第24話 仕立て屋にて。スーツを作ろう。
武雄とアリスは仕立て屋に着いた。
店内に入ると。
「アリスお嬢様、いらっしゃいませ。」
と店員が言ってくる。
「こんにちは。今日はこちらの方の服を仕立ててほしいのだけど。」
「わかりました。」
「タケオ・キタミザトと言います。」
と武雄は礼をしながら言う。
「どの様な服を作りますか?」
「今着ている服をそのまま複製していただけますか?」
「・・・見た感じ執事服に似ておりますね。」
「はい。これはスーツと呼んでいます。」
と武雄は上着を脱ぎ、渡す。
「・・・ん?・・・なるほど・・・ほぉ・・・」
と店員は上着を確認しながら呟く。
「お客様。これは想像力を掻き立てられますね。」
やはり文明が違うと服への考え方も違うのかと武雄は思った。
「全体は細身に見せる工夫をしていても、服の内側に収納を作る。
それに、内側は外側の生地とは別に肌触りの良い物を使う。
見た目と機能性を両立させています。」
「生地は似た物を使ってください。色は黒でお願いします。
何日くらいでできますか?」
「そうですね・・・3日ですね。」
「わかりました。
あと、ズボンと今着ているシャツも同じ物を作ってください。」
「わかりました。」
「費用はどのくらいになりますか?」
「そうですね・・・金2ま」
「3着分作ります。」
武雄はまた店員を真顔で見る。
「・・・では、金5枚と銀2枚で。」
この店員は少し考えただけで返事をする。
「それで構いません。
ですが、今は持ち合わせがありませんので、手付金として金2枚でお願いします。
残りは受け取り時に払います。」
「わかりました。アリスお嬢様のご紹介の方ですので、こちらもそれで構いません。
奥で採寸の準備をしますのでしばらくお待ち下さい。」
と店員は下がっていく。
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「こちらでは、粘らなかったのですね。」
アリスは疑問を口にした。
「いえ、店員さんがすぐに回答しましたので、これ以上は引かないかなぁと思っただけです。
ちゃんと1割引きにしてくれましたしね。」
「そういう物なのですか?」
とアリスは不思議がる。
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「では、準備ができましたので、おいでください。」
武雄とアリスは席を立つ。
武雄は「おや?」と思うが口にせず、店の奥に向かった。
店の奥にて、数人が待ち構えていた。
武雄はYシャツを脱ぎ始める。
「え!?タケオ様!?」
とアリスは顔を赤らめながら口を押さえる。
「採寸するのだから脱がなきゃできないでしょう?」
と武雄は答えるが。
「いやいや。採寸なら着たままするでしょう?」
とアリスも答える。
「いや。私の依頼は複製です。
なので店員さんは準備の時間を少し取ったのでしょう?」
と言いながらYシャツを脱いで店員に渡すと、
「そうですね。」
と店員も受け取りつつ答える。
「・・・アリスお嬢様・・・ズボンを脱ぎたいのですが・・・」
武雄はズボンに手をかけると着替えをガン見しているアリスに言う。
「あ!ごめんなさい!」
とアリスは横を向く。
・・・顔は横でも目線がこっちを向いていませんか?
・・・35才男の下着姿なんか見ても面白くはないだろうに。
とアリスの事は無視することにした。
武雄はズボンを脱ぎ、店員に渡す。
「すぐに採寸にかかります。」
と控えていた人達が採寸を始める。
店員はロングコートを持ってきて武雄に渡す。
「ちなみに、兵士用のコートはあるのですか?」
「ございますね。」
「見せていただけますか?」
「構いませんよ。」
と店員は一旦奥に行き、すぐに1着持って戻ってくる。
「兵士用のコートはこちらになります。」
と見せられたのは、なんとポンチョだった。
武雄は「これは無いわ」と、思わず頭を抱えたくなった。
「・・・コートをデザインするといくらかかりますか?」
「そうですね・・・金4~5枚でしょうか・・・」
「・・・そうですか。高いのですね。」
と武雄はがっかりするが、作りたいコートは頭にあるのだから作ってみようかと頭を切り替える。
「・・・では、デザインをさせていただけますか?」
「わかりました。お客様の理想のコートを作りましょう」
店員は少し驚きつつも乗り気みたいだ。
「アリスお嬢様、申し訳ありませんが少し時間が掛かると思います。
今のうちにアリスお嬢様が行きたいカフェを見てきていただけますか?
ついでにメガネを受け取ってもらえるとありがたいのですが。」
「わかりました。では少し席を外しますね。」
と席を立ち、出て行った。
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武雄はアリスを見送りながら店員に言った。
「始めましょうか。
しかし、もう少し嫌な顔をされるかと思いましたが、意外とすんなり作ることを了承してもらった感じがありましたが?」
「ええ。あの『スーツ』は初めて見ましたから、お客様が作るコートも見たことがない新しいものだろうと思ったのですよ。」
「それは・・・そうであって欲しいですね。
その好奇心が失望に変わらない為にも。」
武雄と店員は笑いあうのだった。
「私が作って欲しいコートは『トレンチコート』と言います。」
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