラワラ、ワラワラ・・・いつになったら終わるのだか・・・」

一向に進まない戦況にアリスは段々飽きてきていた。

「全くねぇ。」

レイラもアリスの後ろでため息をついている。

「まぁ、それだけ向こうも必死なのでしょうね。」

「そうなのかなぁ・・・ん?誰?」

レイラが横を向くと武雄とウィリアムがレイラの横に来ていた。

「あら?・・・ウィリアム?」

「はい、じゃあ僕たちは下がろうか。

 タケオさん、まぁ命を取らない程度で。」

「はいはい。」

「あ・・・ちょっと、ウィリアム、引っ張らないで・・・

 もっとやりたいのーーー!!!」

と、レイラはウィリアムに強引に戦場から退場させられる。

ちなみに武雄とウィリアムが入って来たので第2騎士団は一旦戦闘を止め、出方を見ることにしたようだ。

「はは・・・レイラさん、鬱憤が溜まっていたのかな?」

「タケオ様・・・怒っています?」

「どこを?」

「う・・・・ぜ・・・全部?」

アリスは武雄の方を見ないで答える。

「全く怒ってはいませんよ。

 私を心配してくれてやったんでしょう?

 私が逆の立場ならとりあえず騎士団だろうが壊滅させると思いますし。

 そういった意味ではちゃんと手加減しているのですから良いのではないですか?」

「うぅ・・・先走ってしまいました。」

アリスは顔を伏せる。

「大丈夫、大丈夫だから。」

武雄は後ろからアリスを抱きしめ、頭を軽くポンポン叩く。

「・・・」

「さてと、じゃあ、私がレイラさんの代わりに参戦しますからね。」

「え?止めに来たのでは?」

アリスは顔を上げる。

「最初はそのつもりだったんですけどね。

 でも第2騎士団が攻城兵器を出してきたので・・・まったく・・・自国の人間に対して攻城兵器なんて出してくるなんて・・・

 という訳で私も頭にきましたので、もうしばらく戦闘をします。

 もう少し地獄を体験してもらいましょう。」

「え?え?」

「アリスお嬢様、怒られる時も一緒に怒られましょうね。

 そして私の為にありがとう。」

「うぅ・・・はい!タケオ様!」

武雄の言葉にアリスが涙目になりながら頷くのだった。


------------------------

レイラとウィリアムが後から来た第一近衛分隊のサポートを得て武雄とウィリアムが観戦していた王城の階段まで戻って来ると。

「戻ったか、レイラ、ウィリアム。」

アズパール王が第三魔法分隊長と一緒に待っていた。

周囲は第三魔法分隊が警護している。

「あれ?お義父さま?」

「うむ、レイラ、ご苦労だったな。

 ウィリアムもレイラの救出ご苦労。」

「ええ。父上が来たという事は父上が終息させるのですか?」

「あぁ、面倒この上ないがな。

 しかし、他の誰かが言って禍根を残すよりかは良いだろう。

 で?タケオとアリスが残ったのはなんでだ?」

「まぁ1つ目にレイラを下がらせる為と下がったことで第2騎士団が勝ったように思われたくない事。

 2つ目に攻城兵器を第2騎士団は持ちだしたんですけど」

「攻城兵器?・・・あそこで鎮座している・・・ゴミか?」

「ええ、タケオさんが発見して、ここから狙ってさっさと壊していました。」

「あぁ、例の小銃か。

 あの攻城兵器は第2騎士団長が自慢していたやつだな。

 何発持った?」

「3発ですね。」

マイヤーが報告する。

「はぁ・・・攻城戦は魔法や弓矢が飛び交う前線での使用を想定しているのに脆すぎるな・・・

 欠陥兵器だったか?・・・実戦投入前の良い訓練になったな。

 で?タケオは何て言っていた?」

「『自国民に対して攻城兵器なんか持ち出してアホなんじゃないの?さっさと壊しましょう』と。」

「あぁ・・・タケオの言いたいこともわかるな。

 攻城兵器は威力が高いし、生身で当たれば即死だからな・・・

 でもアリス相手にあんなもの持って来ても当たるとは思わんが。」

「タケオさん的にはアリスに攻城兵器なんて持ち出したから頭にきたと言っていました。

 ちょっと脅してきますとかなんとか・・・」

「・・・ただでは終わらんか・・・もうなるようになれ・・・

 タケオがここから見ながら何か感づいたんだろうが・・・何をするつもりだ?」

「さぁ?タケオさんは柔軟な発想をするんですよ?

 そのタケオさんが脅すと言うのですから・・・絶対普通に斬り込まないでしょうね。」

ウィリアムが苦笑する。

「・・・第一近衛分隊長殿、2人の相手が王都守備隊・・・我々でなくて良かったですね・・・」

アンダーセンがマイヤーに向かって呟き、マイヤーが苦笑しながら頷くのだった。


------------------------

広間のテラス。

「あ、再開した。」

アンが呟き王家一同が視線を送る。

「ん?・・・んん?・・・

 アリス様達・・・若干下がり始めました?」

エイミーが「はて?」という顔をする。

レイラに変わって武雄が入ったことはここからもわかっていた。

オーガ+ゴブリンとの戦いの再現か?と王家一同はワイワイ予測をしていたのだが・・・

再開した序盤から徐々にアリスと武雄は下がり始めたのだ。

武雄が兵士の攻撃を全面的に防ぎ、アリスが薙ぎ払う・・・最強コンビの戦い方は変わらずだ。

なのだが・・・徐々に徐々に下がっている。

「ニール・・・これは不味くないか?」

「ええ、戦場でこの状況なら進軍を停止させるでしょうね。」

皇子2人が目を見張りながら顔を緊張させる。

「え?クリフ、ニール、どういう事?

 アリス達が押されているのでしょう?」

「押されている?これが?

 違うな。第2騎士団は誘われているんだ。」

「ああ、私達は上から見ているから全容がわかっているが・・・

 第2騎士団長はわかっているのか?この状況。」

ニールとクリフが指揮官の顔をして真面目に戦場を睨み始めていた。

家族が今まで見たことがない皇子2人に驚きを隠せない。

徐々に徐々に下がる・・・後方と前線の間に隙間が出来始める。

「・・・え?ちょっと・・・下がり過ぎじゃない?

 勝ちを第2騎士団にあげちゃう気?」

「タケオとアリス・・・恐ろしい事を考えるな。」

「ええ。」

クリフが言うとニールが頷く。

「どういう事ですか?」

エイミーが聞く。

「ん?・・・まぁ良いか。

 さっきまで実質アリス対第2騎士団だったろう?」

クリフが言う。

「はい。」

「正確に言えばアリスの方はレイラという戦力以下のお荷物を抱えての戦闘だった。

 で、その戦闘自体はレイラが左右を見て敵の多い少ないを指示しながら、徐々に削って押し進めるゴリ押しの戦いだったんだ。」

ニールが言う。

「はい。」

「それでも十分に戦力として成り立っていて、少しずつだがアリス達が押していた。

 で、今度はレイラというお荷物からタケオという戦力が代わりに入ったわけだが・・・

 普通に考えれば、もっとゴリ押しが来ると予想をする。」

クリフが言う。

「はい。私達も予想しましたよね?」

セリーナが言う。

「だが、実際はどうだ?

 アリス達は徐々に下がっている。

 ここで心の隙を作ろうとアリス達は考えているのだろう。」

ニールが言う。

「心の隙?」

「あぁ。第2騎士団達に『アリス達が疲弊し始めた?』『このままいけば勝てるのでは?』『勝ちを確定させるぞ』という気にさせようとしている。」

「なぜそんなことを?」

ローナが聞いてくる。

「たぶん兵士の配置だろうな。

 今は均一に戦力を配置していて防御メインのようにしている。

 なので削ってもあまり多くが削れないのだろう。

 だが、勝ちに来る瞬間はこれが崩れる。

 戦力バランスを崩して精鋭を両脇か中央に寄せるはずだ・・・俺だったら両脇だな。」

ニールが言う。

「あぁ。私も両脇に寄せたくなるな。

 相手は2人・・・なら両脇から同時に攻撃を仕掛ければ勝てるだろう。

 だが、その瞬間がアリス達に取っての勝機でもある。」

クリフが頷く

「前面の戦力が薄くなる?」

エイミーが聞く。

「あぁ、そうだ。

 そこを一気に蹴散らしてあの二人は突撃を開始するだろうが・・・

 タイミングをどう見るか・・・早ければ意味がないし、遅ければ突撃をされてしまう。

 絶妙な戦場の機微がわからないといけないな。

 まぁ両脇に揃った瞬間を狙うのもありかもな・・・」

ニールが苦笑する。

「はぁ・・・ただの演習じゃなくなってきたのですね。」

エイミーが感心する。

王家一同は緊張しながら見るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ