第233話 今回のゴブリン等の襲来について1。
「と、少し話が逸れてしまいましたね。」
「ああ。しかし、領内の発展も重要だな。」
ゴドウィン伯爵が頷く。
「はい。各々で上手いやり方を考えるしかないです。」
武雄の言葉にエルヴィス爺さんとフレデリックが頷く。
「では、次はこの間のゴブリン等の襲撃ですが・・・
報告は読まれているそうですが?」
「ええ、私達はここに来る途中で報告は受けています。
ただ、簡易的な物なのでお爺さまやアリス、タケオさんの意見も聞きたいわ。」
「わかりました・・・そうですね、何から言えば・・・
ミア、出ておいで。」
「はい。」
ミアが武雄の胸ポケットから出て皆の前の机に降りる。
ミアを見てゴドウィン伯爵とジェシーは固まる。
「「妖精!?」」
「主、私の紹介までが長いです。
寝そうになりました。」
ミアは武雄に抗議してくる。
「「主!?」」
再び二人は驚く。
「はは、それは苦労をかけましたね。」
「伯爵様、戻ってきました。」
「うむ、ミア、おかえり。」
「はじめまして、主タケオの部下のミアです。」
ゴドウィン伯爵夫妻にミアは挨拶をする。
「あ・・・え?・・・あぁ、ゴドウィンだ。」
「アリスの姉の・・・ジェシーよ。」
二人は驚きながら挨拶をする。
「挨拶は終わりましたね。
ミア、こっちに来て私のお菓子を食べて構いませんよ。
ここからはレイラさん達には直接的には言っていない事が含まれます。」
「うむ。」
「はい。」
二人は返事をし、エルヴィス家の面々は頷く。
ミアは武雄の前にあるお菓子を座りながらもぐもぐ食べ始める。
「さて、相手の意図は正確にはわかりませんが、エルヴィス家の疲弊が目的と考えられます。」
「疲弊なのか?レイラ達を狙ったとは考えないのか?」
ゴドウィン伯爵もジェシーもアリスから武雄がレイラ達3人の素性を知らない事は言われており、あまり触れない様にしようと話されていたのだが、ゴドウィン伯爵は、それでも聞いておきたかった。
「切っ掛けはそうかも知れませんが、エルヴィス伯爵領の中心である伯爵邸がある街をいきなり襲撃している事。
さらに常駐兵力を下回る数しか投入しない事。
・・・こちらの兵士数の削減が目的と考えれば、まぁ理解は及びますね。」
「その先にあるのは何なのか・・・悩むな。」
ゴドウィン伯爵が「むぅ」と悩む。
「それはまた後で話し合いましょう。
とりあえず時系列っぽく話しましょうか・・・
二日前の明け方・・・賛課の鐘と1時課の鐘の間ですかね。
城門から10km程度の所でゴブリン達の集団を見回り中の兵士が発見します。」
「・・・」
皆が頷く。
「この集団の内訳はゴブリン350、オーガ50です。
集結方法は転移魔法による一括招集と想定しています。」
「「は!?」」
ゴドウィン伯爵夫妻が驚く。
驚きの言葉に武雄はゴドウィン伯爵の方に顔を向ける。
「・・・それは本当なのか?転移魔法・・・存在するのか?」
「そもそもそれだけの数を招集するのに付近の村や町から事前に何も目撃情報が無い時点で突拍子もない方法を取っています。
そこに転移魔法という確度の高い情報が入って来ましたので、我々エルヴィス家としては、あり得ると考えました。」
「・・・うむ・・・そうだな。」
ゴドウィン伯爵の呟きに皆も頷く。
「話を続けますね。
1時課の鐘辺りでエルヴィス邸に一報が入ります。
城門到達予定は3時課の鐘辺りで、こちらの兵力は500名と説明を受け、騎士団長と兵士長からは突撃戦をする旨の説明を受けましたね。」
「うむ、そうじゃったの。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「そこで話が私に回って来たので、一つ提案をし、了承されます。」
「どんな提案をしたの?」
ジェシーが聞いてくる。
「えーっと、タケオ様の提案は皿の様な半楕円形で待ち受けるということでしたよね?」
アリスが思い出しながら言ってくる。
「そうですね。中央に100名、左翼、右翼にそれぞれ200名を配置しゴブリン等を受け止める陣形を提案しました。」
武雄はそこら辺にあったノートに書きながら説明する。
「受け止める・・・中央を厚くするべきなのではないか?
突撃戦でも一番敵と対峙するであろう中央は厚くするはずだが・・・」
「中央には私とアリスお嬢様が入りました。」
「あぁ、なるほどね。それなら・・・
って・・待って・・・なんでアリスとタケオさんで兵士100名以上と換算ができるの?」
ジェシーの問いかけにゴドウィン伯爵は頷くが、エルヴィス家の面々は苦笑している。
「私とアリスお嬢様は、事前に兵士達相手に大規模演習をしていました。
えーっと・・・対150名くらいですか?」
「180名じゃ。」
「です。」
「「・・・」」
ゴドウィン伯爵とジェシーは呆れている。
「えーっと・・・続きですね。
陣形を決めた後、中央から50m先に私が陣取って敵が私から550m程度の位置に来たら砲撃を開始しました。」
「タケオは魔法が使えるのか?」
「はい。私の魔力は小さいので初級魔法しか使えませんけど。
私専用の魔法武器を作って貰って対処しました。」
「タケオ様は魔力は少ないのですけど、減らないのでいくらでも使えるのです。」
アリスが補足説明をする。
「そうなのね・・・でも550mは破格ね。」
「ああ、550mの砲撃戦は聞いたことがないな。
今までの戦闘感覚で言うと200mくらいで砲撃戦を始めるのが普通だな。」
「アランさん達からもそう言われましたが・・・
確かに550mで当たりはしましたが、命中精度は悪いので実際には200mくらいから割と使い物になりましたね。
それでも的が大きくないと当たりませんので・・・精度を確かにするには訓練がまだまだ必要だと思いますね。」
「なるほど。」
ゴドウィン伯爵夫妻は頷くのだった。
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