第261話 最高幹部会議。(旅の報告。)
「さて・・・息子達の考えは聞いたから
そうだな、今回旅に行ってきた報告をしたい。
ウィリアム、補足をしてくれ。」
「父上、わかりました。」
「まず、事の始まりはエルヴィス伯爵からウィリアムの側室レイラに送られてきた手紙から始まる。」
アズパール王は説明を始めるのだった。
・・
・
------------------------
「と、いう訳で我はアリスとタケオを貴族にしたいと考えている。」
アズパール王は指輪の話(指輪の付与効果は説明なし)やトレンチコート関連の話、戦闘の経過と戦術の考察の説明をする。
「「「「・・・」」」」
皆が口を開けながら驚きで言葉が出て来ない。
「ん?ウィリアム、我は何か説明不足があるか?
皆が何も言わないのだが?」
アズパール王は心配になりウィリアムに助言を求める。
「いいえ、ありませんね。
強いてあげるなら、エルヴィス家の次期当主の話ぐらいでしょうか?」
「そうか。
あ、ちなみにエルヴィス家の次期当主スミスにも残り1個の指輪を下賜したからな。
ただの王家の紋章付の指輪だから問題ないだろう?
まったく今回は大事にならずに済んだな。
見つけてくれたアリス達に感謝しないといけないだろう。
それにしても今回の戦闘で一番の成長を見せたのはスミスだな。」
「そうですね。」
アズパール王とウィリアムが朗らかに言う。
「ん?そのタケオが凄いって話ではないのか?」
ニールが聞いてくる。皆が頷く。
「ニール兄上、アリスもタケオさんも確かに武力、知力は凄いのですけど。
どちらも完成されているのです。
これ以上は伸びしろがありません。
それよりもスミスが戦闘後に『民を守り、民を幸せにする・・・ひいてはエルヴィス家に関わる全ての人達を幸せにし、敵だった人達さえも幸せに出来る当主になります。』と覚悟を決めましてね。
ふふ、まだまだ12歳の子供が自分の将来像を語ったのですよ?
ちなみにレイラは、その言葉で泣いていました。」
「ああ、あの言葉は次期エルヴィス家の・・・違うなこの国の将来に取って輝かしい物だ。
クリフ、お主の息子が従えさせないといけない人物だが・・・逸材だろう?」
「はい。その言葉、次期当主に相応しい考えです。
そこに知力のタケオ、武力のアリス、姉夫婦が支えるエルヴィス家は次代に向け動き出しますね。
うちのバカ息子・・・大丈夫だろうか・・・」
クリフはため息交じりに呟く。
「なぁに、パットもいろいろ考えているさ。
兄上、俺ら3兄弟もそのぐらいの時期にいろいろ話したではないですか?」
「ん?そうなのか?」
アズパール王がニールに聞き返す。
「ええ、兄上達に深夜起こされて眠いながら討論させられました。」
ウィリアムが苦笑する。
「そうだな。今思えば、あの時の討論は面白かったな。
政治も軍事もわからず、どうやればこの国が豊かになるのか、子供ながらに考えたな。」
クリフも笑いながら言う。
「兄上、ウィリアム。あの時の考えなら今頃この国の人口は500万にいっていたのにな?」
「そうだな、ニール。少し遅れているな。」
「政治は難しいですよね。」
3兄弟は笑いながら言い文官達は嬉しそうに聞くのだった。
「さてと・・・タケオが男爵、アリスが騎士の件で問題はあるか?」
「いえ、アリス殿は以前からの異名と武勲で問題なく。
キタミザト殿も先の説明を聞いた限りでは、知識、武功共に男爵に相当すると私も思いますので、男爵、騎士の推挙の要件自体は問題ないとは思いますが・・・」
オルコットが難しい顔をする。
「ふむ、何かあるのか?」
「いえ、それほどの知識を持っていらっしゃるのでしたら王都に招集してはいかがでしょうか?」
クリフもニールも他の文官達も頷く。
ウィリアムは苦笑する。
「んー・・・それなんだがな・・・
タケオもアリスも王都に興味が無いんだ・・・
王都で何かなそうとして、皆に説明し、反対され、また説明して・・・そのやり取りをする時間が面倒だと言っていてな。」
「はい?」
オルコットは不思議そうな顔をする。
「早く言えば、今の環境が一番やりやすいと言っていてな。
発案してから実際に行動するまで数日で決めてしまうのが、今のエルヴィス家なんだ。
王都で何か発案したら実行までにどのくらい時間がかかると思う?」
「・・・各部局への説明、予算割り・・・早くても2か月はかかるかと。」
「・・・タケオはその時間がもったいないと言っていてな。
我はタケオの知識は凄いとは思うが・・・奴の最大の魅力は自由な発想と行動力だ。
王都で我の元に居ることは出来るだろう・・・だが、最大の魅力である自由な発想と行動力は制限される恐れがある。
エルヴィス家では事後でタケオの行動を追認している。
もちろん最終的な契約だったり文官や武官を動かす命令は伯爵がしているがな。
お主達王都の文官では、たぶん許さない方法でタケオは政策素案を持ってきているぞ。
・・・勝手に契約の内容を決めて来たらお主達は怒るだろう?」
「事前に言って欲しいですが・・・それも?」
「客先とほぼほぼ決めてから持ってくる・・・なんてざらみたいだが?」
「王都には呼べないですね・・・それは不協和音過ぎます。」
「だろ?
かと言って、二人の国外流出を許せば将来、国を揺るがす惨事になる可能性もある。
だから二人を貴族にして国に根付かせたいのだ。
しかし、タケオの知識を国にも使いたいのは確かでな。
王都に呼んだらお主達文官と衝突しました・・・なんて事になったら意味がないのだ。
なら、国の機関・・・例えば・・・そうだな。
研究所の様な戦術、政策、武器の考察をさせる機関に押し込んでしまえば、我々は知識のみが来る、そして時間をかけて吟味すれば良いと思ってな。」
「確かに・・・それほどの人物を一伯爵のみで占有するのは勿体ないですね。
だが、我々の同僚では使い勝手が逆に悪くて行政が滞るでしょう・・・
そういう事なら陛下の仰った研究所は妙案ですね。
キタミザト殿は研究資金を、我々は知識の国外流出を予防し、国の為に知識を得る・・・どちらも良い関係です。」
「でな、タケオに聞いてみたのだ。『もし戦術や武器の研究機関を作るならどう作る?』と。」
「え?父上、本人に聞いてみたのですか?」
クリフが聞き返す。
「ああ、面白いだろ?
タケオを縛る為にタケオに意見を聞いてみた。
もちろんタケオを縛るとは言っていないぞ?
『国として脅威に備えるためにタケオの様に戦術や武器を研究させたい』と言ってな。」
「陛下・・・無茶をしますね・・・自分自身を縛る為の機関の設立素案をさせるなんて・・・
で、どう回答をされていましたか?」
「えーっと・・・メモが・・・
それに『いくらぐらい資金が必要だと思う?』と聞きもしたぞ。」
「はぁ・・・キタミザト殿が不憫です。
まさか自分を国外流出させない為の政策を自身で考えさせられているなんて考えなかったでしょうに・・・」
オルコットや他の文官幹部が苦渋の顔をしながら頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。