第235話 5000VS5000の想定模擬戦。
「さてと、銀貨をアズパール軍、銅貨を魔王国軍としますよ。銀貨、銅貨共に兵士100名とします。
戦闘前の布陣としては、こうなりますかね。」
武雄は紙にエルヴィス軍500名2列とテンプル軍500名2列を横並びに配置し、その後ろにゴドウィン軍100名30列で配置する。
対する魔王国軍は1000名5列の横並びにする。
「タケオ様。金貨は何ですか?銀貨、銅貨の後ろに配置していますけど?」
スミスが聞いてくる。
「大将です。一応向こうも3人の将が居るとしました。
さて・・・アランさん達から睨み合いは大体300mで行うと言われたのですが・・・
これも300mとしますね。それに魔法師が居ると想定が面倒なので、全部歩兵とします。
つまり皆が同じ速度で移動することを前提に行きます。
エルヴィス軍、テンプル軍は盾を装備、ゴドウィン軍は盾無しで行きます。」
「うむ。」
「ああ、わかった。」
両伯爵が答える。
また、フレデリックもスミスもアリスもジェシーも頷く。
「では、突撃戦開始です。」
武雄はアズパール軍全部を押し上げる。
「この時点ではまだ、相手もこちらが横並び・・・横陣と思っているはずです。
こちらも相手も移動速度は一緒です。」
「うむ。」
「相手との距離残り150mでエルヴィス軍、テンプル軍は一端停止。
ゴドウィン軍突撃継続。」
中央のゴドウィン軍の銀貨を進める。
「ちょっと待て・・・うちのみを突出させるのか?」
「はいはい、アナタは黙っていて。
タケオさん、続きをどうぞ。」
ゴドウィン伯爵が抗議するが、ジェシーが続きを促す。
「ゴドウィン軍20m通過後、エルヴィス軍、テンプル軍突撃を順次再開。」
エルヴィス軍とテンプル軍をゴドウィン軍に近い方から順に再突撃をさせる。
丁度、↑の形で先端の笠の部分が長くなっている形になる。
「相手は走り出している為、こちらの停止と順次再開そして突出がわかっても対処不能です。
このまま当たります。」
銅貨に対して銀貨を当てる。
「さて、走り出している両軍は、そのままいきますが・・・魔王国の中央が崩れますね。
ですが、↑の突端では、アズパール軍が局地的に数的優位状態ですので、ほどなく、ゴドウィン軍に大将を取られます。」
「・・・うむ。」
武雄以外の皆が頷く。
「魔王国の兵士も中央に近い・・・分断しているのでアズパール軍から見て右翼、左翼となるでしょうか?
さらに両翼の半数は独自判断で中央の救援に行くでしょうから取り着く様に動きます。
残った最右翼、最左翼はそのまま突撃中。
魔王国軍右翼と左翼はエルヴィス軍とテンプル軍に取り着かれますが・・・アズパール軍はそのまま突進を続けます。
後方のエルヴィス軍、テンプル軍は魔王国軍の大将位置で中央になる様に寄り始めて貰います。
↑から縦陣に変更。」
「・・・」
「魔王国軍の後方に出たゴドウィン軍、エルヴィス軍は左旋回。テンプル軍はその場で右旋回開始。
魔王国軍最右翼、最左翼が方向転換開始アズパール軍の後方を取ろうと動き始めます。
ゴドウィン軍、エルヴィス軍はそのまま最左翼を目指します。
テンプル軍はその場で円を描く様に展開、方円陣に移行。」
武雄の説明に皆がじーっと見ている。
「ゴドウィン軍、エルヴィス軍が最左翼に取り着く頃には、魔王国最両翼がアズパール軍後方に取り着き始めているので新たな魔王国中央軍ができます。
ですが、魔王国はVの時になるでしょうから。その側面を攻撃します。
目指すは最左翼の大将。
テンプル軍は、ゴドウィン軍、エルヴィス軍が魔王国新中央軍の左翼に取り着いた時に方円陣から△の魚鱗陣に転換開始。
魔王国新中央軍はゴドウィン軍の襲撃でアズパール軍後方の攻撃を断念。
ゴドウィン軍の突撃に備えようとしますが・・・兵士が少しアズパール軍の後方に取り着いて一緒に行ってしまいます。
ゴドウィン軍は魔王国新中央軍に突撃継続、エルヴィス軍は更に左旋回、アズパール軍後方に取り着いた敵及び魔王国右翼を目指します。
この時点ではゴドウィン軍、エルヴィス軍共に縦陣のままです。」
「目まぐるしいな。」
ゴドウィン伯爵が言う。
「エルヴィス軍は魔王国右翼に向かいます。相手がこちらに対応しようとしたところをテンプル軍も魔王国右翼に向かいます。
ゴドウィン軍は魔王国新中央軍に突撃中・・・運が良ければ最左翼の大将を取ってください。
エルヴィス軍とテンプル軍が挟撃の形を取りますが、テンプル軍は突撃しそのまま魔王国新中央軍を目指します。
エルヴィス軍とテンプル軍はここで交差しますね。」
「・・・これは・・・」
フレデリックが唸る。
「交差したエルヴィス軍は右旋回を開始、魔王国左翼を狙います。
テンプル軍はゴドウィン軍と戦闘中の魔王国新中央軍の側面を狙います。
たぶん魔王国左翼はアズパール軍の後方を取ろうと動きますのでエルヴィス軍は後ろから攻撃が出来るでしょう。
テンプル軍が魔王国新中央軍に到達し、ゴドウィン軍と挟撃を開始。最右翼の大将を取ってもらいます。
エルヴィス軍はゴドウィン軍後方に取り着いた魔王国左翼を攻撃。
・・・こんな感じで戦が進めば良いですね。」
武雄は説明を止める。
「・・・」
皆が黙っている。
「どうです?」
武雄は誰も何も言わないので誰にでもなく聞いてみる。
「うむ・・・これは・・・何というか・・・」
「こんな完璧はあり得ませんね。
実際は兵種もまちまちでしょうし、運動量も落ちない事が前提です。
そもそも相手が混乱もしてあまり攻撃してこないとしましたし・・・こちらが優位過ぎましたね。」
武雄が苦笑する。
「親父殿・・・」
「あぁ・・・フレデリック。」
「はい。タケオ様、簡単に考えて死傷者は、どのくらいを見込みますか?」
フレデリックが聞いてくる。
「そうですね・・・
ゴドウィン軍4割、エルヴィス軍とテンプル軍は3割、魔王国軍8割ですかね。
ですが、魔王国は大将首を全員取られますので、政治的には壊滅かと。」
「タケオさん、ゴドウィン軍が魔王国の中央と新中央に連続で突撃させたのは意味があるの?」
ジェシーが聞いてくる。
「最大兵力の軍だからですね。
例えば第1第2小隊が最初の中央軍との突撃で居なくなってもその後に続く第3第4小隊が突撃を引き継ぎます。
突撃はこちらも消耗させるでしょうから小隊長の人数・・・作戦がわかっている者が多い所が一番突撃をするのが良いでしょう?
エルヴィス軍なら小隊長は40名程度でしょうが、ゴドウィン軍なら120名は居るでしょうから。
指揮の替えが利きます。」
「タケオ・・・兵を駒の様に扱うのか?」
「戦術考察をする際には兵士、大将は駒でしかありません。
感情は要りません。動けるのか動けないのか・・・それでしか判断してはいけませんよ。
戦術とは、いかにこちらの犠牲者を少なくして、相手の犠牲者を多く出させるのか・・・足し算、引き算で物事を考えるのです。
兵士達に感情移入すれば、戦術なんて考えられません。
全員を生還させたいと思ってしまいますからね。」
「そうか・・・タケオも施政者側の考えが出来るのだな。
いや、意地悪な質問をしたな。」
「いえ、構いません。」
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