第258話 王都へ帰還。(宰相の出迎え。)
王城の玄関に1台の馬車が停まり、レイラが降りてきた。
「着きましたねぇ。
あぁ・・・休暇は終わりです。」
次いで、ウィリアムとアズパール王が降りてくる。
「やっと着いたね。」
「疲れたな。エルヴィス伯爵の所でリフレッシュしたのに馬車での移動で疲労が蓄積してしまったな。」
アズパール王の言葉にウィリアムもレイラも苦笑する。
と、玄関先には複数の人間が待っており、その内の一人が話しかけてくる。
「陛下、ウィリアム殿下、レイラ殿下、ご無事の帰還嬉しく思います。」
「オルコットか、出迎えご苦労。
・・・文官代表がなぜわざわざ出迎えを??
少々仰々しいと思うのだが・・・どうしたのだ?」
アズパール王は不思議そうに聞く。
「はぁ・・・陛下が襲われたのに・・・文官達が心配するのは当たり前です。
まぁ我々文官だけでなく武官や王家一同が今集まっておりますよ。」
オルコットはガックリとする。
「ん?・・・ん~・・・あれ?報告はもう来ておるのか?」
「エルヴィス伯爵より報告書は届いております。
戦闘経過も報告書が来た次の日にはこちらに来ました。」
「・・・いつの間にしていたのだ?
まったく気が付かなかった。」
「はぁ・・・陛下・・・
エルヴィス家の総監・・・文官達はフレデリック・ラムが率いていますからね。
このぐらい当たり前です。」
「フレデリックは家令兼執事だろう?
言っては何だが・・・所詮は地方伯爵の家令がここまで仕事が早い物なのか?
いや、優秀なのはわかったが・・・」
「あのフレデリックに限って仕事が遅いわけないでしょう?」
「・・・なんでお主がエルヴィス家の家令を知っておるのだ?」
「フレデリックは王都での文官時代に私と同期ですから。
近況のやり取りもしていますが?」
「・・・なぜ王都の文官が地方領に行くのだ?」
「たまたま・・・エルヴィス領に仕事で行った時に向こうで恋人が出来たのです。
で、向こうに行きました。」
「なんで・・・こっちに留めなかったのだ?」
「フレデリックとその恋人の話を今のエルヴィス伯爵・・・当時は次期当主でしたが・・・が聞いて、
『女性が見も知らない王都に引っ越すのは不憫だ・・・ならフレデリックがこっちに来ないか?』
と・・・総監部の課長ポストを用意して引き抜きました。」
「流石、お爺さまですね。」
「人情が厚いね。」
ウィリアムとレイラが頷く。
「アヤツは人を集める運があるのか?」
アズパール王は苦笑するしかなかった。
「さて。
エルヴィス伯爵家の奮闘で死傷者が0だったと報告にありましたが・・・本当でしょうか?」
オルコットが聞いてくる。
「あぁ、間違いない、我ら3人が観戦したからな。」
「そうですか・・・
いや、報告書を疑う者が多くてですね。
特に武官側や武官上がりから詳細を求める意見が出ています。」
「ふふ、確かにあの戦闘を実際に見ないとオーガ・ゴブリン400体を相手に500名で対応して死傷者が0では、納得出来ないでしょうね。」
ウィリアムが苦笑しながら頷く。
「報告書を見て、私は有り得るのではないかと思うのですが・・・」
「まぁ、その内タケオ達が来るから聞いてみると良いのではないか?
たぶん驚くだろうが。」
アズパール王は苦笑する。
「それは楽しみですね。」
オルコットが思案しながら呟く。
「さて・・・オルコット。」
アズパール王は真面目な顔で話しかける。
「は!」
「今日決めないといけない書類はどのくらいある?」
「そうですね・・・1、2件です。
他は明日で平気です。」
「そうか・・・文官、武官の幹部を招集できるか?」
「今が6時課の鐘ですから・・・9時課の鐘までに出来ます。」
「息子達も来ているのだな?」
「はい。
第1皇子ご一家、第2皇子ご一家、お揃いになっています。」
「家族ごと来たの?」
レイラが聞き返す。
「はい。
アルマ殿下が対応いたしました。」
「ん~・・・流石は僕のお嫁さんだね。
動きが適切だね。」
ウィリアムが満足そうに頷く。
「そうか・・・では、9時課の鐘に広間に武官・文官の幹部と息子達を招集してくれ。
今回の経緯や旅の中で考えたことを皆に聞いてほしい。」
「は!畏まりました。」
「ウィリアム、9時課の鐘に広間だからな。」
「わかっています、父上。」
「そうか。
レイラ、今回の旅の全権ご苦労だった。
強行軍だったが楽しかったぞ。」
「ええ。また行きたいですが、その前にアリスとタケオさんを出迎えないといけませんね。
それにタケオさんも次々手を打ってきますから、ふらっとどこかに行っちゃう前にタケオさんの件を早急に決めないといけませんね。」
「そうだね、タケオさんは気が向いた方に行っちゃいそうだからね。」
「まったくだ・・・我々に合わせて、もう少しゆっくりと行動してほしいものだな。」
旅の締めくくりはアズパール王、ウィリアム、レイラ3人が苦笑しながら武雄の悪口(?)で終わるのだった。
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