第297話 問屋さんで掘り出し物発見。
「「・・・」」
目的の住所に着いた一行なのだが、店先で皆、何も言わないで悩んでいた。
「マイヤーさん、本当にここですか?」
「はい。メモにあった場所は・・・ここですね。店の名前も合っています。」
マイヤーはメモを見ながら「合っているよなぁ」と呟く。
武雄達の前には材木問屋にしか見えない店があった。
「まぁ、合っているなら良いです。
聞いてみましょう。」
武雄が先頭になり、店に入って行く。
・・
・
「いらっしゃい。」
店の中には初老ぐらいで髭を生やしている親父さんが居た。
「失礼します。
突然、ご訪問して申し訳ありません。
エルヴィス領にある魔法具商店のテイラー店長の紹介で来ました。
タケオ・キタミザトです。」
初老の親父さんは、じーっと武雄を見て。
「・・・うむ、手紙の通りだな。
こっちだ、来なさい。」
親父さんが皆を奥に招く。
武雄達は着いて行くのだった。
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「うわぁ・・・」
エイミーは、その品揃えを見て感嘆を漏らす。
マイヤーとアリスもキョロキョロと見回す。
連れて来られた部屋には、剣をはじめとした武器、盾、フルプレート等々、兵士や騎士用の武器、防具が所狭しと置かれてどれも宝石が埋め込まれており、ピカピカに手入れもされていた。
換気の為だろうか、窓が少し開いている。
その奥に大き目の机と数個の椅子が用意されていた。
「座って話そうか。」
親父さんに席を勧められ、武雄達が座る。
「この度は突然お伺いして申し訳ありません。」
武雄が軽く礼をする。
「あぁ、それは別に構わない。
と、自己紹介はしなくて良いな?」
「はい、構いません。」
「ふむ。
さて、小銃の製造元だな?」
「はい。」
「小銃自体は、1年半前にカトランダ帝国の帝都の東にある街の鍛冶屋『ステノ』というところが販売した物だ。」
「ステノ・・・これに書かれていました。」
武雄はリュックから弾丸が入っていた小箱を取り出す。
(中身は、武雄がタバコの葉を入れている。)
「そうだな。
お前、パイプをするのか?」
中身を見た親父さんが言ってくる。
「はい。」
「では、吸わして貰おう。」
と親父さんは懐からパイプを取り出し、火を付ける。
「商品を前にして吸いますか?」
武雄は苦笑する。
「あぁ、別に問題はない。」
親父さんはプカプカふかす。
「さて、お前。
テイラーに小銃の収集を依頼したそうだな。」
「ええ。テイラー店長から?」
「あぁ、手紙に説明があった。
良くあんな使えなさそうな武器を大量に買ったな?」
「ええ、好き者ですから。」
「そうか・・・俺は輸入販売もしているのだがな。
今後も面白そうな物があったら買うか?」
「物によりますね。
例えばどんな物がありますか?」
「そうだな・・・」
親父さんは席を立ち、棚から鞘に入っている剣を持ってくる。
「これはどうだ?」
武雄に剣を渡す。
武雄は顔には出さないが驚く。
「これは?鞘から抜いても良いので?」
「構わない。」
武雄は剣を鞘から抜き、刃を見る。
その剣は長さが50㎝、片刃で刀身が普通の剣よりも細くなっていた。
「これの商品名は何ですか?」
「『コダチ』と言うらしい。
刀身が他の標準的な剣より若干短くて細いし、それに刀身が薄いから誰も買わないんだ。
一応、刃こぼれや錆が出ないように宝石が埋め込まれている。
ちなみにそれもステノ製だな。」
「何本あります?」
「えーっと・・・ちょっと見てこようか・・・」
親父さんは棚の方に行ってしまう。
「・・・タケオ様、買う気ですか?」
アリスが若干、呆れながらコッソリと聞いてくる。
「なぜ、私の考えがわかるので?」
「今までの他の店とのやりとりを見ていれば、タケオ様が聞き返す時は買う時ですから。」
「・・・今度から交渉方法を変えますかね・・・
まぁ買いますよ。」
武雄は苦笑する。
親父さんが戻って来る。
「それを含めて5本だな。」
「全部買います。」
「「は!?」」
大人しくしていたエイミーとマイヤーが驚く。
「うむ、その即決は良いな。
腰に吊るす為のベルト等々はセットだ。」
親父さんは、ニヤリと笑いながら言ってくる。
「1本は、この場で貰います。あとの4本はテイラー店長に送っておいてください。」
「わかった。
他にあるか?」
「今腰に着けているのは片刃ナイフなのですけど。
これを服の下に付けれるような物はありますか?」
「ふむ・・・そうだな。」
と親父さんはまた棚の方に行ってしまう。
「タケオさん、本当に買うのですか?」
エイミーが聞いてくる。
「ええ、買いますよ。」
「キタミザト殿、店の親父さんが言うように刀身も細くて薄いのでは打ち合いに向きませんよ?」
マイヤーが心配そうに聞いてくる。
「打ち合わなければ良いのでしょう?」
「・・・確かに。
この間の戦闘もキタミザト様は打ち合ってはいませんけど・・・」
マイヤーが「んー・・・」と悩む。
と、親父さんが戻って来る。
「これなんてどうだ?
ん?これもステノ製だな。」
店長はショルダーホルスター型の短剣が収められる様になっている物を武雄に渡す。
武雄はコートを脱ぎ、その場で着こみ、ナイフが左脇に収められる様になっていたので、そこにナイフを収める。
と、コートを着て動きを確かめる。
「良いですね・・・これも買いましょう。」
「話が早くて助かるな。
他にはあるか?」
親父さんは段々、売る気になってきている。
「そうですね・・・今の所はありません。
何か欲しかったらテイラー店長経由で買います。」
「あ・・・そうだな。
ついつい在庫がはけて嬉しくなってしまった。
今回は特別に小売りをしたが、本来はしないからな。」
親父さんは苦笑する。
「はい。
お代はいくらでしょう。」
「そうだな・・・剣5本と吊具か・・・
まぁ金2枚だな。」
「わかりました。」
武雄はその場で支払いをする。
「剣4本は、テイラーに注文されている商品と一緒に送っておく。」
「ありがとうございます。」
「ほれ、さっき言ったステノの住所だ。」
親父さんが懐からメモを取り出し、武雄に渡す。
「どうも。」
武雄は受け取り懐にしまう。
「ふむ・・・気風が良いな、気に入った。
普通は小売りはしないと言ったが、お前なら今後も売ってやる。
また来い。」
「はは。
テイラー店長に悪いので遠慮します。」
「ふ、そうか。
何か探し物があるなら言ってくれ。
ウィリプ連合国とカトランダ帝国なら物は探せるし、仕入れられる。」
「わかりました。
それもテイラー店長経由でお願いするかもしれません。
今の所、こちらにある武器、武具のリストをテイラー店長に送ってください。
あとは何か面白そうな・・・聞いたことがないような武器の話が出て来たらその情報もくれるといつか買うかもしれません。」
「あぁ、わかった。
新しい武器の情報があったらテイラーに送っておく。」
「では、私達はこれで。」
親父さんと武雄達は席を立ち、話合い(?)を終えるのだった。
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