第262話 最高幹部会議。(戦術研究所 設立素案。)
アズパール王がメモを見つけ説明をし出す。
「えーっと・・・
王立戦術研究所、設立素案。」
「あ、本当に書いたんだな・・・」
ニールがタケオに同情する。
「内容が凄いですよ?
兄上達、今から父上が言うのはタケオさんがその場で思いついた内容ですからね?」
ウィリアムが苦笑する。ニールもクリフも不思議そうな顔をする。
「1.王の下に王立戦術中央研究所を設け、中央研究所の所長は王家から選出する。
これは先端技術であり、先端戦術を国外流出させない為、内容を見れる者を限定する為に王家に属す。
2.王立戦術中央研究所の下部組織として、カトランダ帝国、ウィリプ連合国、魔王国に面している所に第1から第3王立戦術研究所を設ける。
これは各地方によって相手が違う為、それに合わせた武具の開発と戦術を確立することを目的として敵国に面した貴族領の内一つを選び、そこに国からの依頼として資金を提供する。
3.下部組織から中央研究所には研究報告と試作品の提供を行う事。
また下部組織からは研究リストを事前に提出し、中央にて研究の方向を判断願い実施する事。
これは明らかに非人道的だったり、国を亡ぼす様な内容は禁止する為に行う。
4.中央研究所は、最低年1回、王都にて報告会を開催し、第1から第3王立戦術研究所の所長は必ず出席する事。そして中央は各々の進捗状況を確認する事。
また、各研究内容は中央で集計し、結果をまとめて各研究所に配布する事。
これは同種の研究をする無駄を省く事と、他方で行き詰っていても解決策が出る可能性がある為に行う事。
5.研究所所長は、以下の責を負う。
研究資金管理。研究に関わる事項全てとその報告義務。
試験小隊の設立および運営(最大10名)。
研究者の雇用。雇用に関しては、必ず守秘義務を契約すること。
ただし、民間転用をしても良い技術は中央に確認を取り実施できる物とする。
また各所長は王都に詰めなくても良く、各研究所にて研究の指示、監督を行う事。
6.運用資金概算
武器試作に対し、試験及び試験運用をするために試験小隊として10名程度の半個小隊の設立を許可する。
これは各貴族領の戦力バランスを維持し、過度の兵士雇用を防ぐとともに、王都に対し最新装備で固めていても脅威にならない数にする事。
試験小隊人件費:10名として年金貨360枚、武具や馬、演習の費用:年金貨50枚、
武具の開発および戦術の勘案の研究者:3名として年金貨110枚。
武具の開発費用:年金貨80枚。
合計:年金貨600枚と試算する。」
アズパール王が説明を終えメモを懐にしまう。
と、文官がざわつく。
「ね?」
ウィリアムが苦笑しながら聞く。
「これは素案なのか?実施に向けての具体案としても十分通用するぞ?」
ニールが答える。
「これをその場で考え付いたのか?」
クリフが聞いてくる。
「ええ、夕飯後のティータイムで。」
「凄いな・・・」
クリフが悩み始める。
「と、どう思う?」
陛下が聞く。
「陛下・・・そのまま実施しても可能なくらいの内容でしたが?」
「だろう?タケオは凄いと感心してしまうな。」
「はぁ・・・ますます王都には呼べませんね。
エルヴィス伯爵や伯爵の所の文官達は凄いですね。この様な内容を毎回聞かされるのですね・・・
王都でこれをいきなり『素案です』と持って来られたら凄まじい反発がありそうですよ。」
「そうだな。
それにしても特に組織関係の所は良い考えだと思ったんだが・・・
資金については、タケオの見通しはどうなのだ?」
「そうですね・・・項目的には少し配分がおかしいですね。
ですが、全体的には概ねその通りでしょう・・・
それにちゃんと王都に対し、脅威にならない様に半個小隊にしたり、研究内容は実施する前に王都でチェックさせる等の国の機関として考えられています。
良い案だと思います。」
「うむ。
我はこの戦術研究所の案を進めたいと思っている。
これを素案に文官で詰めていけるか?」
「私共が出来るのは・・・後は資金をどう調達するかぐらいですね。
そう言えば3か国に面した貴族とありましたが?」
「うむ、タケオは一つの場所で研究しても偏るから各々の戦場で有用な物を見つけていけば結果、王都の戦力が向上するのでは?と言っていたな。
なので魔王国に対してはエルヴィス家のタケオを選出して、カトランダ帝国、ウィリプ連合国については・・・クリフ、ニール。」
「「は!」」
「お主達で1名ずつ貴族に推挙しろ。その者を研究所の所長にする。
ウィリアムは。」
「私はタケオさんを推挙します。」
「うむ、すまんな。」
「いえ。」
「と、いう訳で王家枠を使って一気に3名の男爵の爵位を認可する。
また、その3名は研究所の所長に就任させる。
アリスについては騎士の爵位を認可する。
以上だ。
オルコット、それで調整してくれるか?」
「は!陛下のお心のままに。」
オルコットの言葉に文官幹部全員が頷くのだった。
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