第291話 21日目 朝食後のマッタリ時間。(王家の人々。)
「むぅ・・・」
王城内の食堂の横にある客間で王家一同が朝のティータイムを本来なら楽しんでいるはずなのだが。
レイラが一人だけ悩みながらお茶を飲んでいた。
「・・・レイラ、どうしたの?」
ローナが聞いてくる。
「今日の朝は、タマゴサンドでしたけど・・・」
「あれは美味しかったわよ!まさに美味!最高だったわ。」
セリーナが恍惚の表情で言うと。その場にいた皆が頷く。
「・・・ふむ、美味しかったのだがな・・・レイラ、ウィリアム、何か違ったな?」
「父上も思いましたか?」
「お義父さまも?」
旅に行っていた3人が「なんで?」と思案するが。
「「「え?」」」
他の一同は驚く。
「ちょ・・・ちょっと、あれとは違うの?
凄く美味しかったのですけど?」
アルマが聞いてくる。
「んー・・・何と言うか・・・大きくは違わないんですけど。
何だか味が違う気がするんですよね。」
「微妙な味がな・・・でも大枠でいうと今日のはタマゴサンドだったな。」
「はい。今日のも美味しかったですけど、私的にはタケオさんやエルヴィス家で作ってくれた方がさらに美味しかったような気がします。」
「そうだね。・・・タケオさんが来たら聞いてみようか。」
「そうですね、それが一番の解決方法でしょうね。
と、そうだ。お義父さま。」
「ん?なんだ?」
「朝、アリスから手紙が来たのですけど。
今日、隣町まで移動するそうですよ?
明日には王都に着くとありました。」
「・・・早くないか?」
アズパール王の言葉に皆が驚きながら同意という感じで頷く。
「エルヴィス伯爵から出立したと連絡が来たのが昨日だろ?
明日着くとなると。5日で来ることになるのだが・・・1日早いぞ?」
「ですね。本来なら馬の旅は6日なのに5日で来ましたね。
どんな速度で移動しているのか・・・まぁアリスとタケオさんなので驚きは薄いですけど。」
「・・・なんだろうね。
通常と少し離れている行動をしても二人なら『この程度』と割り切ってしまえる感が凄いよね。」
ウィリアムが苦笑する。
「で、誰を城門まで迎えに行かせるつもりなの?」
セリーナがレイラに聞いてくる。
「え?私が行く気でいましたが?」
「ダメよ。それはダメ。」
アルマが否定する。
「そうねぇ。一応、レイラが招いたのに主催が街の門まで迎えに行っては・・・ちょっとダメね。」
「んー・・・誰が良いのでしょうか?
私がダメならウィリアムもダメでしょう?お義父さまは王城から出れるわけないですし。」
「・・・我は王城から出たいのだがな・・・」
レイラはアズパール王の愚痴をスルーして思案する。
と、エイミーと目が合う。
「え?私ですか?」
「まだ何も言っていないけど・・・そうね、エイミーちゃんなら外に行けるわよね。
寄宿舎はどう?」
「はい。9時課の鐘以降なら特に予定はないですけど・・・同じ年代ならパットがいるのでは?」
「あぁ、パットはダメだ。性格的に出迎えには向かないだろう。
というか、アイツはどこ行ったんだ?」
クリフが自分の息子にダメだしする。
「パットなら寄宿舎の友達と遊んでくると言っていましたよ。
来年の春には卒業ですしね。
遊んでおきたいのでしょう。」
セリーナが言う。
「はぁ・・・大丈夫なのか?
そう言えば、来年はレイラの弟が入って来るのだろう?」
「はい、お義兄様。
ただ・・・スミスに友達が出来るのか心配ですね。
第3皇子妃の弟、鮮紅の弟ですから・・・」
「名が通っている姉2人が居たらやりづらいな。」
ニールが難しい顔をする。
「私達からすれば真面目な弟なんですけどね。」
レイラが苦笑する。
「周りは、そうは取らないだろうな。
エイミーは来年が最高学年だな?」
「はい、お爺さま。
来年は私が生徒筆頭です。」
「ところでエイミー。」
「なんです?お父さま。」
「好きな人は出来たか?」
「はぁ!?」
父が娘にとんでもない質問をする。
周りの大人たちは苦笑している。
「な・・・なに言ってるんですか!?
いる訳ないでしょう?私は王家の人間です。
勝手に好きな相手を決めれるわけないでしょう!?」
「ん?俺はそんなことをエイミーに言った覚えはないんだが・・・
それにここに居る俺ら兄弟夫婦全員、許婚でもなんでもないぞ?」
「そうねぇ、ここに居る妃達は皇子達が勝手に求婚したのよ。」
「・・・うちのアホ息子達は・・・」
アズパール王はセリーナの言葉にガックリする。
「え?・・・え?・・・」
「エイミーが好きになった相手なら俺はちゃんと祝福するからな。
まぁ・・・誰でもいいわけではないが・・・」
「そもそも第2皇子の娘を娶ろうなんて貴族以外にはいないでしょうけど。
・・・ん?来年はアズパール大公の所のグレースも寄宿舎でしたかね?」
「あぁ。
あれ?お主達に会わせていなかったか?」
「前に何度か夜会に来ていましたね。」
クリフが答え、ニールが頷く。
「・・・あのグレースが・・・来年の寄宿舎は荒れそうだわ・・・」
エイミーはガックリと肩を落とす。
「ふむ。俺的にはエイミーはレイラの弟の所に行っても良いからな?」
「お父さま!?」
「お義兄さま!?」
エイミーとレイラが驚く。
「ん?」
「ニール・・・唐突過ぎるわよ?
どうしてそう思ったの?」
ローナが聞き返す。
「いや、俺も貴族を良くは知らなくてな。
周りの貴族達の息子や孫は年齢がまだまだ幼かったり、高すぎたりしているから。
話にあったスミスなら年齢的にも良いのでは?と。
それにエルヴィス家だろう?実直な家系だと思うからなぁ。」
「・・・ニール、我と同じことを考えたな。」
「「「え?」」」
ローナとセリーナ、エイミーが驚き、アズパール王に顔を向ける。
「あら?お義父さま。あの話、本気だったのですか?」
レイラは呆れながら聞く。
「うむ、本気だ。」
「なに?なに?」
皆が興味深々で前のめりになる。
「いえ、そのアズパール大公の孫娘をスミスと付き合うように仕向けるかと前に言ったのです。」
レイラが苦笑しながら言う。
「「「え?」」」
「いや、弟がな。『お転婆でどうしょうもない。このままでは許婚が決まらない』と愚痴っていたから。
なら、エルヴィス家ならアリスという前例があるから御しやすいのでは?と思ったのだ。」
「アリスはお転婆でしたし、お爺さまの屋敷に居ますからね。
なので、どんなお転婆でも大人しくするだろう?と思ったのでしょうけど。」
「タケオも居るからな。お転婆が二人ぐらい居ても何とでも対処しそうだろう?」
アズパール王はクスクス笑う。レイラは苦笑しかできない。
「はぁ・・・どちらにしても本人達が気に入らないとダメですからね。」
ローナがため息交じりに言う。
「それは当たり前だが・・・グレースかエイミーが嫁いだら面白いなぁ。」
アズパール王は楽しそうに笑う。
「お爺さま、会ってもいない方を好きにはなれませんよ?」
「うむ、そうだな。来年から頑張りなさい。」
エイミーは断ったつもりなのだが、アズパール王は気にもしない。
「さてと。じゃあ、明日の出迎えはエイミーちゃんね。」
「はい?」
「あぁ、うちのエイミーで構わない。」
「え?」
「マイヤー。」
「は!」
「お主はアリスにもタケオにも面識はあるからエイミーと迎えに行け。」
「は!寄宿舎が終わる頃、エイミー殿下をお迎えに行きます。」
「うむ、頼むな。
まぁ、迎えに行ってもあの二人が真っ直ぐに王城に来るとは思わないが・・・
王都見物もしてくると良いだろう。」
「父上、タケオさんに私達の正体をいつ明かすのですか?」
ウィリアムが聞く。
「・・・ん?明かしてなかったか?」
「はい。」
「ふむ・・・とりあえず、明日はエイミーもタケオには正体を隠す様に。
あとは・・・適当に・・・タイミングを見計らって話そう。」
「はぁ。」
エイミーがあいまいな返事をする。
皆が「どうなるんだろう?」と苦笑するのだった。
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