第259話 王都へ帰還。(第3皇子夫妻の会話。)
レイラとウィリアムが自分達の部屋に戻って来る。
「ただいま~。」
レイラを先頭に扉を開け室内に入ると女性が待っていた。
「おかえり、レイラ、ウィリアム。」
「ただいま、アルマお姉様。」
「アルマ、帰ったよ。」
と、レイラがアルマに抱き着く。
「楽しかったです、お姉様。」
「それは良かったわね。
でも心配したわ。戻ってきたら二人とも帰省しているし、ゴブリンの襲撃にあったみたいだし。
まぁゴブリンの方はあまり心配はしていなかったですけどね。」
アルマが苦笑する。
「ん?そうなのかい?
何が心配だったのかな?」
ウィリアムが聞く。
「お義父さまのわがままよ。」
「それは確かに一番の心配事だね。」
「それにうちの実家が襲撃を受けたなら取り乱したけど・・・レイラの実家でしょう?
アリスが居るからね。
王家に血を流させる訳ないもの。
それにしても死傷者0は凄いわね。
またアリスが?」
「はい、妹とその婚約者の活躍で。」
「あら?あのお転婆なアリスに婚約者?
あ、だから帰省したのね。」
「ええ、アルマお姉様。
かなり興味を引くでしょう?」
「それは是が非でも見に行きたいわね。
惜しかったわ・・・正室会議が無ければそっちに付いて行ってたわ。」
アルマが苦笑する。
「さてと、アルマお姉様と挨拶も出来たし。
私は先にお風・・湯あみをしてきます。
後は自室に居るので声をかけてください。」
とレイラがアルマから離れる。
離れる時にアルマにしか聞こえないくらいの小声で「ウィリアムの内ポケット」と言ってレイラが退出して行った。
・・
・
「アルマ、ただいま。」
「ウィリアム、おかえりなさい。」
二人は抱き合う。
「まったく・・・二人で遊びに行くなんて・・・ズルいですよ?」
「はは、急に決まってね。
そうだ、9時課の鐘に広間で会議をしてくるよ。」
「急ですね。
何があったのです?」
「さっきのアリスとその婚約者であるタケオさんの件だね。」
「アリスの婚約者は『タケオさん』と言うのね。
で?」
「アリスには騎士を、タケオさんには男爵位を与えることになるよ。
推薦は僕と第一近衛分隊長だね。」
「あら・・・それ程までの方なの?」
「あぁ、タケオさんとアリスを国内に留め置く為にね。」
「その言い方だと、王都への招集はないのね。
異例だわ。」
「あぁ、異例づくしだね。
一伯爵家から同時に2人だし、しかも王都への招集義務が緩和される。
さらにたぶんタケオさんには、特別な役職が来る運びになるよ。」
「そう・・・エルヴィス領に居てくれるのなら私達の願いをさらに形にしたいわね。」
「そうだね。テンプル領、エルヴィス領、ゴドウィン領に面した所に公領が欲しいね。
だが・・・勝手に決めて済まなかったね。
本来なら正室のアルマの実家から取り立てるのが筋なのは知っているのだけどね。
あのままだとタケオさんが王都に招集されそうだったから先手を打ったよ。」
「いいえ、ウィリアム。それで良いのよ。
人材を王都に集中させるわけにはいかないわ。
それを許せば地方が疲弊してしまいますから・・・
それに正直な話、テンプル家は、エルヴィス家よりも人材の面で劣っているのは事実だわ。
兄もそれはわかってはいるのでしょうが・・・なかなか人材が育たないみたいでね。」
「ふふ、人材かぁ。
まぁタケオさんの場合は、僕から見たら天才の分類だしね。」
「天才なの?・・・堅物かしら?」
「人柄も好印象だよ。
何よりもまずは民の笑顔の為、そして次期当主の為と動いているね。
それにアリスを溺愛しているし、アリスもタケオさんを溺愛しているね。
二人してお互いに甘いんだよ?どちらもお互いの意思を尊重し合っていてね。」
「まぁ!完璧ね!
それにしてもアリスが殿方を溺愛・・・想像できないわ。」
アルマは苦笑する。
「と、ウィリアムも一端、部屋着に着替えましょうか?」
「うん、そうだね。」
と、ウィリアムが上着を脱ぐと床に手紙が落ちる。
「あ・・・」
ウィリアムが取るよりもアルマがサッと取り上げ中を確認する。
「・・・・ウィリアム、これは?読めないですけど?」
「・・・ん?・・・」
ウィリアムは目線をアルマから外し、そっぽを向く。
「・・・」
アルマが何も言わずに手を出してくる。
「えーっと・・・」
ウィリアムがアルマの手をじーっと見つめる。
「読む方法があるのでしょう?出してください。」
「え・・・んー・・・」
「・・・」
「・・・はぃ・・・」
根負けしたウィリアムはおずおずと懐からメガネを取り出しアルマに渡す。
アルマはメガネをかけ手紙の内容を読み始めると動きを止めてしまう。
正確には食い入るように読み込む。
アルマは内心「レイラが言ったのはコレか!」と驚く。
内容は保健の3、4ページ目。
「ふふ、これは?」
「タ・・・タケオさんがくれました。」
「そう。じゃあ、試しますか?」
アルマはウィリアムの服を脱がしにかかる。
「え?・・・ちょ・・・ちょっと・・・僕はこの後、会議が・・」
「だから?」
アルマが睨む。
「・・・何でもありません・・・」
ウィリアムはアルマの気迫に怖気づく。
「ふふ。レイラ、タケオさん、試させてもらうわ!」
ウィリアムは猛獣を前に心の中で悲鳴を上げるのだった。
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