第23話 もう一度、魔法適性を調べよう。
「では。もう一度、系統と魔力量を調べましょうか。」
と店員は真面目に言った。
・・・さっきまで真面目でなかったわけでないのだが、今はどこか医者の様な雰囲気を出している。
まずはマウスみたいな突起物に手を置く。
店員は桶を見て、頷く。
「では。」
と店員に促され、タケオは丸いフラスコに手をかざす。
ゆっくりと水位が上がり始める。
・・・一緒ですね。
「一緒ですね。」
店員も言葉にする。
「先ほどは、ここで止めましたが。
このくらいの水位の上昇だと、だいたいキタミザト様の魔力量は15~25くらいと推測できます。」
「はぁ。それは多いので?少ないので?」
武雄は先ほどの2人の反応がアレだったので少なかったんだなぁとは思ったが敢えて聞いてみる。
「魔法の適性がない人からすれば多いと言えます。
しかし適性がある人ならば、魔法を習い始める14、5歳くらいの初心者でも魔力量は50前後はあります。
訓練を通して増えていき、魔法師になるときは、大体200くらいになるでしょうか。」
・・・うん。そりゃ同情するよね。と武雄は思う。
「では、手をかざしながら『ルクス』と言ってください。」
武雄は言われた通り、手をかざす。
「ルクス。」
棒の先端が先ほどと同じ様に光りだす。
「続けて2回お願いします。」
「ルクス。ルクス。」
光が消えていないのでさらに光が明るさを増していく。
途中、少し明るさが減ってから時間と共に消えた。
一連の行動の間、店員はフラスコを見ていた。
「ちなみに、あちらの的に向かって『フレア』と言いながら振ってください。」
「ちょっ・・・」
アリスは何か言いそうになるが、店員が手を向けて止める。
「フレア。」
・・・
・・
・
何も起きない。
「あれ?」
武雄は不思議に思った。
アリスは安堵すると「はて?」と頭の上に?マークを出す。
店員は感心するような驚くような顔をしてから一人頷く。
「大まかですが、キタミザト様の魔法についてわかりました。」
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用具を片付けた店員が椅子に座る。
「では。改めてわかったことを説明します。」
「はい。」
武雄は医者の宣告を聞く様な心境になっていた。
「順序立てていきましょうか。
キタミザト様には魔法の適性はあります。
得意な系統はないので、どの魔法も満遍なく使うことができます。
魔力量は最大で25ですね。」
「はい。」
武雄は答えながら言われたことを頭の中で確認する。
「しかし、魔力量に合わない魔法の連続使用をしましたね?」
アリスは疑問を口にする。
「はい、その通りなのです。
そこで再び魔力量を調べました。『ルクス』を1回と2回連続、そして『フレア』です。
この結果からわかった事は、キタミザト様は魔力が減らないのです。
最初に1回、その後に4回。次いで1回と2回で計8回。この短時間で『ルクス』を使いました。
先ほど習い始める人が魔力量が50程度と言いましたが、彼らは、この魔法5回で疲れ切ってしまいます。
また、『フレア』が使えないという事が、キタミザト様は魔力量の限度以上の魔法は使えないという事の証明になりました。
ちなみに先ほどの例では、彼らは1回で疲れてしまいます。」
「えーっと。どういう事でしょう?」
アリスは難しい顔をして店員に聞く。
「つまり、キタミザト様は初期の魔法は何でも使えますし、魔力が減らずに何度でも使えます。ですが、少しでも自身の魔力量を超える物は全く扱えません。」
「はぁ。」
武雄はそんな返事をすることしかできない。
良い事なのかどうなのかわからないのだ。
「・・・そうですか。」
アリスは少し残念そうだ。
「ええ。キタミザト様は魔法が使えますが、魔法師としては・・・戦闘には使えません。」
「そうなのですか?」
武雄は不思議に思った。
「確かに低位の魔法はお使いになれます。
しかし、それは発動できるという段階の話です。
魔法は与える魔力に乗じて威力が上がります。
そうですね・・・例として上げれば、
『ファイア』という火を具現化し、飛ばすことが出来る魔法があります。
発動だけの魔力量は10として、威力は2としましょう。
キタミザト様の最大で2倍の魔力量をかけれるとすると威力は2乗の4になります。
しかし、魔法師は最大で20倍の魔力量をかけれるとすると威力は20乗の1048576 になります。」
「・・・微々たる物ですね。」
武雄は驚愕する。
「ええ。なのでキタミザト様は軍隊に所属する魔法師にはなれません。」
「なるほど、わかりました。」
武雄は礼を言う。
「いえ・・・では、メガネを作りましょうか。」
「はい。」
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店員はアリスが選んだメガネのフレームを武雄の顔に合わす様に鼻の位置等を調整する。
「申し訳ありません。出来上がるまでに鐘1つ分かかります。」
「わかりました。鐘1つ経ったら受け取りに来ます。」
「わかりました。では、代金の方が金1ま」
「2つ作りますよ。」
武雄はそう言い、店員を真顔で見つめる。
「え・・・では、金2ま・い・・に・・・」
・・・沈黙
じぃーーーーー・・・・武雄と店員は見つめ合う。
・・・
・・
・
先に根負けしたのは店員だった。
「・・・では、2つで金1枚と銀6枚でいかがでしょうか。」
武雄は悪くないと思うが、今後もここを使うことを考えると値切りすぎたかな?と思う。
「では、金1枚と銀8枚でメガネに傷が付きづらい様に加工することと、初心者用の魔法の本を付けてください。」
店員は顔を明るくする。武雄の要望は2つ合わせても銀1枚に届かないくらいの値段だった。
「わかりました。」
武雄は店員に支払いをする。
「1つは鐘1つの間に仕上げます。もう1つは後日でよろしいでしょうか。」
「はい。では、あとで参ります。」
と武雄とアリスは席を立ち、店を出ていく。
「ありがとうございました。」
と店員は声をかけていた。
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武雄とアリスは仕立て屋に向かっていた。
「アリスお嬢様。少し浮きましたね。」
「タケオ様。なぜ銀6枚の方で『うん』と言わなかったのですか?
わざわざこちらから8枚に増やしましたし。」
「え?そこまで値切るつもりはなかったので。
銀2枚が私の考えていた値切り価格だったのです。」
「はぁ・・・でも、安くできた方が良かったのでは?」
「ん~・・・場合にも寄りますが。
今回の場合、あそこの魔法具商店はまた使うだろうと思ったので、
想定の値切り金額をこちらから提示しました。
まぁそれで恩に思ってくれたら、次回から少し安く売ってくれたり、希少品を教えてくれるかもしれませんからね。
ちなみに浮いた銀2枚分はお嬢様とのお茶代にしようと思っているのですが?」
「え!?・・・わかりました!」
アリスは少し顔を赤らめながら嬉しそうに答えるのだった。
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