第273話 17日目 就寝。
今日も「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が客間を出ていき、武雄とアリスとミアも寝室に戻った。
就寝前の日課を終えて、今は武雄とアリスとミアがベッド横でお茶をしながらマッタリしている。
「はぁ・・・明日は出立ですね。」
「そうですねー。」
「ミア、どうします?来ます?」
武雄がミアに聞く。
「え?主、私を置いて行く気だったのですか?」
「いえ、自分の事でいっぱいいっぱいだったので、ミアの考えを聞いていませんでした。
どうします?ミア、留守番しますか?」
「行きます!」
ミアは勢いよく宣言する。
「わかりました。
では、ミア、改めて忠告しますよ?
この街以上に王都は人間の欲望が渦巻いています。
ミアを見世物にしたい、研究したいと強奪してくる輩がいないとも限りません。」
「はい。」
「旅の際は、私やアリスお嬢様の近くに必ず居なさい。
そして街や町、村に入ったら出来るだけ私かアリスお嬢様のポケット内に居なさい。
そこから顔を出すのは可にしましょう。
周りを見たいでしょうからね。
万が一、捕まりそうになったら、高く飛びなさい。
私達は自分達で自分の身は守れます。
ミアは私達を気にせず、一度高い所に逃げて周囲を確認してから隠れなさい。」
「はい。」
「あと食べ物とかも気を付けないといけないですね。
いきなり食べてはダメですからね?お金を払って買ってから食べるのですからね?」
「わかりました。」
「んー・・・そのくらいですかね?
アリスお嬢様、何かありますか?」
「そうですね・・・何かを見つけたり、美味しそうな匂いがしても勝手に行ってはいけませんよ?
必ず私かタケオ様に言ってからですからね?」
「はい。」
「束縛してしまいますが、それが一番安全です。
ミアちゃんは下手したら即、研究室に送られて一生外には出れない可能性すらありますからね?」
「わかりました。
それにしても主もアリス様も心配性です。」
ミアは苦笑する。
「はは、元々ミアは人間に捕まっていたのですから、心配にもなりますよ。
ミア、勝手に私の元から居なくなってはいけませんよ?
私やアリスお嬢様が悲しくなりますからね。」
「はい、主。」
ミアは元気に返事をする。
「ちなみにミアちゃん、国の中心地に行ったことはある?」
「んー・・・魔王国くらいなら・・・でも・・・あれはどうなんでしょう?」
「どうとは?」
「いや・・・実際に魔王国の王都は寂しいんですよ。」
「「え?」」
武雄とアリスは驚く。
「寂しいのですか?煌びやかとか賑やかではなく?」
「はい。魔王国の王都は文官、武官、各種族の代表たち・・・そんなのしかいませんでしたね。
あ・・・一応、住民はいましたけど・・・この街の様に皆が笑ってもいない・・・淡々としている感じでした。」
「へぇ・・・行く気がなくなりましたね。」
「ですね。楽しいところなら行ってみても良いと思いますけど・・・」
武雄とアリスが魔王国に対する興味が失せていく。
「でも、各領地や種族の村は楽しいんですよね。
皆が楽しんでいる感じがわかって、賑やかなんですよ。」
「・・・普通逆なのでは?」
アリスが呆れながら言う。
「ふむ・・・政争が激しく、いろいろ情報の飛び交う街となっているのでしょうか・・・
殺伐としているのかもしれませんね?」
武雄も半ば呆れながら言うのだった。
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ミアが自室に戻っていき、タケオとアリスはベッドにゴロンとしている。
「タケオ様?」
「んー?どうしました?」
タケオはアリスの横で地図を見ながら答える。
「いえ・・・明日は朝食を取ったら出立なのですよね?
で、夕方ぐらいに村に入るのですか?」
「そうですね。
雑貨屋で見つけた、簡易地図で村や町の位置が書いてありますが・・・
実際に私の乗馬技術でどのくらい進めるのかで2つ目なのか、3つ目なのかが変わりますね。」
「駆け足ではないので、大丈夫ですよ・・・たぶん。」
「まぁ、最悪はケアを馬にもかけて休憩なしという手もありますね。」
「確かにそういう手もありますが・・・そこまで急ぐこともないですよね?」
「はい。無理せず明るい内に村に入る様にしましょうか。
と、言っておいてなんですが。」
「はい?」
「この地図を信用するとして、エルヴィス領の最西の村を出て、王都直轄領の村に着くのに日中移動では間に合わないと思えるんですよね。」
「え?そうなのですか?」
アリスが横に半回転してタケオの地図を見れる位置にくる。
「・・・他の村とか町とかの距離と比べると1.5倍くらいはありますかね。」
「ここは野宿をするしかないですかね?
適当な広場があれば良いのですけど。」
「そうですね・・・ここら辺で野宿ですかね・・・
雨だったらどうしましょう?」
「休憩なしで村まで行きます。
雨の中の野宿なんて辛すぎます。」
「そうですね・・・それが良いですね。」
「さてと・・・えい!」
武雄がアリスを抱きしめる。
「ふぁぁぁ・・・どうしたのです?」
「旅はミアが一緒でしょう?・・・夜が寂しいので今のうちに堪能しようかと。」
「え?・・・え?・・・ちょっと・・・明日は出立・・」
「関係ないですね。」
「あぁ・・・目が本気です・・・」
アリスは諦め、タケオの好きな様にさせるのだった。
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