第309話 んー・・・壮観ですね。攻城兵器?
広間のテラス。
「んー・・・エイミーお姉様、階段の所に男性が2人居ますけど・・・
あれウィリアム伯父上ですかね?」
アンがエイミーに聞く。
「そうみたいね。隣はタケオさんね。」
「今、どんな感じ?」
ローナを始め王家の親一同がテラスに来る。
「あ、お母様。話合いは終わったのですか?」
アンがセリーナに抱き着く。
「一時中断ね。
お義父さまが事態の終息に向かわれたわよ?」
ローナが説明する。
「なんでお爺さまが?
・・・という事はアリス様も第2騎士団も引かないと思ったのでしょうか?」
エイミーが面倒だなぁと思いながらため息をつき聞いてくる。
「まぁ、エイミーの感じたことは俺らも感じたことだ。
誰があの戦場を終息させるか・・・ウィリアムでは荷が重いかもしれないしな。
さっさと終わらせるには王国トップの判断で強制的に止めさせるしかないのだろう。
それよりお前たち妃や娘たちは戦場の雰囲気は初めてだろう?
どうだ?」
ニールがクスクス笑いながら聞く。
「そうねぇ・・・どっちを応援すればいいのかしら?
心情的にはアリスとレイラ組だけど・・・
第2騎士団は、とばっちりの上に八つ当たりされているわけだし・・・」
「そうだな。
最初はタケオに対してうちのパットの代理で決闘を申し込んだ罰だったが、ここまで大事にするのも可哀相だな。
さっさと終わらせてやるのが良いだろう。
負傷者はどのくらい出ている?」
「さぁ・・・でも傷ついたら後ろで回復されているみたいですね。
何人も運び込まれてどんどん前に戻されていますし。」
と、また何名かがアリスによって薙ぎ払われる。
「「ほぉ。」」
クリフとニールは感心する。
「兄上、流石は鮮紅ですね。」
「だな、見事だ。」
「ちょっと、皇子2人で感心していないで解説しなさいよ。
何が『ほぉ』なのよ。」
セリーナが説明を求める。
「アリスの手加減が素晴らしいと褒めているんだよ。」
クリフが苦笑しながら言う。
「え?薙ぎ払われているのに?あれで手加減?」
「あぁ。アリスは今、片腕のみで払っているんだが。
あの剣の長さ・・・どう見ても両手剣だぞ。
それを軽々片手で振り回して、尚且つ致命傷にならないように薙ぎ払うように、つまりは相手を飛ばす事を目的に剣を振るっている。
つまりアリスは斬る気がないんだ。
キレていても優しいなアリスは。」
ニールがそう説明する。
「「「流石はアリス様ですね!」」」
エイミー達子供3人は感心をし、妃達は「へぇ~」と戦場を見ている。
ただし皇子2人は「まぁ打撲程度はしているだろうけどね」と苦笑するのだった。
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「ミア、クゥ、リンゴが剝けましたよ。」
「はい♪」
「きゅ♪」
武雄はウィリアムからリンゴを貰ったので、戦闘が一望できる王城の階段でナイフで切り分けてミアとクゥに与えていた。
ミアもクゥも美味しそうにモグモグし始める。
そんな2人を見て武雄もウィリアムも朗らかに癒されていた。
「さて・・・タケオさん、どうします?」
「ん?どうもこうも・・・
あの中に入りたいですか?」
「嫌ですね。」
「でしょう?なので様子見です。
アリスお嬢様も手加減していますし。
それにあの第2騎士団の後ろ・・・回復戦法をしていますよね?
なら平気でしょう。
はい、ウィリアムさん、リンゴです。」
「あ、どうも。
レイラは初めての戦いだからか・・・楽しそうにしてるなぁ・・・」
武雄とウィリアムもリンゴを食べながら観戦し始める。
・・
・
タケオが第2騎士団の後方を見ている。
「ん?回復役の兵士が大方引きましたかね・・・
おや?幌馬車くらいの大きさの車輪付きの物を引っ張ってきましたけど・・・なんでしょうか。あれは?」
「さぁ?」
ウィリアムも首を捻る。
「あぁ・・・あれは最新の攻城兵器ですね。」
と、いつの間にか2人の横に来ていたマイヤーが答える。
「あれ?マイヤーさん?お疲れ様です。」
武雄が声をかける。
「ええ、本当にお疲れですよ。
なんです?この騒ぎは?」
マイヤーは知っているのに苦笑しながら聞く。
「さぁ?私とアリスお嬢様への歓迎式典でしょ?」
武雄はアッサリと「どうでも良い」と言う意味で答える。
「はぁ・・・キタミザト殿がそう言ってくれてありがたいですね。」
マイヤーは武雄に感謝する。
「ところで攻城兵器をあの人達は引っ張っているのですか?」
「ええ、あれは先月納入されたばかりの最新の攻城兵器です。
第2騎士団長が自慢していました。」
「ふーん・・・
ミア、クゥ、私より前に出てはダメですよ?」
「はい、主。」
「きゅ。」
武雄は同行者の返事を聞きながら小銃改1に空の薬きょうが入っていることを確認し、リュックを使って、上方からの伏せ撃ちの体勢を取る。
「え?タケオさん?何を?」
ウィリアムが少し驚きながら聞いてくる。
「自国の人間に、それもアリスお嬢様に攻城兵器なんてぶつけるなってことです。
アホですか?あの人達は。
さっさと壊すに限ります。」
武雄の言葉にウィリアムもマイヤーも何も言わない。
武雄と攻城兵器は距離にして150m離れている。
「・・・まぁオーガより2回り大きいですね・・・狙いやすいなぁ・・・」
引き金をひくと「ドンっ」と音と共に「ドガッ」と攻城兵器の車輪に命中し炎が出る。
・・・攻城兵器を引いていた兵士達が倒れる。
さらに1発。「ドガッ」と攻城兵器を引く綱の根元に命中し炎が出る。
綱が切れ引っ張っていた兵士達が前のめりに転ぶ。
ついでに1発。「ドガッ」と攻城兵器の何やら中央部分に命中し「ボンッ」と音と共に何やら中央部分の部品が飛散し、勝手に大破する。
「・・・こんな物ですかね?」
武雄が体を起こす。
「はぁ・・・」
マイヤーは大きくため息をつく。
「じゃ、ウィリアムさん、行きましょうか。」
「え?突然ですね。」
「ええ、ウィリアムさんはレイラさんと合流したらここまで戻って来てください。
攻城兵器が出てきたのです、これ以上は危険でしょう。」
「タケオさんは?」
「私は・・・アリスお嬢様とデートをしてきます。
もう少しこの均衡を作っておきますかね。
レイラさんの初陣なんでしょう?勝ちなんて譲りませんよ。
それに・・・攻城兵器なんか使った罰です。
ちょっと脅してきます。」
「ははは・・・じゃあ、行きましょうか。」
ウィリアムは苦笑しながら了承する。
「ミア、クゥ、行きますよ?」
「はい。」
「きゅ。」
2人は所定の位置に陣取る。
「では、マイヤーさん行ってきます。」
「ええ、行ってきてください。
私はウィリアム殿がレイラ殿をここに連れてくる際の補助をしますので。
キタミザト殿たちの事にまで気が回りませんから。」
マイヤーはため息交じりに言う。
3人はアリスとレイラに向け移動を開始するのだった。
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