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第27話 トレンチコートの仕様。

「ところでタケオ様はどんなコートを頼むのですか?」

とアリスは疑問を口にする。

「あ・・・言っていませんでしたね。」

と武雄は苦笑いをする。

「兵士用のロングコート『トレンチコート』を作ってもらいます。」

「トレンチコート?先ほどもその単語がでましたが、どういった物ですか?」

「簡単に言うと防水型の兵士用コートですね。」

「今使っている物ではないのですね?」

「ええ。ポンチョは価格も安いですし、雨具としての機能も高いのですが、

 作業や激しい動きに向かないのが欠点なのです。」

とそこにまだ仮縫い以下の試作品を店員が持ってくる。

「・・・なるほど。どちらかと言うとタケオ様の『スーツ』の上着に似ていますね。」

「はい。しかし、このコートは実用性と外観的な機能美を両立している物と思っています。

 まず生地は、繊維作成時から織目をきつく丈夫に作ってもらい、防水性がある丈夫な布を使用します。

 風雨が強い時でも襟を立ててボタンを全部して、袖口のボタンや腰ベルトをすると中の空気が外に出ることを防ぎ体温低下も軽減できると思っています。」

「結構良さそうですね。」

「さらに収納として内側の左右の胸にポケットを、左右の腰にもポケットを用意し、手帳や筆記具、ちょっとした道具を入れられるスペースを設けます。

 肩にはボタン留めのショルダーストラップを用意して、水筒や双眼鏡、バッグなどを肩にかけてもズレ落ちない様にします。

 また、これを着てしまうと兵士の方の階級がわからないので襟章を考案しました。」

「襟章・・・ですか?」

「ええ。先ほどのここまでの道すがら遠目に何人か兵士の方がおられましたが、階級がわからなかったのです。

 階級がわかる物は本来コートに着けないのでしょうが、認識の為には必要かな?と思いまして。

 襟にボタンの切れ込みを入れておき、襟章はボタン式で留める様にします。」

「なるほど。ちなみにどういった物を考えていますか?」

「スミス坊ちゃんの説明では、兵士長、小隊長、兵士の3階級でしたよね?」

「そうですね。」

「階級的にはそうですが、小隊長と兵士の間に役職がありませんか?

 小隊長が抱える人数が多いので班長の役割を持っている人がいると思うのですが?」

「給与的には変わらないのですが、班長は居ると思いますよ?」

「では、襟章は4階級としましょうか。

 ちなみにエルヴィス伯爵領の兵士の旗の色は何ですか?」

「鮮やかな赤ですね。」

「では、鮮やかな赤の長方形の布の中央部分に白線を1本入れたのみを兵士とします。

 鮮やかな赤の長方形の布の中央部分に白線を1本入れ星マークを1個付けたのが班長。

 鮮やかな赤の長方形の布の中央部分に白線を1本入れ星マークを2個付けたのが小隊長。

 鮮やかな赤の長方形の布の中央部分に白線を1本入れ星マークを3個付けたのが兵士長としてはいかがでしょう?

 あとエルヴィス家の紋章をあしらった襟章も必要ですね。

 右襟に階級章、左襟に所属章を付けて貰います。」

「なるほど。それなら対面した時にその人の役職と所属がわかりますね。」

「そうですね。ただし、所属章の作成はエルヴィス伯爵の許可が必要なので作るかは保留です。」

「あとでお爺さまに聞いてみましょう。」

「と、そんな感じのコートを作る気なのですが、お嬢様の意見はどうですか?」

「私は何とも言えませんね。

 機能としては随分良さそうですが、価格を抑えるのは先ほど仰っていたのが理由ですよね?

 それだけでは、あまり売れないのではないでしょうか?

 他には何か意味があるのですか?」

「そうですね。

 まず、このコートは個々に採寸はしない様にします。」

「え?服は採寸するものではないのですか?」

「・・・それは個人の依頼ならです。将来は何百着と作るのです。

 これは価格を下げるための方法にも繋がります。

 大まかに4種類 S・M・L・LLを作ります。

 Sは155cm、Mは165cm、Lは175cm、LLは185㎝を基準に作ります。」

「私のサイズはS?M?どちらでしょう?」

「アリスお嬢様は・・・Mでは?」

と何気にアリスの胸を見てしまう。

アリスも武雄がどこを見ているのかわかった様で顔を赤らめながら軽く睨んでくる。

「ははは。アリスお嬢様はスタイルが良いですからね。」

「むぅー・・・」

とアリスは唸りながら武雄を見上げる。


「アリスお嬢様。組織である兵士には、ある集団心理があると言われます。

 同じ物を持って、同じ飯を食べることによって仲間意識を強くすると。」

「はい、そうです。」

「このコートはそれを刺激すると思います。

 それに外観が皆一緒な集団は傍から見て壮観だと思うのです。」

「たしかに。」

アリスは頷くのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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