第26話 街の発展構想。
「ところで、アリスお嬢様。」
武雄はアリスに語り掛ける。
「はい、なんでしょう?」
「良いカフェは見つかりましたか?」
アリスはドキッとする。
「えーっと・・・」
アリスが口ごもっていると、武雄が先に謝ってきた。
「アリスお嬢様。申し訳ないのですが、お嬢様とのカフェは明日に延期していただきたいのです・・・」
突然の事にアリスが戸惑っていると、武雄は続けて理由を説明する。
「ご覧のように今はこのような状態でして、一段落するにはまだ時間が掛かってしまいそうなのです。
せっかくお嬢様にカフェを探していただいたのに本当に申し訳ありません。
明日はカフェに行く事をメインにしますので、お願い出来ませんか?」
アリスは驚く。これは丁度良いと。
「あの・・・タケオ様。実は私も謝らないといけないことが・・・」
と、アリスは後ろに持っていた紙箱を出し、苦笑しながら言い出す。
「店が混んでいたので、買ってきてしまいました。」
武雄は驚いたようにアリスの顔を見ると、2人はどちらかともなく笑い合うのだった。
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区切りのいい所が出来たので、ひとまず休憩を取ることになり、店員が武雄とアリスが座っている席にお茶を持ってくる。
流石に全員分を買ってきてはいないので、アリスと武雄と店長がカフェのお土産を食べる。
他のスタッフは近くに居ながらも個々でマッタリとしていた。
「さて、皆さんもマッタリしていて丁度良いので、私の考えを聞いてもらいます。
これは先ほども店長さんに簡単に説明しましたが、コートに関わる事。
そしてアリスお嬢様と話をしていたことの追加です。」
武雄が話し始めたので、アリスも店長も店員達も聞く体勢を取る。
「先ほども言いましたが、この店の中枢部分はここの街に置いていただきます。
その理由の1つは、王都での貴族の政争に巻き込まれたくないという事です。
もちろん、アリスお嬢様の様な綺麗な方のドレスを仕立てたい。大金持ちになりたい。など、
今言った夢を叶える最短の道が王都への出店であることは間違いありません。
先ほど話していたのは、私・・・キタミザトの考え方です。
自身の夢を叶える為に王都で一旗上げることを否定はしません。」
皆を見ると軽く頷いている。
「2つ目は今から作り、販売するコートの理念に共感する者がここに集まる可能性があります。
店長さんの話では、このコートの理念は真新しいという事です。
新しい考え方を披露すると、実際に見たいとか学びたい、作りたいという若者がこの街に来ると予想します。
そうした際にこの店で受け入れて欲しいのです。
3つ目は将来、最大で年間数百着を作る可能性があります。
この街に大量生産が出来る仕立て工場を作ってもらいたいのです。」
皆を見ると軽く驚いている。
「まぁ、2つ目、3つ目の理由は今すぐではなく、何年後かの見通しなのですけれど。
この2つが上手く行った時、この街へ人・物・金が流入します。
私は、この街の発展に寄与したいと思っているのです。
ちなみにアリスお嬢様?」
「はぃ!」
とアリスはいきなり呼ばれて変な返事をする。
「これが私の考える将来的なエルヴィス家への利益と考えています。
この店を中心に衣服の職人が集まればいろんな考えの服が出来始めます。
もしかしたら『衣服の街』と言われるくらいに発展するかもしれませんね。」
武雄の言葉にアリスだけでなく皆が驚く。
「どこまで壮大な夢を語るのだろう」と。
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