第286話 旅の3日目 野宿場所確保。足湯がしたいなぁ。
9時課の鐘の頃、武雄達一行は野宿に最適と思われる場所を街道から探していて遠目から開けている所がありそうだったので、少し森に入ってみると一面芝生の広場があった。
「なんでこんなに開けている場所があるのでしょうかね?」
アリスは周りを見ながら武雄に聞いてみる。
「確かに・・・不自然ではありますよね。
ミア、周りに何か不穏な雰囲気はありますか?」
「特には・・・ないですね。」
ミアはゆっくりと周囲を見回しそう言う。
「では、今日はここで野宿しましょうか。
アリスお嬢様とミアは周囲から小枝とか枝を持ってきてください。
落ちている物で良いので。」
「はい、わかりました。」
「わかりました、主。」
「私はその間に簡易的なかまどとテントを作っておきます。」
武雄は広場の中央付近にある大きい木の根元に行き、テントがしっかりと固定できるかを確認し、屋根部分の布の端にある紐を前面が高く後面を低く枝に取り付ける。
そして床面で寝れる様にテントセットの薄布を引き、飛ばない様に隅にストーンで石を作り出し布を押さえていく。
テントの設置が終わったら、テントからほんの少し離れた所にかまどを作りにかかる。
またまたストーンで石を作り出し、円形の簡易かまどを作る。
あっという間に終了。
「思ったより早かったですね。
やっぱり魔法は便利ですよね。」
と、独り言を言いながらアリスが戻って来ないのでちょっと試しにとある物を作ろうとテントの方に行くのだった。
・・・
・・
・
「タケオ様、戻りまし・・・何してるんですか?」
アリスは武雄が満足そうにテント横で頷いているの見て声をかける。
「二人ともおかえりなさい。」
「主、お風呂を作ったのですか!?」
ミアが驚きながら言う。
「ええ。時間が余ったので、足だけでも温めて寝たいなぁと石積みをしてみました。」
「ちょっと・・・完成度が高いんですけど?」
アリスは武雄が作った足湯場を見て呆れる。
そこには周囲2mくらい、深さ60㎝くらい、縁の幅は50cm以上あり、縁に腰かけられるように作られた石積みの足湯場が出来上がっていた。
「どうやってこれだけの石を・・・あ、魔法ですか?」
「はい。拳大の岩が作れるので、何百と作って置いて、作って置いてをしてみました。
このサイズなら意外と時間はかからなかったですね。
ちゃんと乗っても崩れない事は確認済みです。」
と、武雄はアリスに自慢する。
「どうやって水を抜くのです?」
「ん?ここの底面横にある木の栓を抜くと水が抜ける仕様です。
まぁ、まだお湯を張っていないので確認はしていないですけどね。
今から試験です。」
と、武雄はお湯張りを始める。
・・
・
物の数分でお湯が足湯場に満たされる。
「ふむ。とりあえず、決壊はなさそうですね。」
「いや・・・決壊したら私達のテントが水浸しですが?」
「その際は私の温風で乾かしますから。
でも杞憂でしたね。」
武雄が満面の笑みをする一方でアリスはため息をつく。
「さ、お湯を抜きますか。」
「は?」
「え?お湯が張れるのはわかったので抜こうかと・・・
半分だけ・・・ちょっとだけ抜きますから。」
「・・・どうぞ。」
アリスの許可を貰い、武雄が木の栓を抜くと少しずつお湯が抜ける。
「ふむ、こっちも決壊はしないですね。
完璧です。」
武雄が満足そうに頷き、足湯場の栓をする。
「・・・タケオ様、ご満悦の所、済みませんけど。
かまど近くまでお湯が行っていますよ?」
アリスがお湯の流れた方向を見ながら忠告してくる。
「なんですと!?
・・・じゃあ、こうしましょう。」
武雄は足湯場とかまどの中間地点に立ち、「ストーンエイク」+「エクス」をその場にかける。
「ドガッ」と音と共に深さ20㎝くらいのクレーターが出来る。
そしてゆっくり歩きながらどんどんクレーターを作りつなげていく。
幅の広いU字溝っぽい物をどんどん作っていき、アリス達から10m程度離れた時、武雄の脇の地面が連続爆発する。
「ズドドドドドドドドドドドドド・・・」
音が鳴りやむと。
そこには周囲2m程度、深さ1m程度の穴が出来ていた。
「これでお湯捨て場が出来ましたね。」
武雄がのんびりと歩いて戻って来る。
アリスは額に手を当てため息をつく。
「じゃあ、残りのお湯を捨ててみましょう。」
と、武雄は足湯場のお湯を抜き、流れ出したお湯がちゃんとさっきの穴に到達するのを確認する。
「これで平気ですね。」
「はぁ・・・物凄く無駄な労力かと思うのですけど?」
「そうですか?
まぁ作っちゃいましたので。
アリスお嬢様とミアは足湯でのんびりとしていてください。」
「そう・・・ですね。
ならば堪能させてもらいます。
と、小枝と木を持ってきましたよ。」
アリスが指さした所に乾燥してそうな木と小枝が大量に置かれていた。
「じゃあ、アリスお嬢様とミアがのんびりとしている間に細かくしておきますかね。
まずはお湯張りから。」
と、武雄は足湯場にはお湯張りを始める。
・・
・
また数分でお湯が足湯場に満たされる。
「準備が出来ましたよ。」
「ご苦労様です。」
「さて、私は薪作りと火起こしでもしますかね。」
と、武雄は馬に取り付けたバッグから鉈を取りだし、枝に近づいていく。
「ミアちゃん、お風呂に入りましょうか。」
「はい。」
自分のリュックからタオルを取り出して足湯に向かう。
アリスはズボンの裾を上げ、縁に座り、足を浸ける。
ミアはコートを脱いで、足湯にダイブする。
「はぁ・・・足だけでも違いますね~。」
「お風呂、お風呂。」
「・・・」
アリスはミアが楽しんでいるのをじーっと見ていたが・・・
突然、足湯から出て武雄と自分のバックを漁り、タオルと洗濯物を乾かす為の紐と鍋を持って足湯場に戻ると足湯場とかまどの間の枝間に紐を渡し、タオルを掛けて仕切りを作る。
「タケオ様、覗いちゃダメですからね!」
「は?・・・え?何しているので?」
武雄は、アリスが後ろでうろちょろしているのは気が付いていたが、仕切りを作っているとは思わなかった。
「湯あみします!
覗いちゃダメですからね!」
「はいはい。」
武雄は苦笑しながら「湯あみをするならもう少し大きく作れば良かったかなぁ」と思うと同時に「風神様、強風を!」と心から願うのだった。
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