第234話 今回のゴブリン等の襲来について2。
「で、私との距離があと150m程度になるまで砲撃を続けていましたが・・・
えーっと、フレデリックさん。私は砲撃だけでどのくらい倒しましたか?」
武雄はフレデリックに聞く。
「報告ではオーガ32体、ゴブリン30体ですね。」
「です。」
武雄が簡単に言うが、ゴドウィン伯爵とジェシーは、呆れ顔を継続させる。
「タケオ様、ご自身で数えてなかったのですか?」
スミスが聞いてくる。
「はい。数えるのが面・・・考える余裕はなかったですね。
撃ったら次、撃ったら次と作業的にすることで余計な事を考えず撃つことだけに集中していました。
それに後で誰かに聞けば良いかなぁとも思っていましたし。」
武雄は苦笑する。
「で、150m付近からオーガ達が走り始め、私はその場で走ってきたオーガを1体を倒し、アリスお嬢様もオーガを1体と数体のゴブリンを倒して中央に戻ります。
そして両翼から魔法小隊から砲撃を開始し、全体での戦闘に切り替わりました。」
「うむ、そうであったの。」
「はい。私とアリスお嬢様はオーガの処理に動いて周りの兵士達はゴブリンとの戦闘に集中させました。」
「・・・それだけで被害が0となるのか?」
ゴドウィン伯爵が聞いてくる。
「それについては、4~5発くらい砲撃をした後に魔法小隊が分散して、怪我をした兵士を片っ端から回復させました。
兵士長考案の回復戦法と言っていましたね。
これは事前に行った大規模演習でアリスお嬢様対策で編み出されました。
魔法師という戦力を全て回復に回すことで少ない兵士数を多くの時間戦わさせる戦法として、兵士達で研鑽した様です。」
「なるほどな。」
「アリス対策という事は・・・アリスは演習の際にどのくらい倒したの?」
「一人当たり4、5回でしょうか?」
「・・・多くない?」
ジェシーが顔を引きつらせる。
「魔眼の威圧を受けながら吹っ飛ばされ、回復させられ、また吹っ飛ばされて・・・良い感じで追い詰められますよ?
ゴドウィンさんもやってみます?」
「・・・今回は遠慮しよう。」
ゴドウィン伯爵は目を瞑りながら答える。
若干、顔が引きつっている。
「と、戦闘の経過ですね。
ゴブリン達が中央に到達し、オーガも倒し終わった後は私とアリスお嬢様は戦線を離脱して兵士達に任せました。
兵士達は両翼を閉じ、包囲戦に移りました。
あとは時間を少しかけてこちらは死者を出さない様にしながら数を削っていき戦闘終了です。」
「なるほどな。」
「上手くやったわね。」
ゴドウィン伯爵夫妻は頷く。
「その後、残務処理をして戦自体も終了です。」
「うむ。」
「敵を待ち受ける為の陣形と死者を出さない回復戦法と私の砲撃でオーガの数が削れたという複合的な努力によって死傷者0という結果になりました。」
「努力・・・そうだな。
その対策をしたから掴んだ結果だな。」
「はい。奇跡とか幸運とか言う方もいるでしょうが、皆の努力で成ったことです。」
「うむ、武雄がそう考えてくれるのはありがたいの。
奇跡を毎回期待されても困るしの。」
「ええ、もう一回同じ状況に置かれて死者0で出来るかは疑問ですね。
・・・以上が戦闘経過です。」
「なるほどな。
しかし、我々は横並びでの突撃戦しか想定していないのだが・・・
陣形とは、そんなに威力があるのか?」
ゴドウィン伯爵が聞いてくる。エルヴィス爺さんやフレデリックも頷く。
「んー・・・逆にお聞きしたいのですけど・・・なんで横並びになっているのですか?」
武雄は聞き返す。
「我ら3伯爵は主に魔王国と戦をする為に存在しているが・・・
戦は3伯爵領の兵士が集まって相対するのだ。
そうすると突撃のタイミングだったりが命令系統が別々なので今回の様な陣形をしても混乱するだけなのだ。
それに戦場は草原で行われるので面積的にも横並びの方が楽だからだな。」
ゴドウィン伯爵が説明する。
「草原・・・なるほど・・・ここでは戦は広い草原で行うのですか・・・
私のいた所の昔の武将さん達は草原での戦はほとんどなかったのではないでしょうか?
山も川も多かったので、その場に合った陣形を考えて戦をしていたと思いますね。
それに数領の兵団が集まっても大まかな戦闘経過を皆で共有するだけで戦闘は各々の判断だった様ですし。」
「別々に判断して上手くいくのかの?
タケオ、軽く説明してくれるかの?」
エルヴィス爺さんが聞いてくる。
「そうですね・・・魔王国との戦闘で大体こちらの兵力と相手の兵力はいくつぐらいになるのですか?」
「俺の所が3000名、親父殿とロバートの所が1000名ずつだな。」
「ロバート?」
「テンプル伯爵の事じゃ。」
「あぁ、なるほど。」
「アズパール軍5000名、魔王国5000名で行うことが通常だ。」
「それが草原で戦闘するのですね・・・
ちなみに通常なら横並びは何列でするのですか?」
「そうだな・・・5列突撃・・・だな。」
「5列・・・200名5列、600名5列、200名5列・・・
さて・・・どうしましょうかね・・・」
「ん?タケオは何を悩んでおるのだ?」
「勝敗をどこに置くか・・・ですね。
素人考えで申し訳ないですが、同数対戦では殲滅は出来ないと思います。
ならば・・・敵大将首を取る事に集中するべきか・・・大将首を取らずに瓦解をさせて敗戦させるか・・・
さて・・・どちらが面白いか・・・」
「いやいや、面白いで戦はしないぞ?」
「机上の戦闘くらい面白味があっても良いと思いますけどね。
それに今はタダの遊びです。
真剣に考える必要はないでしょう?
まぁ・・・良いです。
とりあえず私の考えた事を説明しましょう。
あ、フレデリックさん。金貨6枚と、銀貨、銅貨を25枚ずつ用意してください。」
武雄は紙に升目を書き始めるのだった。
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