第255話 17日目 起床と冒険者組合での説明1(暗殺依頼は受けるの?)
「・・・重い。」
武雄はかなりの圧迫感で目覚める。
この感じは・・・やっぱりアリスだった。
今日も仰向けに寝ている武雄の上にうつ伏せで乗っかっていた。
アリスは武雄の上でうつ伏せ状態でスヤスヤ寝ている。
今日も武雄はアリスの太ももを撫でながらボーっとする。
「主、おはようございます。」
と、ミアが書斎から入って来る。
「ミア、おはよう。」
「・・・主の上にアリス様が・・・いつもこうなのですか?」
「いえ?今日はこうですね。」
「今日は?」
ミアは「どういうこと?」と思案する。
アリスが身じろぎを始め。
「・・・おはよ・・・ござい・・ます。」
「アリスお嬢様、おはようございます。」
と武雄もアリスの太ももを撫でながら挨拶をする。
「アリス様、おはようございます。」
「ミアちゃん、おはよう。
・・・ミアちゃんが来たという事は朝なのですね・・・・」
アリスは訳の分からない解釈をしながらズルズルと武雄から降りる。
「ん・・・ん~・・・んっ!」
アリスは掛け声をかけながら意識をはっきりとさせ始める。
「さて、タケオ様、起きましょう。」
と、アリスの言葉と共に二人ともベッドを出て、着替えを始める。
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朝食を終え、客間で皆でティータイム。
「さて、今日は皆、何をするのじゃ?」
「僕は勉強ですね。」
「私は冒険者組合に行って登録と雑貨屋に行って旅の準備です。
昼過ぎは小銃改2の試射をしてきます。
お昼は外で取ってきます。」
「私も、タケオ様に同行してきます。」
「うむ、気を付けるのじゃぞ?」
「「はい。」」
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武雄とアリスとミアは表通りにある冒険者組合の事務所(建物)の前に着いた。
「・・・アリスお嬢様。」
「はい。」
「外観がこれといった特徴のない地味な感じなのですけど。
今まで気が付きませんでした。」
「タケオ様がどんな想像をしていたのかが気になりますが・・・
普通ですよ?」
「そうですね・・・もっと煌びやかな建物かと思っていました。」
「なぜそう思ったのかも気になりますが・・・まぁ中に入りましょうか。」
3人は中に入るのだった。
建物の中も地味・・・何やら紙が貼られている掲示板が横にあって、奥には昔の銀行の様な雰囲気のカウンターがあり、対面には受付が座っている。
カウンターと受付の間には木の格子状の柵があり、書類や金貨等のやり取りが出来る様になっている。
と、組合員と思われる女性が話しかけてくる。
「アリスお嬢様、キタミザト様、いらっしゃいませ。
本日は、どの様なご用件で?」
「今日は旅の為に冒険者登録をしにきました。」
「旅ですか?」
「はい。」
「わかりました。
では、一番右の窓口で手続きをさせていただきます。」
「はい。」
3人は言われた通り一番右の窓口に進むとカウンターの女性が話しかけてくる。
「いらっしゃいませ。
冒険者登録をされるのですね?
冒険者の仕組みについてはどこまで知っておりますか?」
「はじめてになるので、概要を聞いて構いませんか?」
武雄はそう答える。
「わかりました。
ではまず大本から行きますが、冒険者組合は基本的に依頼主と冒険者との仲介業をしています。
また、冒険者組合は国からの束縛をあまりされていません。」
「あまり?」
「冒険者組合は国には所属していません。
民間企業なのですが、事務所があるのは各街や王都である為、依頼もその事務所がある場所の貴族や商人がしてきます。
お恥ずかしい話ですが、例えば討伐依頼だったり商隊の護衛だったりの依頼頻度が高い依頼者には、どうしてもある程度、対応が甘くなってしまうのが現状です。」
「なるほど・・・確かに、新参者よりも顔見知りの方がやりやすいですものね。」
武雄は頷く。
「国や領地の文官からも依頼を頻繁に受けますが、1つだけ依頼を受けない物があります。
それは、戦争への参加要請という物です。」
「なぜです?」
「簡単に言えば、2か国が戦争状態になったとして、冒険者同士で戦う事を避けるためです。
我々は武力集団として成り立っていますが、仲間同士で戦う事は無意味です。
ですので、戦争への参加は拒否させていただいています。」
「・・・でも、私の様に貴族側に居る人間も登録しているとして、その者は戦争に参加できないのですか?」
「いえ、あくまで冒険者組合が仕事として依頼を受けないという事です。
冒険者の意思で参加することを止める物ではありません。」
「なるほど・・・その一つ以外はどんな依頼も受けるのですか?」
「はい。」
「・・・暗殺依頼も?」
「タ・・・タケオ様!?」
アリスが慌てる。
「ん?なんです?
当然の疑問だと思うのですが・・・だって戦争以外の依頼は受けるなら一番の暗部・・・暗殺はどうなのか聞きたいじゃないですか?」
「う・・・」
「暗殺の依頼も受けます。
ですが、暗殺や殺人の依頼は特殊なので依頼者の氏名、住所を指名されている本人に連絡をする事になっています。
また報酬も相当高額になると考えています。
実際に過去に出された事はありません。」
「これは公平性の為ですかね?」
アリスは暗殺依頼の説明を聞き複雑な顔をする。
「違いますね。これは冒険者組合が殺人の幇助をしていないとする立場故ですね。」
「はい。暗殺や殺人は犯罪行為です。
冒険者組合から通知することによって、お互いに知っている状態にすることを条件に冒険者組合は暗殺や殺人の共犯という犯罪に問われないとなっています。
簡単に言えば、冒険者組合は関知しないという立場を明確にします。
あとは話し合うなり、返り討ちにするなりお好きにどうぞ・・・という事です。」
カウンターの女性が難しい顔をして言う。
「そうですか・・・ちなみにタケオ様ならどうですか?」
「する方ですか?される方ですか?」
「どちらも聞きたいです。」
「私が暗殺、殺人を依頼することはありません。」
「そうですか。」
アリスとカウンターの女性がホッとする。
「私が直接するからですけど。」
「「は!?」」
二人して驚く。
「なんでいちいち他の人の協力を仰ぐのですか?
それに私が殺人をしに行くのはたぶん私的な恨みではないですし・・・
エルヴィス家に対して脅迫するとかそのぐらいにならないと私はしませんよ?
公権力に対しての脅迫はテロリズム・・・宣戦布告です。
そうなれば、私や兵士達が黙っていません。
冒険者組合を使うまでもなく最大戦力で即座に潰すのが正道です。
私個人に対してされた場合は話合いに行ってきて、物別れに終わるならその場で潰します。」
「「・・・」」
アリスとカウンターの女性は黙る。
「まぁ、する方もされる方も私個人で対応しますから、冒険者組合は暗殺、殺人の依頼があったら連絡だけください。
あとはこっちで対応します。」
「承りました。」
カウンターの女性は頭を下げるのだった。
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