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第239話 ライウィスキーの試飲会。

客間のドアを料理長がノックする。

中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。

「皆さま、お待たせしました。」

料理長や各料理担当、メイド、執事達が酒と果物、ツマミ、桶を持って入って来る。

「待っておったぞ。

 ・・・人数が多いの?」

「いや、皆も飲みたいと言いましてね。

 まぁ私達は立ちながら飲みますので気になさらないでください。」

「久しぶりの顔も居るわね。」

ジェシーは顔見知りのメイドに手を振りながら言う。

「何が始まるのだ?」

ゴドウィン伯爵が聞いてくる。

「うむ。タケオ、説明を。」

「はい。

 と、その前に料理長、一口飲ませてください。」

「はいよ。」

料理長は空のガラスのグラスにウィスキーを少し入れて武雄に渡す。

武雄は席を立ち、軽く口に含む。

と、ニヤリと笑う。

「タケオ様・・・その笑いは何です?

 怖いのですけど。」

アリスが聞いてくる。

「いえいえ。まさか、ここまで同じ物が作れるのか・・・と嬉しくなりますね。」

「お、という事は?」

エルヴィス爺さんが目を輝かせながら聞いてくる。

「はい。味もアルコール度も問題ありませんね。」

武雄は朗らかに言う。

「さて、説明でしたね。」

武雄は皆の前に移動する。

「そもそもの話の始まりとしてエルヴィス領北部で作られているライ麦をどうやって加工品にするか?

 との一環からライ麦から作った酒を探して貰いました。

 フレデリックさん、このお酒の熟成は何年目ですか?」

「報告では3年ですね。」

「なるほど。丁度、最初の熟成が終わったのですね。

 このお酒は早く言えばブランデーの亜種です。」

「へぇ、そうなの?」

ジェシーが聞いてくる。

「はい。

 ブランデーはブドウを・・・ワインを蒸留した物です。

 対してこちらは、ライ麦を発酵させて蒸留した物になります。

 作り方はほぼ一緒です。

 原材料が違うだけという認識で構いません。

 ちなみに私の所ではこの麦の蒸留酒は『ウィスキー』という総称で呼んでいました。」

「なるほどな。」

ゴドウィン伯爵が頷く。

「えーっと・・・とりあえず飲んでみましょうか。

 では、メイドさん方。私の言った通りに作ってみてください。」

「はい。」

「数種類作って貰います。

 1つ目、グラスに人差し指の厚さ分入れた物を作ってください。

 あと、別のグラスに水を入れ、一緒にお出ししてください。」

「畏まりました。」

メイドたちはササっと作り、皆の前に置く。

「これは『ストレート』という飲み方です。

 ブランデーもこの飲み方でしたよね?」

「うむ、グラスはワイングラスを使うのが一般的だがの。」

「行きわたりましたか?

 では、お飲みください。」

武雄の言葉に一斉に口に含む。

・・

「ん?香りがブランデーと比べるとほとんどしないの。後味も感じさせんな。」

「親父殿、そうですね。

 どちらかと言えばキツイだけの水を飲んでいる感じです。」

「これは美味しいわね~。

 香りもキツ過ぎないでふんわりと漂う感じで。

 ブランデーよりも個人的には飲みやすいわ。」

「・・・やっぱり割らないと飲めません・・・」

「うぇ。」

「ほぉ。」

「なるほどな。」

エルヴィス爺さん、ゴドウィン伯爵、ジェシー、アリス、スミス、フレデリック、料理長それぞれが感想を言う。

他の者も頷きながら飲んでいる。


「さて、2つ目。グラスに氷を入れて先ほどの様に人差し指の厚さ分入れた物を作ってください。」

武雄はそう言い、空いている桶に『ブリザド』で氷をどんどん作っていく。

料理人達がそれを砕き、大き目の氷をグラスに入れ始める。

メイドたちは、またもササっと作り、皆の前に置く。

「これは『ロック』もしくは『オン・ザ・ロック』という飲み方です。

 氷を岩と表現していますね。

 これはウィスキーを冷やして飲む事を主としています。

 ウィスキーを冷たくするとどう変わるか・・・また、時間が経つと溶け始めるので、徐々に薄まっていく味の違いも楽しんでください。」

「うむ、いただくかの。」

エルヴィス爺さんの言葉で皆が飲み始める。

・・

「ほぉ、これはまた違った感じじゃの。

 冷やすと感じが変わる物じゃの。」

「なるほどな。俺はさっきのよりもこっちが良いな。

 飲みやすくて、氷の音が心地よい。」

「美味しいわぁ。」

「・・・やっぱりキツイです・・・」

「うぇ。」

「ほぉ。」

「なるほどな。」

皆が感想を言い。他の者も頷いている。


「3つ目、グラスに氷を入れてください。

 そこにウィスキー1に対し水を2~3の割合で入れた物を作ってください。」

武雄の指示で料理人、メイドたちはササっと作り、皆の前に置く。

「これは『水割り』という飲み方です。

 食事の時や酒場での宴会の時など他の濃い食べ物と一緒に飲む時にしますね。

 先ほどの『ストレート』も『ロック』も個人的にはゆっくりと時間を楽しみながら飲むイメージです。」

「なるほどの。では、いただくかの。」

エルヴィス爺さんの言葉で皆が飲み始める。

・・

「飲みやすいの。これなら何杯でも飲めそうじゃ。」

「氷を入れて冷やしているから、さらに飲みやすさがあるな。

 兵士達の仕事明けに人気がでそうだ。」

「美味しっ。」

「あ、これは飲めますね。

 へぇ、飲みやすいですね。」

「・・・んー・・・」

「ほぉ。」

「なるほどな。」

皆が感想を言い。他の者も頷いている。


「4つ目、グラスに氷を入れてください。

 そこにウィスキー1に対し果物の果汁を3~4の割合で入れた物を作ってください。」

武雄の指示で料理人は「うりゃぁ」と搾り始める。

メイドたちは出来上がったジュースでササっと作り、皆の前に置く。

「これは『ジュース割り』という飲み方です。

 どちらかと言えばお酒が苦手だったり、甘いのが好きな女性向きですね。

 他にも『お茶』で割ったりするのもありですね。」

「うむ。では、いただくかの。」

エルヴィス爺さんの言葉で皆が飲み始める。

・・

「んー・・・甘いのぉ。ジュースと変わらないの。」

「これは・・・俺はさっきの方が良いな。」

「んー♪これも良いわね!」

「美味しい♪」

「やっと飲めるものが出てきました。」

「ほぉ。」

「なるほどな。」

皆が感想を言い。他の者も頷いている。


「と、まぁこんな感じで大まかに4種類ありますね。」

「なるほどの。」

「じゃあ、皆さん。1種類を選んでください。

 皆の分を作ったら料理長達はお酒を持って撤収でお願いします。」

「なに!?今日はもうおしまいなのかの!?

 まだ始まったばかりじゃろ!?」

「また明日飲めばいいでしょう?

 適量が良いのです。飲み過ぎはさせませんよ?」

「・・・むぅ・・・しかし・・・」

「締め切りますよ?」

「わしはストレートで!」

皆がエルヴィス爺さんと武雄のやり取りに笑うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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