第272話 17日目 夕食後の報告会。(小銃改3とドラゴンの話。)
「はぁ・・・話題が少し暗くなったの。
まぁ現状では何もできないのじゃ。
逆に言えば起きた時に考えれば良い話じゃの。
あまり気にするでない。」
「「はい。」」
アリスとスミスが返事をする。
「うむ・・・で、タケオ、他に何をしておったのじゃ?」
「小銃改2・・・連発出来るかの試射をしてきたのですが・・・
いまいちでしたね。」
「そうなのかの?」
「はい。今の小銃改1は毎発5秒かかっています。
小銃改2は威力を落とし毎発2秒になったのですが・・・威力が落ち過ぎました。
なので、打開策が見つかるまで違う銃を考えることにしました。」
「うむ。」
「小銃改3の射程は小銃改1と同じ1200mで、威力は2~3倍以上を目指します。」
「さらに高威力を作るのかの?
この間の小銃改1でも十分じゃと思うがの。」
「対生物では良いと思うのですが・・・今度は城門に穴を開けられる程度の威力が欲しいと思います。
いわゆる攻城兵器ですね。
ちなみにここではどんな攻城兵器を?」
「タケオ様、攻城兵器とは門を壊す兵器と考えて良いのですか?」
フレデリックが聞いてくる。
「はい。私の中では、現状の戦争で一番死傷者が予想されるのが敵城攻撃です。
相手は頭上から攻撃出来て、こちらは門を削るしかない・・・死者が大量です。
この門がそこまで時間をかけなくても開けられるなら・・・死傷者が少なくて済みますので。」
「うむ、確かにの。
ちなみにうちでは、縄と丸太を使って叩く感じだったはずじゃ。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが頷く。
「私が王都とカトランダ帝国に行っている間に作って貰う様に依頼してきました。」
「うむ。」
「で、話の流れでドラゴンの話になったのですが・・・」
「「ドラゴン?」」
エルヴィス爺さんとフレデリックが話の展開が読めず「はて?」という顔をする。
「はい。ドラゴンを追い返せるくらいの威力は欲しいよね?と話していたのですけど。
で、ミアが言うにはドラゴンは生きている物で4種類いるそうなのです。」
「4種類?3種類じゃろう?」
「アリスお嬢様もテイラー店長も3種類と習ったと話していましたね。
その上にブラックドラゴンと言うのがいるらしいのです。
そうでしたよね?ミア?」
「はい、その通りです、主。
ブラックドラゴンは他のドラゴンと同じで炎のブレスをしたり範囲攻撃が出来たり、打撃攻撃が全部毒だったりします。
でもドラゴン種は温厚なので滅多に戦闘を目にする事はないですけどね。」
「そうなのかの?
文献や物語では気ままに襲っているイメージがあるのじゃが?」
「んー・・・あのドラゴンが気ままに戦闘を?
のんびり屋さんで有名でしたよ?『動くのも面倒』とか普通に言っていましたけど?」
「それだけ聞くとただの引きこもりですね。」
「ぐうたら魔物にしか聞こえませんね。」
武雄とアリスが苦笑する。
「人間側から手を出したのでは?」
「ふむ・・・そうかもしれぬの。」
「ミア、ドラゴンは何で魔王国以外にもいるのですか?
仕掛けてくる人間がいない方が住みやすいのでは?」
武雄が素朴な疑問を言う。
「え?魔王国を嫌がっているからですよ?
戦いを挑んでくる者がいないという理由で魔王国にいるだけですし・・・」
「「は!?」」
エルヴィス爺さんとスミスが驚く。
「ふぇ?何を驚くのです?」
「いや・・・意外だったからです。
最強種なら魔王国王を目指しているのかと・・・」
「いえ、ドラゴンは国という物を気にしていません。
他種族に従う気もないし、従わせる気もありません。
『魔王国は毎回、参戦しろとうるさい』とうちの森に来たときに言っていました。」
「んー・・・魔王国を嫌がっているのはわかったのですが、何で国王を目指さないのかわからないですね。」
スミスは考える。
「うむ・・・アリス、わかるかの?」
「最強だからです。」
「え?
お姉様、強いなら弱い者を従わせたいのでは?」
アリスの簡潔な答えにスミスが驚く。
「んー・・・そうではないのでしょうね。
そもそものんびり屋さんなのでしょう?
タケオ様、続きをお願いします。」
「ん?唐突にこっちに振りますね・・・
まぁ良いでしょう。ドラゴンが最強がゆえに国のトップに就かない理由ですよね?」
「はい。」
「まずは国とは何か?という事を考えないといけません。
スミス坊ちゃん、国の最低限の役割は何ですか?」
「国民を守ることです。」
「はい、そうですね。
では、国の作り方を知っていますか?」
「え?・・・んー・・・」
「言い方を間違えましたかね・・・
では、初期の国の事を考えましょうか。
物凄く簡単にそして極論でいきますよ?
まずいろんな人が居ます・・・てんでバラバラに好き勝手に生きています。」
「はい。」
「その内、とある二人が喧嘩を始めました。
他愛もない・・・狩ってきた食料がそっちの方が多い少ないと言った事です。
その喧嘩は殴り合いにまで発展・・・体力に劣る一方は体力に勝る者に負けます。
そして勝者は敗者に言います。『毎回、取ってきた食料の2割を寄こせ』と『その代りお前を守ってやるからな』と半ば強引に。
そんな喧嘩があちこちで始まり、勝者と敗者がどんどん作られて行き、敗者は勝者の下に集ってきます。
ほら・・・集団が出来始めました。
そんなこんなで集団が村になり、村同士が戦い、負けた方が傘下に入り、村が大きく成れば町になり、町同士が戦い、負けた方が傘下に入り・・・今のこの国の様になります。」
「なるほど、勝者が安全を売って食料を得る体制・・・国ですね。」
「まぁ、実際はわかりませんよ?ただの例ですから。」
「はい。」
「さて、ここで問題です。
勝者はなぜ敗者を守ってあげると言いましたか?」
「え?・・・食料を得る為です。」
「ドラゴンは食料を必要とするのでしょうか?」
「それは・・・わかりません。」
「スミス様、ドラゴンは食料を必要としません。
大地からの魔力を食べているので食事は要りません。」
「自らが最強なのです・・・外敵がいないので徒党を組む必要もない、食事もいらない
そういう事ならば、わざわざ弱い者の為に戦う理由はないですね。
国に所属する意味もないのです。」
「そう言われると・・・そうとも言えますが・・・
んー・・・腑に落ちません。」
スミスが眉間に皺を寄せながら悩む。
「・・・まぁ、結局の所は好き勝手に生きたいのでしょう。
魔王国からすれば住んでいるのなら国の為に戦えと言いたくなる気持ちもわかりますけどね。
ドラゴンからすればただ居るだけで何の意味もない戦いをさせられるなら他に行きますと思っているのでしょう。」
「んー・・・自分勝手ですね。」
「最強ですからね。したいようにして誰かが怒っても誰が自身の生命を脅かせるのです?
逆に無理を言うなら魔王国で暴れるよ?と言えば済む話ですね。」
「わぁ・・・わがままです。」
スミスが呆れながら感想を言う。
「なので、最強だからこそ国王を目指さない理由だと私は思いますね。」
「意味がない・・・ですか・・・わかりませんね。」
「ええ、私達は最強ではなく・・・どちらかと言えば最弱の分類です。
なので、集団でしか生活はできません。
ドラゴンの心境なんて考える必要もないです。」
「わかりました。」
スミスは頷くのだった。
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