第236話 魔王国情報と領地拡大について。
「想定戦としては悪くないの。」
「結果的に勝利ですが、こちらの消耗も激しいですね。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが感想を言う。
「ですが、この戦場だけの勝利を望めばこういうやり方もありますよ?」
ジェシーが言う。
「だな。だが、その後の治安等々を考えるとここまでの戦闘はしたくないな。」
ゴドウィン伯爵が感想を言う。
「でしょうね。だから双方とも犠牲者をだしたくないから現状の睨み合いで経過しているのでしょうし・・・
どちらかと言えば、相手が本気でこちらを負かす・・・進攻してくる気になった際の防御戦闘でありえそうですね。
まぁ、その際はもっとこちらの犠牲者が少なくなる様に考えないといけませんが・・・
実際に魔王国は、どんな情勢なのですか?」
武雄が言う。
「そうだな・・・うちと隣接している所は意外とやる気だな。
隙あらば攻めてこようとする奴が領主の様だな。
お互いの関所間で結構、緊張感があるな。」
ゴドウィン伯爵が言う。
「うむ、お互いこの辺の最大戦力同士だからの。
うちの隣接している所は、あまり戦闘に積極的ではないの。
関所間でも重装備の兵士はお互いに置いていないのが現状じゃ。」
「・・・魔王国も貴族制度なのですか?」
「ん?説明しておらんかったか?」
「はい。」
「魔王国の政治形態もうちと変わらないの。
王都に王が居て、各領主が国境沿いを管理、運営しておる。
ただし・・・王の選出が向こうではあるのじゃ。」
「選出?」
「アズパール王国は代々の血統で統治しておる。
だがの、魔王国では代替わりをする際に国内最強の者が王に就任するのじゃ。」
「へぇ、個人の武力で最強の者が?」
「どうなのじゃろうの?詳しくはわからんが毎回、名前が変わるのじゃ。
個人の武力かもしれんし、組織力なのかもしれんし・・・謎じゃの。」
「まぁ、選出方法は公表はしないでしょうね。
一応、代替わりしたら連絡は来るのでしょうか?」
「王都にされるの。まぁ敵対していても国同士の関係じゃ。
外交上されるの。」
「そうなのですね。
ちなみにお二人に聞きたいのですけど・・・」
「うむ。」
「なんだ?」
「領土拡大する気はあります?」
「「ない。」」
二人の伯爵が即答する。
「即答ですね。理由は?」
「うむ、わしよりもフレッドの意見から聞こうかの。」
「大前提として、今のアズパール王が領土拡大する気がない。
領主としては王がやる気がないのに勝手に拡大路線はとれん。
それに領地運営に割と余裕がない。
ここに新たな領地が増えても重荷になるだけだ。
向こうから攻めて来たら追い返すが、こちらとしては何事も無いなら現状維持を望むな。」
「うむ、フレッドの言う通りじゃ。
タケオにも説明したじゃろ。うちは他国の領地を貰っても管理ができなそうでな。
それよりも領内の整備を進めたいの。」
「テンプル伯爵は?」
「ああ、やつは領内の治安維持で大忙しで本音から言えば戦自体したくないだろうな。」
「なるほど。
好戦的でなくて良かったです。」
「タケオ的にはどうじゃ?」
「エルヴィスさんのやりたいようにすれば良いのでは?」
「いや・・・タケオ的には戦とか領地拡大はどう思うかの?」
「私は現状の領地で問題ないと思いますよ?
農地に出来る面積もまだまだ余裕はありますし、無理に領地拡大する意味がないですしね。
私は領地の振興策を考えている方が楽しいですから、戦闘をする気はないですね。」
「うむ。」
「そう言えば・・・フレデリックさん、前に国全体の地図を見せて頂きましたよね?」
「はい、お持ちしますね。」
客間の隅から地図を持ってきて机に広げる。
「タケオ、どうしたのじゃ?」
「いえ・・・確認したいので・・・
東北部のこの辺りがエルヴィス領ですよね。
で、ゴドウィンさんの所がエルヴィス領の南、国内では東ですよね?」
「そうだな。」
「エルヴィス領は北にドワーフ、東に魔王国、西に王都、南にゴドウィン伯爵領があって。
王都から魔王国への主要街道2本の内1本を有している・・・でしたか?」
「うむ。」
「ドワーフの国からアズパール王国に向けての道は何本あるのですか?」
「2本じゃの。一本はうちの領内、もう1本はカトランダ帝国側に行く街道から分岐しているの。」
「ドワーフの国はどことも戦争をしないので?」
「ああ。どの国にも鉄の売買をしておるの。
価格に差があるのかはわからぬが・・・」
「・・・ドワーフの国で東の一部が白いのですけど・・・魔王国との国境でしょうか。
これは?」
「んー・・・説明が難しいの。」
「タケオ様、そこは空白地帯ですね。」
フレデリックが答える。
「空白?」
「元々はドワーフ王国の領土でしたが、今は魔物がそこに住み着いてしまって、ドワーフが放棄しました。」
「占拠している者は強いので?」
「んー・・・何とも言えんの。わしが興味ないのでな。
うちに流入しない様に監視はしているがの。
タケオは興味を引くか?」
「資源ですからね・・・領内の経営を考えると欲しいですね。
占拠している者は何で生計を?」
「ドワーフが残した高炉を使って、純度の悪い鉄を少し生産して魔王国に売っている様です。
あとはドワーフ王国からの通行料ですかね?」
「魔王国と繋がりがありそうでなさそうですね。
魔王国から正式に領土としているとは?」
「ないの。アズパール王国も魔王国もドワーフの国もあそこはいずれの土地でもないとしておるの。
それにの・・・うちでは鉄の精製技術がなくてな。
占領しても意味がないので犠牲を払ってまで手に入れる物なのか・・・判断がつかんのじゃ。」
「そうですか・・・まぁ頭の片隅には入れておきます。」
と、客間に他の執事がきて、夕飯の支度が整ったと知らせてきた。
皆は食堂に向かうのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。