第260話 最高幹部会議。(皇子達の会話。)
9時課の鐘が鳴っている。
広間の扉を開けアズパール王が入室してくる。
その場にいた全員が起立して出迎える。
「皆、揃っているな。」
そう言い席に着くと、皆も席に座る。
「さて、今回は皆に心配させた様ですまなかったな。」
アズパール王は苦笑しながら皆を見る。
「父上、無事の帰還何よりです。
ウィリアムもご苦労様。父上のお守りは大変だったろう?」
第1皇子がそう苦笑しながら言いアズパール王以外の皆が頷く。
「クリフ兄上、久しぶりの王都外は楽しかったです。」
ウィリアムがそう答える。
「ウィリアムがここを離れるのは久しぶりだったな。
どうだった?」
第2皇子が聞いてくる。
「ふふ、ホント久しぶり過ぎて感動が多かったですね。
ニール兄上やクリフ兄上の所には行った事がありませんが・・・
少なくともエルヴィス伯爵領までの道すがらの民達は生き生きとしていました。
国の経営は報告書の通り順調な様ですね。」
「ふふ。
ニール聞いたか?あのウィリアムが成長しているぞ。」
クリフが嬉しそうに言う。
「ああ、良い成長だな。
街道の民を見て生き生きしていると感じ取るとは。
今度、俺の所にも来て感じたことを言って欲しいな。」
ニールが驚きながら嬉しそうに言う。
「兄上達は僕の事をどう思っていたのでしょうか?
そこが聞きたいですが?」
ウィリアムが苦笑しながら聞く。
「お前は政策を文面で読み取る癖があるからな。
あまり外には興味は無かったし・・・
民とのふれあいよりも報告書を見て頭で考えて結果を出そうとするだろう?
まぁニールみたいに民とのふれあいばかりしているのも問題だけどな。」
「兄上・・・俺だって報告書ぐらい見たり書いたりしていますよ。
ただ、報告書は実感が湧かないんです。
実感を得るために外に出ているだけですよ。
兄上が出来過ぎなのです。
俺やウィリアムが偏っているわけではないですよ。
むしろうちら二人の方が人間として当たり前です。」
上二人の兄からの評価にウィリアムは嬉しくなる。
「そうです、クリフ兄上が出来過ぎなんですよ。
なんでそう上手い具合に報告書作成に会議に外回りが出来るのですか?
クリフ兄上は、ちゃんと寝てます?」
ウィリアムがニールの言葉に乗ってクリフを弄りだす。
「弟達に弄られる兄・・・なにこれ?
いやいや普通だろう?時間を区切ってちゃんと対応すれば良いだけだろう?」
「「普通じゃありません。」」
「んー・・・私にとっては普通なんだよ?
むしろお前たちがどちらかに偏り過ぎなんじゃ?」
「違いますよ。それに僕は領地は無いですからね。
兄上達の報告書を読んで添削するのが仕事ですから。
それにしてもニール兄上、意訳するのに面倒な言い回しは止めてください。
資料を見ながら兄上の思考を考えるのは大変なんですよ?」
「ウィリアム、いつもすまんな。」
ニールは苦笑しながら謝って来る。
実はクリフもニールも王都への報告書はまずウィリアムに送って添削をしてもらっている。
皇子からの報告書に誤字、脱字は許されないとの事でウィリアムが受け付けていた。
「そうだぞ、ニール。もっと文官を育てないといけないぞ?」
「わかっています。」
「クリフ兄上もですよ?」
「私の所もあるのか?」
「文章全体が簡潔過ぎます。
もっと背景や他の考察も入れないと王都では全体像がわかりません。
ある意味ニール兄上より厄介です。
クリフ兄上の場合は過去に提出されている報告書を添付するので一々書庫に行くのが面倒なんです。」
「だそうですよ、兄上?」
「う・・・わかった・・・気を付ける。」
弟の文句に兄二人がタジタジになる。
「まったくお前ら兄弟は仲がいいな?」
アズパール王がため息を漏らす。
「「「普通でしょ?」」」
3人は一緒に反論する。
「いや・・・普通は政争とかありそうなんだが?
カトランダ帝国は凄いらしいじゃないか?」
「兄弟間で争ってどうするのです?
王はクリフ兄上が継げば良いんです。」
「そうだな、ウィリアムの言う通りだ。
俺も何でもこなせる兄上が継げば良いと思うぞ。」
ウィリアムもニールも王に興味がない様だ。
「・・・お前ら二人は王座に興味はないのか?」
「「特には?」」
二人とも即答する。
「父上を見ていると国の事も考えて自分の王領まで考えるのでしょう?
俺にはそんな広大な土地は管理できないですね。
今の大きさで十分です。」
「僕は領地経営をしたことないので、広大な領地を管理できるか不安ですしね。
するなら小さいのが良いですね。」
「・・・なんだかお前達の話を聞くと厄介事を私に押し付けようとしてないか?」
クリフが苦笑する。
「「いえいえ。」」
二人ともまた即答する。
「はぁ・・・兄弟の仲が良いのはありがたいな。」
アズパール王の呟きに文官達は苦笑するしかなかった。
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