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第293話 旅の5日目 王都到着・・・ちょっと早いかな?

武雄達一行は王都直轄領の町を出て、王都に向けて移動をしている。

武雄のリュックの上にはクゥが、アリスの胸元にはミアが陣取っている。

「んー・・・何も無いですね。」

アリスがボソッと呟く。

「きゅ?」

「ですよね、クゥ。

 アリス様、クゥが居るのに魔物が近寄って来る訳ないじゃないですか。」

「え?魔物の事じゃないわよ?

 何か面白い突発的な事が起こらないかと楽しみにしているのですけど。」

「アリスお嬢様、それはそれで事後処理が面倒なので嫌なのですけど?」

アリスの言葉に武雄は苦笑する。

「そうそう、タケオ様は王都に着いたら何をします?」

「そうですね。

 まずはテイラー店長から教えられている問屋さんに行って小銃の仕入れ先を確認したいですね。

 次はフレデリックさんからの依頼の魔法師専門学院へのアポイントを取らないと。」

「それはレイラお姉様経由の方が早いのでは?」

「確かにそうですね。

 なら、それは後回しで。

 後は干物屋に行ってみたいですね。」

「ホント、タケオ様は料理が好きですね。」

「あはは。別に料理は好きではないですが、美味しい物を食べると幸せ感がありますからね。

 私は美味しいものが食べたいだけですし、それに美味しい物は皆に出すと好印象でしょう?」

「タケオ様、抜け目が無いですね。

 でも確かにそれでジェシーお姉様もレイラお姉様も篭絡しましたし。」

「まずは胃袋から攻めるのが戦略の基本です。」

「え?本当ですか?」

「ウソです。でも、美味しい物を食べながらの方が話は進みやすいのも事実ですね。」

「なるほど。では、あながちウソでもないのですね。」

「実際は人それぞれですよ。

 ある一方の話がそれで上手く行っても片方では上手く行かないかもしれません。

 そういう手段もあるという程度の認識で居た方が良いでしょうね。」

「なるほど。」

「アリスお嬢様は王都に着いたら何がしたいのですか?」

「私は本屋とかスミスが行く寄宿舎を見てみたいですね。」

「なるほど。スミス坊ちゃんが行く予定の所も確かに見たいですね。」

「はい。

 でも、まずはお迎えの人と打ち合わせをしないといけませんね。」

「そうですね。」

武雄達一行は旅路を行くのだった。


------------------------

「あぁ・・・」

エイミーは城門で唸っていた。

「エイミー殿下・・・そんなに緊張なされなくても良いのではないでしょうか?」

第一近衛分隊長であるマイヤーが声をかける。

エイミーが予定より早めに寄宿舎を出られ、迎えに来ていたマイヤーと合流して、今は城門で武雄達を待っていた。

「第一近衛分隊長は、タケオさんやアリス様に会っていますから良いですけど・・・

 私は初めてですよ?」

「夜会とかでも上手くこなしていると思われますが?」

「あれはあの場だけだから表面を繕っていれば何とかなっているだけです。

 あの『鮮紅』ですよ?私達10代の間では生きる英雄と語られているんですよ!?どうすれば良いのですか!?」

エイミーは興奮と不安でオロオロしている。

「英雄・・・アリス殿がねぇ。

 見た目は、綺麗な貴族令嬢なんですけど。」

「あの童話は、それだけ若者に支持されているのです!」

「はぁ。」

「なんです?」

「いえ、武官として双方を見比べた時、アリス殿よりキタミザト殿の方が功績は高いと思うんですけど。」

「は?アリス様は4倍の敵に果敢に戦われたのですよ?

 タケオさんは、確かにオーガ30体を一人で倒されましたが、数が違います。所詮は500対400ではないですか?

 それにアリス様も参戦しています。

 圧倒的にエルヴィス家有利な状況です。」

「はぁ、そうですか。」

マイヤーが何とも言えない顔をするが口答えはしない。

「あ、あれではないですかね?

 エイミー殿下、来まし・・・あれ?止まって・・・降りた?」

武雄らしき二人組を見つけた第一近衛分隊長は「あれ?」と首を傾げる。

「え?何で止まっちゃうんですか?

 イジメですか?」

エイミーは泣きそうになりながらもお迎え役であるため、その場でただ待つのみだった。


------------------------

武雄達は城門まであと200mの所でお茶をしていた。

ミアとクゥは武雄からクッキーを貰って大人しく食べている。

「タケオ様、何でここで休むのです?

 城門で待っていれば良いのでは?」

「ん?レイラさんから鐘の後とあったのでしょう?」

「えーっと・・・確かにありますね。」

アリスは手紙を確認する。

「なら、鐘の前に行くのは失礼ではないでしょうかね?

 相手が時間きっかりに迎えに来た場合、私達がお茶をしていたら、『待たせてしまった』と思うかも知れないでしょう?

 その後、気を使われてしまうかもしれません。

 なので、待ち合わせの少し前くらいに着くように動くのが良いかと思いますね。」

「んー・・・そう言われると、そうなのかもしれないです。」

「普通はどうなのですか?約束の時とかで待ち合わせの時間より早く付いたら。」

「気にせず待ち合わせの場にいきますよ?

 そこが待ち合わせ場所なのですから。」

「そうですか。

 では、貴族の家に行く場合は?」

「先触れを出しますから、後は大まかな時間に行きますね。

 朝一番、昼前、昼過ぎ、9時課の鐘の頃、夕刻前、夜半・・・いろいろありますけど。

 そもそも時間きっかりの約束はしませんよ?」

「そういうものなのですか。

 皆のんびりですね。」

「タケオ様の所は違ったので?」

「ええ、5分前行動は当たり前でしたね。

 仕事でお客様の所に行くにしても10分前には現地に着いていて、5分前に建物内に入って、時間きっかりに受付に挨拶をする感じでしたよ。」

「何だか疲れそうです。」

「疲れますね。」

武雄は苦笑する。

「なんでそんな社会なのですか?」

「さぁ?それが当たり前と習っていましたが・・・

 今にして思うと『お客様が私の為に時間を割いてくれているのだから遅れるのは失礼』という事なのかもしれませんね。」

「私は今の方が良いですね。」

「ええ、私も今の方が気が楽ですね。」

武雄とアリスは二人して笑う。

と。9時課の鐘が鳴るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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[気になる点] タケオさんの時間の概念・・・読む限り、こっちのギチギチで窒息しそうな現代社会と同じくさいし、王国にあまり持ち込まない方がいいのかも・・・・・。 ~時課の鐘だけよりは便利に、そして、時間…
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