第243話 15日目 夕食後の報告会。(エルヴィス領の組織体系と領内発展案のまとめ。)
フレデリックが皆の前に組織図が書かれた大き目の紙を広げる。
武雄やアリス、スミス、ゴドウィン伯爵夫妻もそれを見つめる。
≪エルヴィス領 組織体系(概要)≫
エルヴィス伯爵家
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総監部(家令兼執事、各局の監視、指導、裁可 等)
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|― 総務局(人事、法制(王都との連絡)、消防組織 等)
|― 財政局(領地管理、予算・決算、税 等)
|― 経済局(商業、工業、農業のまとめ、許認可 等)
|― 整備局(都市整備、宅地、道路、河川の整備、建物建設の許可 等)
|― 環境局(ゴミ処理、水質・騒音などの環境保全対策 等)
|― 軍務局(騎士団、兵士、作戦の立案、領内警備 等)
|― 各町局(各町・村の維持、管理 等)
文官数512名、武官数1184名。
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「その紙の通りの組織体系になっておる。」
「・・・」
「タケオ、感想はないのかの?」
「組織だな・・・ぐらいで。」
「親父殿、この図を見て意見があると思う方が可笑しいのでは?」
ゴドウィン伯爵が苦笑する。
「ちなみに局の上に部があるのは、なぜです?
権限的に局>部>課になっていくのでは?」
「うちの規模なら全部が部なのじゃが・・・王都に合わせて局としておるのじゃ。
あまり意味を含んではいないの。
それに王都や規模の大きな領地になればさらに局数が増えるの。
フレッドの所は、もう少し多いじゃろ?」
「大まかには一緒だが、商業、工業と農業を分けているな。
都市整備と宅地、建物許可と河川、道路整備も分けてるか。
あとは総数が3倍弱いるな。」
「はぁ。この人数でも大変なのに3倍も維持するなんて想像出来んな。
わしはつくづくこっちの領地で良かったと思うぞ。」
エルヴィス爺さんがため息をつく。
「「ふふ。」」
武雄とフレデリックがエルヴィス爺さんの言葉に同時に笑う。
「ん?なんじゃ?二人そろって。」
「いえ・・・別に?」
「ええ、特には?」
武雄とフレデリックは目を細めながら笑っている。
「・・・二人して怖いですよ?」
アリスがジト目で見ている。
「タケオさん、フレデリック・・・二人とも考えた事を言いなさい。」
ジェシーが言ってくる。
「タケオ様からどうぞ。」
「あ、先を取られましたね。
じゃあ、たぶん一緒の事を想っていますから・・・
エルヴィスさん、今はこの数字なんですけどね。」
「う・・・うむ。」
「15年後を想った時に・・・私の企画が順調にいったら・・・
1.5倍の人数が必要になると思っています。」
「え?」
スミスが驚く。
「私もそう思います。
さらにエルヴィス家の収入は1.4倍~1.8倍になり、人口も8~9万人になると想定しています。」
「は?」
スミスが驚く。
「・・・随分、急増するの。」
「ええ。スミス坊ちゃんの時代は大忙しにする気で動いていますから。」
「ですね。我々文官の局長達もその数字を目標に動いています。」
エルヴィス爺さんの言葉に二人は頷きながら説明する。
「あの・・・僕の時代をどんな風にするつもりなのでしょうか?」
スミスが将来を想像できなくて聞いてくる。
「やることいっぱい、揉め事いっぱい?」
武雄がクスクス笑いながら言う。
「絶対にイヤです。」
「少なくとも揉め事の方は文官、武官で何とか対処出来る様にしないといけませんかね?」
「そうですね。
1.5倍の規模になった場合の対応方法も考えてはいますが・・・
実際になってみないとわからないですね。
今回のタケオ様の3案件は領内くまなく発展が見込めますからね。」
「んー・・・他にもありそうですが・・・今はまだ思いつかないんですよね。」
「とりあえず、この3件が終わるまでは新しい事は受け付けませんので。」
フレデリックが武雄に自制を求める。
武雄は「はーい」と笑いながら言う。
「あら?フレデリックがそんなことを言うなんてどうしたの?
いつもなら余裕で受けるのに。」
ジェシーが苦笑しながら聞いてくる。
「いえ、現状では先の3件だけで手一杯ですので。
タケオ様には、次の策はもうしばらく温めて欲しいですね。」
「うむ、フレデリック・・・タケオの3案は領内をくまなく発展する案なのかの?」
「はい、タケオ様の3案は上手いのです。」
「結果的にそうなっただけなんですけど?」
武雄が苦笑する。
「そうですか?
・・・では、改めてまとめましょうか・・・
まずトレンチコートに付随した案件ですが、この街の発展を見込んでいます。
これは用地の確保だけでなく、雇用創出、物流網の活性化、人・物・金の流出入を考えています。
次に各町の産業に対する融資案件は、4町の発展を見込んでいます。
産業の活性化と新たな商品開発を考えています。
最後に養鶏場と卵の品評会、各村の特産品祭りの案件ですが・・・これは村の発展を見込んでいます。
村に産業を起こし、尚且つそこに人が一時滞在する事を考えています。
・・
・
つまり街・町・村全てで新しく挑戦する事を提案したのです。
そしてそのどれもが上手くいくと人・物・金が流入する仕組みです。
これは我々文官が・・・町・街関係なく全ての職員が一丸になって対応しないと上手くいきません。」
「暇な部局が出ないな・・・上手いな・・・」
「改めてまとめられると事前からすべてが考えられていた節があるわね。」
ゴドウィン伯爵夫妻が頷く。
「いや・・・ホントにたまたま全体に満遍なく課題を与えられただけなんですけど・・・
それにどれも突発的に考え付いたので・・・狙ってはいないのですよ?」
武雄が難しい顔をしながら言う。
「やったわね、スミス。あなたの時代は大変な事が起きそうよ?」
アリスが楽しそうにスミスに言う。
「・・・なんだか周りが凄い勢いで動いている感じがします。
一体・・・どうなるのでしょう?」
スミスがため息をつくのだった。
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