第248話 ジェシー達出立。都市間の移動時間を短くする方法とは。
皆がエルヴィス邸の玄関に集まっていた。
「さてと、帰りましょうか。」
「だな。」
ゴドウィン伯爵夫妻が馬車に乗り込む。
「次はアリスとタケオさんの結婚式に帰ってきますから。」
「はい。」
アリスは照れながら答える。
「そうですか・・・次はさらに美味しいスイーツを用意しておきますね。」
「あら?主賓が料理を作るの??」
「折角来てくれるのですから・・・新作食べたいでしょう?」
「ええ、心待ちにしています。」
ジェシーが頷く。
「昼食は馬車の中にありますから適当に取ってください。」
武雄がそう伝える。
「そうなの?ありがとう。」
「では、出立します。」
御者がそう伝え馬車が走り始める。
「お爺さま、アリス、スミス、タケオさん、フレデリック、またね。」
ジェシーが手を振りながら言う。
馬車は颯爽と城門に向かっていった。
・・
・
「はぁ・・・こうも立て続けに孫娘が戻って来ると疲れるの。」
エルヴィス爺さんが疲れた表情で愚痴を言う。
「はは、全く帰ってこないよりは良いのでは?」
「いやいや、タケオ、二人に会うのは2年ぶりなのじゃよ?」
「そうなのですか?
じゃあ、アリスお嬢様の受勲以来?」
「うむ。」
「そうですか・・・距離が遠いとなかなか行き来するのも大変ですね。」
「んー・・・」
スミスは悩む。
「どうしました?スミス坊ちゃん。」
「いえ・・・レイラお姉様は難しいでしょうが・・・ジェシーお姉様くらいの距離ならもう少し早く移動できる様にした方が良いかなぁと思ったのですけど?」
「ふむ・・・確かに3伯爵領の連携の意味でももう少し時間がかからないようにするべきかも知れないの。」
「タケオ様、良い案はありますか?」
スミスが聞いてくる。
「あるにはありますが・・・フレデリックさんが怖いので言えませんね。」
「私ですか?」
「私の案は凄くお金がかかります。」
「ダメです。」
「ほら。」
武雄は苦笑する。
「ふふ、その辺は客間で聞いてみようかの。」
エルヴィス爺さん、アリス、スミス、武雄、フレデリックが客間に移動するのだった。
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昼食を客間で取りながら、皆でマッタリ中。
フレデリックがお茶を入れ、皆の前に置き、皆から少し後ろに下がる。
ミアにはオレンジの搾りたてジュースが出されていた。
「ふぅ、マッタリじゃの。」
エルヴィス爺さんの言葉に皆が頷く。
「タケオとフレデリックは午後は会議かの?」
「9時課の鐘辺りで私達は会議に参加する予定です。タケオ様構いませんか?」
「はい、問題ないです。」
「アリスとスミスはマッタリじゃの。」
「僕は勉強しますよ?」
スミスが苦笑しながら答える。
「うむ、励むのじゃぞ。
と、タケオ、さっき言っていたゴドウィン伯爵領との時間を短縮する方法はなんじゃ?」
「ん?簡単ですよ?
真っ直ぐな道を作ればいいのです。」
「真っ直ぐ?」
「ええ、真っ直ぐ。」
「山や川はどうするのじゃ?」
「山は切り崩すなり、穴を掘るなりして川には橋をかければ良いでしょう?」
「無理じゃ。莫大な予算が必要じゃ。」
「ええ、でしょうね。」
「・・・タケオ、お主の所はまさか・・・」
「していましたよ?前に言いましたよね?
ここから王都まで鐘一つの間で行けると。」
「うむ、言ったの。」
スミスを除く皆が頷く。
「これは純粋に移動の箱の性能を上げただけではなく、道も整えないと不可能です。
これは、都市同士をほぼ直線で線を引くことから計画が始まります。
で、どうしても直線で出来ない所は迂回させるなりして決めていきます。」
「なるほどの・・・ちなみに道幅はどのくらいが良いと思うかの?」
「馬車4台分が必要な幅でしょう。」
「広いの。その際の影響は何があるのかの?」
「都市間の移動時間が短いという事は、軍事的、経済的に好影響が出ます。
ゴドウィン伯爵領までは馬でどのくらいで?」
「馬で4日を見込んでおるの。」
「最短の直線距離で行けば、2日もしくは3日での移動が可能になるはずです。
そうすると今まで届けられなかった食材が流通出来るようになり、産業の発展が望めます。
また、軍事的には移動距離が短くなる為、消費する食材が減る事による戦のコスト削減が見込めます。」
「それに兵士の疲労蓄積が軽くて済む事も挙げられますね。」
フレデリックが武雄の説明に補足する。
「なるほどの、メリットは大きそうじゃの。
ちなみにデメリットは何じゃ?」
「費用の膨大さです。」
「・・・そこか・・・」
エルヴィス爺さんがガックリする。
「それに我が国は山に穴を開けることは前例が数件しかないはずです。
その技術的な方法も検討が必要・・・ん?タケオ様は知っていますか?」
「ええ、概要は知っていますよ。」
「技術面では割と楽そうですね。
どうやるのです?」
「そうですね・・・シールド工法が一般的に普及していましたね。」
「シールド工法?」
「ええ、そうですね・・・山に開ける直径が・・・12mとしましょうか。」
「はい。」
「掘削を始める段階から12mの円形の掘削機を作って掘っていきます。
徐々に大きくするのではなく、一気に12mの穴を掘っていく方法ですね。」
「え?それは凄いの。掘った時の壁はどうするのじゃ?崩れないのかの?」
「1m掘っては全周にレンガを穴が崩れない様に据え付けます。
隙間はコンクリ・・・あー・・・粘度が高く、耐水性があり、硬化すれば20年耐久力がある泥で埋めます。
ですので、1m掘っては外壁を固め、1m掘っては外壁を固め・・・としていく工法ですね。」
「なるほどの。掘削した土の処理方法とレンガの品質を維持しながら大量に集める事が必要じゃの。
それだけでも資金が凄い事になりそうじゃの。」
「私の所は国家予算の10年から30年分は見ていましたね。」
「タケオの所ですらそれならうちは出来んの。
なら・・・もう少しコスト低めだと何が出来るかの?」
「んー・・・道幅の拡張と道路の質の向上でしょうか・・・」
「道幅はわかるが・・・道路の質とはなんじゃ?」
「馬車道を作ってみるのはどうでしょうか。
同じ道でも馬の通る所は土で、馬車の車輪が通る所はレンガで舗装します。
そうすればわだちが出来辛く、馬の負担が減ると思いますね。」
「なるほどの・・・そういうやり方もあるの。
とりあえず、タケオの3案件が終わったら考えてみようかの。」
「そうですね。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが頷くのだった。
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