第232話 農村部の発展?人口増加方法とは。
「まぁ、タケオの事はそれなりにわかったな。」
「そうね。とりあえず、エルヴィス家に新しい風が入ったわね。
うちの領内にも優秀なのは多いけど、タケオさん程の実効性のある策はなかなか出て来ないわよね?」
「・・・発展の仕方がわからないと言った方が正しいだろう。
皆が領内の発展を望んでいるのだが、どうやったら富むのかわからないのだ。
さらに言えば、現状では、アズパール国中が満足している節がある。
王都も各地方領もだ。」
「そうね。だから実効性のある発展案を出さないのね。
リスクを取るなら今のままで良いと。」
ゴドウィン伯爵夫妻が頷きながら話し合う。
「ちなみにですけど、飢餓は無いのですか?」
武雄は何げなく聞いてみる。
「飢餓か・・・それは天候不順でか?」
ゴドウィン伯爵が聞き返す。
「天候不順も戦争もです。」
「・・・そうだな。
我の領地、エルヴィス伯爵領、テンプル伯爵領ともにここ20年程度の天候不順はない。
飢餓も30年程度は無かったと思うな。
戦争で人的被害が出ることがあっても農業的には被害はないな。」
「安定していますね。」
「あぁ、毎年の収穫量がわかっているのはやりやすいな。」
「私は不安になりますけど。」
「タケオ、なぜじゃ?」
「長期間・・・2代、3代と安定的な気候が続くと『今年もそうなる』と考える人達が増えそうです。
そうすると農民が試行錯誤をしない可能性があります。
そんな中で災厄が起きた場合、混乱と立て直しの期間が伸びそうですから。」
「なるほどの。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが頷く。
「かといって、農作物を過剰に作られても消費先がなければ穀物価格の下落につながりかねない。
うちの領内では今のまま推移するのが望ましいと思っているぞ。」
「そこですね。」
「ん?なにがだ?」
「穀物の増産に必要な要素・・・それは消費先の確保です。
それは大本の話をするなら人口の増加をすることが望めるならば増やしていけるという事です。」
「確かにそうだが・・・なかなか人口の増加は見込めないぞ?
うちの領内の人口は、ほぼ横ばいが続いている。
親父殿の所はどうです?」
「ふむ、うちもほぼ横ばいじゃの。」
二人の伯爵が頷く
「私の考えだと農村部では子沢山のイメージなのですけど?」
「子供は多いが・・・農地もそれなりにあるからな・・・」
「なるほど・・・人口と見合っているのですか。
この間の振興策・・・上手くいけば人口増加にもつながるかもしれませんね・・・」
武雄は考えながら言う。
「うむ、人の往来が多くなれば商店も増え、消費量も増える。
一時的には農作物の価格が上がるかもしれぬが、農産物の増加をしないと追いつかなくなり、価格が下がらないとなれば、農地の拡大が見込めるの。」
「農地を拡大して維持するためには子供を多く作る必要がある。
・・・子供を労働力として見込む必要が出てくるな。さらに将来的には、その子供たちが農地を拡大させていく。
好循環のみを見ればそういう流れが見えてくるな。
ただし、これは天候不順等があると瓦解するが。」
「・・・人口増加と農地拡大の方法は今の内に何かしらの手を打っておいた方が良いですね。
結果は20年とか30年先でしょうから。」
「うむ。」
「そうだな。」
二人の伯爵が頷く。
「ちなみにタケオさんの所では何かしていましたか?」
アリスが聞いてくる。
「私の所ですか?
そうですね・・・子供が生まれたら公的機関からお祝い金が支給される所が多かったですね。」
「そうなのですね。いくらくらいですか?」
「確か・・・金貨2枚か3枚ですかね。」
「へぇ、意外と多いですね。
そうすると領地の負担が結構かかりそうですね。」
「それでも人口が増える事の方が重要でしたし、それに過疎が進む村はお祝い金とさらに10歳まで助成金を出している所もありましたね。」
「10歳まで!?
そこはそんなにお金が余っていたのですか?」
「ないですね。
どこもカツカツ状態でしたよ?
それでも子供を作って欲しいと願っていましたね。」
「タケオの所の施政者も大変そうじゃの。」
「なかなか人口が伸びなくて悩んでいましたね。」
武雄は苦笑する。
「タケオさんの所の人口は、どのくらいでしたか?
この国はだいたい200万人はいるのですけど。」
ジェシーが聞いてくる。
「国としては1億2000万人でしたね。」
「「「「「「は!?」」」」」」
武雄以外の皆が驚く。
「どうしました?」
「それは人口が多いの。国の面積が大きかったのかの?」
「確か他国と比べると小さかったはずですね。
面積が大体38万㎢でしたが山も多かったですし
・・・1km四方での密度は320人くらいだったはずですね。
この街は5km四方で5万ですから1km四方で密度は2000人ですね。」
「うちは所詮地方都市なのじゃが・・・
国の面積は大体25万㎢くらいじゃ。」
「国としてだと1km四方で密度は8人ですね。
そう考えると人口が少ないですね。」
「ちなみにじゃが・・・」
「なんでしょう?」
「わしらの様な地方の領主・・・地方都市はどのくらいの人口が居たのかの?」
「・・・生活基盤自体が違い過ぎると思うのですけど・・・」
「それでも聞いてみたいの。」
「私はエルヴィス領の大きさを具体的な数値で知りませんが?」
「北に50km、南に50km、東に50km、西に25kmじゃ。」
「大きいですね。
んー・・・詳しくは知っていませんが、ざっくりと言うと地方都市は100万から700万でしたね。」
「そうなのか・・・タケオの所の最低地方人口の10%にも満たないのじゃの。」
エルヴィス爺さんはため息をつく。
「いや・・・なんで比べるのです??
生活が違うのですから人口が違うのは当たり前でしょう??
それに逆に考えればこの地域はまだ6万4000人前後なのですから伸びしろがかなりありますよね。
いきなり領内の人口を100万人にするのは難しいでしょうから、まずは10万人とか15万人とか近めな目標で良いのではないでしょうか。」
「うむ、そのためにも農地拡大と農村部の発展が課題じゃの。」
エルヴィス爺さんと武雄は頷くのだった。
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