第301話 城に行こう!(貴族会議開催中。)
「「はぁ。」」
武雄とアリスは王城の門を潜り、目に飛び込んできた景色で感嘆のため息をつく。
そこにあったのはディズ●ーランドのシ●デレラ城を横に大きくし大理石で作られた見るからに「ザ・西洋城」だった。
庭もかなり大きく、しっかりと芝が均一に整備されており、門から玄関まではレンガが敷き詰められているようだ。
「タケオ様、圧巻ですね。」
「そうですね、見る者を圧倒しますね。
城の入り口までは、まだまだ距離があるみたいですからのんびりといきますか。」
「はい。
そうだ。回りに人もいませんから、ミアちゃんやクゥちゃんを自由にさせますか。」
「ですね。」
アリスは抱えていたクゥを地面に下ろし、ミアを外に出す。
「やったー!
この解放感!!」
「きゅー!」
二人は武雄達が歩く少し前を飛び回る。
武雄とアリスはそんな二人を朗らかに見ながらのんびりと城を目指すのだった。
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王城内の広間にて王家と貴族会議議員、文官幹部による会議を開催中。
「ふむ・・・
では、この書類にあるようにクリフの所からは文官のビル・バビントンで、ニールの所は武官のバリー・アルダーソン、ウィリアムがタケオ・キタミザトだな。」
「「「はい。」」」
3兄弟が頷く。
「クラーク、貴族会議はどう思う?」
「では、貴族会議 議長として言わせて頂きます。
それで構いません。」
「相変わらず前置きをしっかりと言う癖に短く回答をするな。」
アズパール王が呆れる。
「何も反対する理由がありませんな。
約10年ぶりの新人貴族ですよ?
歓迎しますよ。」
クラーク議長が答えると他の議員達も頷く。
「ん?そんなに認可していなかったか?」
「全く・・・見てください我ら貴族会議を。
年寄りばっかりです。」
「それはお主達が息子に代替わりすれば良いのではないか?」
「ははは!うちの若造には、まだまだ継がせられませんな!
経験が足りません!」
豪快に笑い飛ばす。
「まぁ良い。
爵位の授与式は文官からの意見でタケオがカトランダ帝国から戻ってからにするが、3名には貴族になったことを先に通達する。
異例ではあるが、その方が良いと我は思う。
あと今回騎士になるのは5名か・・・ふむ、アリスの名もあるな。」
「はい、それでよろしいでしょう。」
「うむ。」
アズパール王は書類に裁可としてサインをし、文官が蝋を垂らしたので文様を押し付ける。
オルコットが恭しく書類を受けとる。
「ふふふ、これでタケオもアリスも我が国から逃げれなくなったな。」
アズパール王はニヤリと笑いながら呟く。
「はぁ・・・キタミザト殿。
いや、裁可されたのですからキタミザト卿には、少しの同情と多くの羨ましさがありますな。」
クラーク議長がため息交じりに呟く。
「なぜだ?」
「同情と言うのは、陛下やウィリアム殿下、レイラ殿下に騙されてあれこれ政策を考えた事。
まさか自分を縛る政策を自ら考えさせられているとは考えていないでしょう。」
「騙してなどいないぞ?」
「キタミザト卿は、姉夫婦とその親に初めて会ったのでしょう?
さらに姉夫婦は王都の幹部貴族だと思って居るのでしょう?
自身の方が年上だが義理の姉夫婦に認められないといけない、さらには王都の貴族社会で生き残って貰わないといけない、そう思っていろいろ知恵をだしたのではないですか?
全く・・・本来ならエルヴィス伯爵を通して発案を王都に上げて、エルヴィス家の家名を上げても良いものをわざわざ姉夫婦の為と知恵を出したのでしょう。
そう思うと同情が沸きますね。」
クラーク議長の言葉に議員達が頷く。
「そういう物か?で、嫉妬とは?」
「嫉妬ではないです。羨ましいだけです。」
「同じだろう?」
「はぁ・・・まぁ良いです。羨ましいのは王家に愛されていることですな。
陛下とウィリアム殿下、王家の者2名に名指しで貴族の推挙をされるのは素直に羨ましいとしか言えません。
まぁ、陛下の話では本人は貴族になる気はあまりないようですけど。」
「・・・我は推挙するとは言ってないぞ?」
「はいはい。
そもそもキタミザト卿を貴族にして研究所所長にする案を持ってくるだけでもキタミザト卿がお気に入りなのはわかります。
わざわざウィリアム殿下の推挙権まで使って、あたかも自分は気にしてないと装ってもダメです。
全く正直に皆に言えば良いのに。」
「我は・・・別に・・・」
「はいはい。
このクラークの目は誤魔化せません。
というよりも誰もがわかっていますからね?」
「なぬ!?」
クラーク議長とアズパール王のやりとりを聞きながら議員や文官達が苦笑する。
「はぁ、ウィリアム殿下。
陛下のわがままで大事な推挙権を使わせて申し訳ありません。」
「いえ、クラーク議長。
私には配下がおりませんので、使い道がなかったので丁度良いのです。」
ウィリアムが朗らかに答える。
「そうですか。
ですが、ウィリアム殿下も公領に異動が決まりました。
領地に移ったのち、この者は推挙したいと言って頂ければ我ら貴族会議はすぐに許可いたします。」
「クラーク議長。
お心遣いありがたく頂戴いたします。
領地に移った際は多大なご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、精一杯、領地運営に努めていきます。」
ウィリアムが軽く礼をする。
「はい。
ウィリアム殿下なら平気でしょう。
と、そうだ。陛下、例の施設はどうされるのですか?」
「ん?施設?
・・・クリフの所の専売局か?」
「はい。
専売局は王家の公領で行うのが基本です。
ウィリアム殿下の公領に移設ですか?」
「うむ・・・オルコット。」
「は!
クラーク議長が言われる様に専売局は王家の公領のみで活動させています。
現在、王都とクリフ殿下とニール殿下の公領において、主に衣料原料、塩、製紙、茶、パイプの葉、金属等を専売局が担当しています。
我ら文官としては、クリフ殿下の公領からウィリアム殿下の公領に移動を決定しています。
もう各施設も建てて25年も経ちますので、老朽化もありますから良い機会かと。」
「だそうだ。」
「クリフ殿下の所は何がありましたかな?」
「うちは主に金属関係と茶です。
ニールが塩とパイプの葉と衣料原料、王都が製紙になりますね。
まぁ他にも専売局が取り扱っている細かな物はありますが、これが大まかな商品分けです。
ちょうどウィリアムの移動先もエルヴィス領を通ってすぐにドワーフの国ですから流通に問題はないかと。」
「なるほど。
うんうん、王家で管理されるのであれば価格も今の水準のままでしょう。
貴族会議も問題ないと考えます。」
クラーク議長が頷く。
「実は次の次の議題がその移行に関してなのです。
丁度、良いので先にそちらの議論をお願いします。
お配りしている資料の4つ目をご覧ください。」
オルコットが話を進めるのだった。
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