第295話 城門を入ったらすぐにイベント。
「はぁ。」
武雄は城門を潜り、目に飛び込んできた景色で感嘆のため息をつく。
武雄が見た景色、それはまさにヨーロッパの街並みだった。
赤茶けた屋根と外壁が白で統一された3階建ての家が道なりに配置され、家の高さも皆が均一に揃っていた。
そして、大通りの一番奥の小高い丘だろうか・・小さくだが城の様な物も見えている。
「絵になるなぁ」
「ふふ。タケオさん、驚きました?」
エイミーは胸を張って自慢してくる。
「驚きより感動ですね。
はぁ、良い物が見れました。
王都に来れて良かったですね。
こんなに良い景色が見れるとは。
やっぱり統一感は大事ですよね。」
武雄は一人、感動していた。
「ふふ。タケオ様、止まっていては皆さんの邪魔ですよ?」
アリスはそんな武雄に優しく注意をする。
「おっと、これは失礼しました。」
武雄は小走りで城門の内側の壁に移動する。
後ろから来ていた人達が朗らかに武雄を見ながら過ぎ去っていく。
武雄はそれを微笑みながら会釈していく。
「・・・ちなみにキタミザト殿。
驚きではなく感動なのですか?
国内広しと言えど、3階建ての建物がこんなに並んでいるのは王都だけなのですけど?」
マイヤーが聞いてくる。
「へぇ、そうなのですか?」
5階、10階、20階、30階・・・超高層ビル等々が存在する所から来た武雄にとっては3階建ては珍しくもなんともないのだが、ただ街の作りが綺麗で感動したのだった。
「ん~・・・なんだか私達の考えとタケオさんの考えが違う気がしますね。」
エイミーが「はて?」と首を傾げる。
「まぁ、それはしょうがないでしょうね。
と、ところでなんか催し物が開催されているのですか?
少し離れた所に随分と人だかりが出来ているのですけど。」
武雄達が居る城門横から少し離れた場所に人だかりが出来ており、「キャー」、「よし!そこだ!」、「やれー!」等々威勢の良い声が聞こえている。
「?・・・第一近衛分隊長、知っていますか?」
「さて?普段気にしていませんので・・・見に行ってみますか?」
マイヤーを先頭に武雄達が催し物を見に行く。
・・
・
「「んー・・・」」
アリスはクゥを抱きながらエイミーは腕を組みながら催し物が開催されている舞台を真剣に見ながら悩んでいるのだが。
その横で武雄は催し物ではなく舞台の端にある立て看板を冷ややかに見ていた。
マイヤーは周囲に意識を飛ばして警戒中。
立て看板には、こう書かれていた
≪挑戦者はだれだ!?≫
昨年の御前仕合王者。フロッドと対戦し勝ったら金貨10枚贈呈。
参加費用;銀貨2枚
現在参加者募集中。
現在238名対戦中
「・・・で?マイヤーさん。あれは本当ですか?」
武雄は後ろにいるマイヤーに聞く。
「ん?なにがです?」
「昨年王者。」
「あぁ、民間の優勝者ですね。
本当ですよ。私も見ていましたから。」
「へぇ、それにしても・・・」
武雄は今行われている試合に目をやるが。
「「弱そう。本当に王者なの?」」
武雄が思った事をアリスとエイミーが同時に言う。
と、試合が終わり王者が勝ったようだ。
「これで239勝だ!
ところで!今、俺様を弱そうと言ったヤツがいたな!?
誰だ!」
王者が吠える。
周りはシンと静まり返るが、アリスが手を上げる。
「私が言いましたが?何か?」
アリスの積極性に武雄が顔に手を当ててガックリする。
「ふふん。その服装、おそらく旅人だな?
俺は昨年、御前仕合での覇者だ!
その俺に対して弱いとは何事だ!
俺は女、子供でも試合では容赦はしない。
上がってこい。」
「わかりました。」
アリスが歩き出そうとするが、武雄がアリスよりも半歩先に前に出てアリスを止める。
「うちの婚約者が声を大にしての王者への暴言すみませんでした。
ですが、私も婚約者をこんな舞台に立たせる気はありません。
・・・そうですね・・・私がお相手しても?」
「婚約者の為に代わりに試合に臨むとは・・・うむ、見事な男ぶりだ。
よし!それに免じてお前で勘弁してやろう。」
「はいはい。では、ちょっと待っていてください。」
と、武雄は体を反転させ5人に向き合う。
「・・・タケオ様?なぜ止めるのですか?」
「アリスお嬢様が出たら『血の雨を降らす』を本当にしますのでダメです。」
「・・・タケオ様、怒っています?」
「いえ。アレが弱いのはわかっています。
口に出したことは頂けませんが、私も思ったことです。
別に何とも。ミア、クゥ、大人しくしているのですよ?」
「はい。」「きゅ。」
ミアはアリスの内ポケットから顔を出して返事をし、クゥは頷く。
「タケオさん、平気ですか?」
エイミーが少し心配そうに聞いてくる。
「まぁ、穏便に終わらせますよ。」
「キタミザト殿。賭けがあった場合、どっちに賭けておきますか?」
マイヤーは楽しそうに聞いてくる。
「王者に賭けておいてください。」
「そうですか。」
「では、しばらく離れます。」
と、武雄は舞台に上がるのだった。
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