第302話 王城の受付。平民は辛いね。
「お止まりください。」
王城の入り口で警備兵2人に武雄とアリスは止められる。
ミアとクゥは所定の位置に戻りました。
「アリス・ヘンリー・エルヴィスです。
連れはタケオ・キタミザトです。」
「は!
連絡は来ております。
従者の方の王城内での帯剣はご遠慮していただいております。
申し訳ございませんが、受付横でお預けください。
また、魔法は魔力量30以下の物しか使えないようになっていますので、ご留意願います。」
「な!タケ」
「わかりました。」
アリスが何か言いそうになったが武雄は了承する。
「では、私が受付まで同行いたします。」
と兵士1人が先導し、武雄達は王城に入城するのだった。
・・
・
「では、こちらにご記入ください。
剣をお預かりいたしたます。」
アリスがエルヴィス家と名前を書き、武雄が次の欄に名前を書くと武雄は腰の剣をベルトごと外し、コートと上着を脱いでショルダーも外す。
小銃改1も兵士に預ける。
兵士はその場で預かった剣の長さと小銃改1の長さを紙に書き、番号をふる。
と、武雄に番号が書かれた木札を渡す。
「お帰りの際にこちらでお渡ししますので、木札を提示ください。
では、保管所に持っていきますのでこちらでお待ち下さい。」
と、兵士は武雄の剣を持って2人から離れていった。
「・・・納得しかねます。」
アリスは眉間に皺を寄せながら不機嫌に言う。
「はぁ。
昨日の夜にアリスお嬢様自身が言ったことでしょう?
アリスお嬢様は貴族、私は平民なので従者扱いだと。」
「言いましたが、帯剣がダメだとは知りませんでした。」
「いや、王や国の幹部達が居るのですから当たり前なのでは?
貴族は国に所属しているのですから、帯剣も問題ないでしょうが、それ以外の平民は、どんな輩かわからないでしょう。
貴族が脅されて連れてきた場合も考えられますからね。
万全を期すのは当然です。」
武雄は苦笑する。
「むぅ・・・ですが。」
「決まりは決まりです。」
と、廊下の奥から一人の男性がやってくる。
「失礼します、王城に初めて来られる方でしょうか。」
「はい。」
アリスが答える。
「そうですか。そちらのお連れの方は平民の方で?」
「ええ。」
アリスが答える。
「そうですか。
申し訳ございませんが、王城に初めて来られた方の従者は、別室にて待機していただいております。」
「・・・」
アリスが不機嫌に男性を見つめる。
「申し訳ございませんが、慣例です。
招待された方と面会して同意があれば別室から呼ぶことも可能ですので。」
「・・・」
「まぁ、慣例ならしょうがないでしょう。」
アリスは頷かず、武雄は了承する。
「お手数をおかけして申し訳ありません。」
武雄は男性に軽く礼をする。
「私もアナタの気持ちはわかります。
従者を連れて行かれるのは気持ち的に良い物ではないでしょう。
ですが、慣例です。」
男性は武雄には目も合わせずアリスに対してのみ話しかけている。
「・・・少し打ち合わせをしますから、待っていてください。」
アリスはそう言い、武雄と一緒に男性に背を向け打ち合わせを始める。
「・・・タケオ様、よろしいのですか?」
「王城の慣例なのでしょう?
従うのが当然でしょう。」
「すぐにレイラお姉様と迎えにいきますから。」
「いや、別にすぐでなくても・・・私は私でのんびりとするつもりですが?」
「行きますから。」
「・・・はい、わかりました。
大人しく待っていますね。
ミアはアリスお嬢様と一緒に行ってください。
クゥはどうします?」
「きゅ。」
とクゥが武雄のリュックの上で鳴く。
「主、クゥは主の方に行くと言っています。」
ミアが通訳する。
「ん?こっちはたぶん面白くないですよ?」
「きゅ。」
「主がどんな感じでのんびりとするのか見たいそうです。」
「まぁ、クゥがそう言うならこっちですね。」
二人は男性の方を向く。
「さ、こっちです。」
男性が歩きだし、武雄が付いて行く。
「・・・若干、タケオ様は楽しそうにしていますね。」
「アリス様もそう思いますか?」
残された二人はため息をつく。
・・
・
「はぁはぁ。
アリス様、タケオさん、お待たせしました。」
エイミーが走って受付までくる。
と、丁度武器をしまいに行っていた兵も戻って来て、エイミーが居るので敬礼をする。
「エイミー殿下、お疲れ様です。」
アリスがエイミーに向かって軽く礼をする。
「?・・・あれ?タケオさんは?」
「何でも王城の慣例で従者は別室待機なのだそうです。」
アリスは不機嫌そうに言う。
「ふーん・・・そうなのですかね?
私も寄宿舎なので王城の仕来りは、あまり詳しくはわからないですが。」
「あとでレイラお姉様と迎えに行くことにしました。」
「なるほど。
とりあえず、レイラお姉様達が居る部屋に行きましょう。」
「・・・達?」
アリスは不思議そうに聞く。
レイラの書斎にでも行くのかと思っていたが。
「ん?皆、待っています。
アリス様とタケオさんを。」
「誰がでしょうか?」
「第1皇子正室と側室と長女、第2皇子次女、第3皇子正室と側室ですが?」
「え・・・それは・・・その・・・」
アリスは困る。「王家の妃とご一家かい!」と心の中でツッコミを激しくする。
「では、行きましょう。」
と、エイミーが先導し、若干アリスはガックリとしながら付いて行く。
それを受付まで来た警備兵が礼をしながら見送るのだった。
2人の姿が見えなくなると礼を解き、警備兵は顔を上げる。
「・・・別室待機・・・そんな慣例はなかったよなぁ・・・」
警備兵は呟きながら城の入り口に戻って行くのだった。
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