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第238話 マヨネーズのレシピを教えます。あ、酒が届きました。

夕飯後、客間に皆が移動する。

フレデリックが食後のお茶を入れ、皆の前に置き、皆から少し後ろに下がる。

ミアにはリンゴの搾りたてジュースが出されていた。


「タケオさん、アレはなんなの?」

「ジェシーさん、アレではわかりませんよ?」

ジェシーが席に着くと武雄に聞いてくる。

「あのサラダのドレッシングです。」

「マヨネーズですか?」

「ええ、それです。

 前に帰ってきた際には無かったのよ。

 タケオさんが持ち込んだの?」

「ええ、レシピを教えましたね。

 あれは便利なんですよ。

 単体でサラダのドレッシングもできますし、肉料理と一緒に出すと油のおかげで甘さが増すという風に変わるんです。

 万能調味料ですね。

 気に入っていただけましたか?」

「美味しかったぞ。」

ジェシーよりも先にゴドウィン伯爵が答える。

「ええ、とっても美味しかったわ。

 あれを作るのは難しいの?」

「簡単ですよ。卵と油とレモン汁で作ります。」

「簡単ね、食材もすぐに手に入りそうだし。」

「レシピは帰りの際にお渡ししますよ。

 マヨネーズが気に入りましたか・・・明日の朝はタマゴサンドにしますかね。

 ・・・あとで料理長に言っておきます。」

「あ、タケオ様、また簡単にレシピを教えて。」

アリスが「むぅ」とジト目で見てくる。

「アリス、諦めるのじゃ。」

「アリスお姉様、諦めた方が良いですよ。」

エルヴィス爺さんとスミスはヤレヤレという感じを出しながら言う。

「私が料理を秘密にしないのは知っているでしょう?」

「そうですけど・・・うちだけの秘密にすれば良いのに。」

「はは、マヨネーズを隠しても意味はないですよ。

 いつか誰かが作るでしょう。

 なら知り合いに教えておいてうちらが本家と言った方が面白いでしょう?」

武雄がクスクス笑う。

「へぇ、これが今のエルヴィス家の日常なのね。」

ジェシーが楽しそうに見ていた。


と、客間のドアがノックされる。

エルヴィス爺さんが入室の許可を出すと執事が扉を開け入って来る。

「失礼します、北の町のウォルト様が参られました。

 伯爵様宛にお酒をお持ちしたとの事ですが・・・」

そこで執事は言葉を止めてしまう。

「ん?どうしたのです?歯切れが悪いですね。

 酒が届くのは言っておいたはずですが?」

フレデリックが不思議そうに聞くが、執事は苦笑いをしている。

目の前の執事は、その辺はしっかりしていて、こんな歯切れの悪い報告はしない印象を武雄は持っていた。

「お酒・・・見に行きましょうか。」

武雄は何か嫌な予感がして席を立ち、フレデリックと執事も客間を後にする。

・・

「「・・・」」

玄関に着いた武雄とフレデリックはそれを見ながら言葉をなくす。

「こちらです。」

執事が後ろから苦笑いをしながら言う。

3人の前には酒樽・・・腰くらいの高さがある物が鎮座していた。

「・・・フレデリックさん、聞いても良いですか?」

「お聞きになりたいことは何となくわかりますが・・・構いません。」

「こちらでは酒を頼むと樽で来るのですか?」

「やはり・・・

 普通は違いますね。

 私はブランデーと同じなら瓶詰めされた物が来ると思っていました。」

武雄とフレデリックは苦笑しながらお互いを見る。

「あ・・・あの。」

武雄に知らない男が声をかけてくる。

「ん?えーっと?」

武雄は、執事に顔を向ける。

「こちらが北の町のウォルト様です。」

「こ・・・この度は当ワイナリーの酒を購入していただきありがとうございます。

 ジャック・ウォルトと言います。」

「タケオ様、ワイナリーの社長さんです。」

ウォルト社長が緊張しながら自己紹介をし、フレデリックが補足する。

「タケオ・キタミザトです。

 この度は無理を言ったみたいで申し訳ありません。」

「いえ、こちらこそ。

 私共が新しく作った酒をご存じだった様でありがたく思っております。」

「ふふ、そう思って頂ければありがたいですね。

 ちなみにこのお酒の名称は何と?」

「いえ、正式名称はまだ・・・新種の酒としか・・・」

「そうですか。

 すぐに北の町にお帰りになるので?」

「いえ、娘と来ておりますので、この街に一泊して明日帰ろうと考えております。」

「そうですか。

 あ、そうだ。お時間があるなら明日、城門までの表通りにあるこの邸に一番近い酒屋に寄ってみる事をお勧めします。」

「はぁ。」

ウォルト社長が不思議そうな顔をする。

「ふふ。では、お気をつけてお戻りください。」

「はい、これにて失礼いたします。」

ウォルト社長が玄関を出て行った。

・・

「タケオ様、何をしたのですか?」

フレデリックが聞いてくる。

「酒屋のおじさんに専売契約をしてみたら?と言っておきました。

 明日の朝一にこのお酒を試飲してから決めたいとの話でしたね。」

「早くも一手打ちますね。

 美味しいかどうかわからないのですよ?」

「ふふ。

 この時点では、美味しいか美味しくないかではないと思っています。

 新種の酒の独占販売契約・・・美味しくないなら美味しい酒を造る様に指導すれば良いのです。

 おじさんには、先に独占することによる利益を見込めるのでは?と言っただけです。」

「タケオ様は商売人ですね。」

「この街の住民が利益を独占出来るように動くべきですよ。

 そうすればエルヴィス家の収入増に繋がるでしょうから。

 まあ酒屋のおじさんには仲卸しという今までの小売りと違う事をしてもらう事が前提なのでやるとなったら大変でしょうけども。」

武雄はクスクス笑う。

「我々ですることも出来たのでは?」

「んー・・・公権力が酒を握るのは危ないと思うのですよね・・・

 そうすると他の貴族や他領の豪商に贈答できない可能性もありますし。」

「賄賂ですか?」

「そう取られかねません。

 あくまでエルヴィス領の民間業者が作ったので振興させたいとすれば問題なさそうでしょう?」

「どうでしょうか・・・直接的でないですが微妙な線ですね。」

「あとでエルヴィスさんに聞いてみましょう。」

「そうですね。」


と、二人に料理長と各担当が近づいてくる。

「フレデリック、タケオ、それが新しい酒か?」

「料理長、お疲れ様です。」

「ジョージ、皆さん、お疲れ様です。」

「タケオ、さっき聞いたがうちらも飲んで良いのか?」

「どうぞ。あ、午後に持って行った果物を客間に持って来ないといけませんね。

 それにこれを瓶に入れないと。」

「どちらもこっちでやるよ。

 グラスは、どんなのを持っていけば良いのだ?

 ブランデーを出す際はワイングラスを使っているのだが。」

「ワイングラスでなくて良いですよ。

 ガラスのグラスを多く持ってきてください。

 いろんな飲み方を試しますので。

 あと・・・そうですね、私が氷を作り出すので砕く物が欲しいです。」

「わかった、そちらも用意しよう。」

「では、よろしくお願いします。」

武雄とフレデリックは客間に戻って行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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