第228話 次期トップの二人。
武雄、アリス、ブレント、チャド4人の前に新しいお茶が配膳される。
「さてと・・・詰問でもなんでもないですから気を楽にしてくださいね。
私から貴方たちに聞きたいのは、父親の仕事をどう思うのかとあなた達が将来、受け継いだとして、どうしたいか・・・です。
今の心情で結構です。
チャド、あなたから言ってみますか。」
「・・・私は・・・父親の仕事ぶりには感心しています。
私の祖父の代に部下が次々といなくなった。そんな中で一家を保ち今再起を図っている親父は誇りです。
ですが、父のやり方は遅く感じています。もっと街北を発展させたいと思っています。
その・・・やり方はわからないですが・・・」
チャドは若干俯きながら語る。その様子をブレントがじーっと見ていた。
「私も父の仕事ぶりには感心しています。
チャドが言いましたが、今再起を図っている父は誇りです。
私は発展よりも現状の地盤強化が大事と思っています。
ですので、まずは部下の人心掌握が必要だと思っています。」
「・・・なるほどね。」
武雄は顎に手を添えて思案する。
「その考えはお父上達に言いましたか?」
武雄の問いかけに二人は首を振る。
「まぁ、他人の家の事に口を出すのはあれですけど・・・その辺は今日にでも父親に言ってみた方が良いですね。
父親達は父親達で仲間の事や街の事を真剣に考えています。
それにあなた達の場合は、下手をすれば私達と戦う事を選びそうですね。」
「いえ!私はエルヴィス家との対立は望んでいません!」
「私も望んでいません!」
武雄の何気ない一言に二人は焦りながら返答する。
「そうですか・・・
ですが・・・もし我々の領民に手を出すなら・・・
あなた達だけではなく部下共々一家が全滅する覚悟で臨んできなさい。
いつでも受けます。」
「「・・・」」
ブレントとチャドが俯きながら押し黙る。
「・・・ですが、街との共生を選び、街の発展を想い、歓楽街の秩序を維持していく事に尽力するのであれば、お互いに美味しい果実が巡って来る機会は、この先多くあります。
今第一弾が進行中です。あなた達のお父上達には先ほど伝達しました。
詳しくは、家の中で聞きなさい。」
「「はい。」」
「話は以上です。」
「「失礼します。」」
二人は席を立ち店を出ていく。
武雄とアリスは二人を座りながら見送る。
・・
・
「と、未来の歓楽街の主人に脅しをかけたのですけど?」
武雄がアリスに話す。
「はい。
よろしかったのではないですか?
若干見通しが組織内の事しかなかったですけど・・・基本的には抗争をしなさそうですし。」
「ええ。あれがスミス坊ちゃんが将来、相手をする者達ですね。
それにしても組織内の人心掌握と街北を発展させる・・・
次期主人達もちゃんと考えていますね。」
「そうですね。うちのスミスは、どういう風に成長しますかね?」
「確か・・・
民を守り、民を幸せにしてエルヴィス家に関わる全ての人達を幸せにし、敵だった人達さえも幸せに出来る当主を目指すと豪語していましたね。」
「え?その話は知らないのですけど?」
「アランさんが来た時の夜の出来事ですよ。」
「あ、ゴブリン達との戦闘後にタケオ様に謝りに行った時ですね?」
「そうです。理想としては満点です。
あとはそれが実現出来る様に私や皆が頑張らないといけませんね。
まぁ今日のもその一環です。
こんな犯罪組織との話し合いなんてスミス坊ちゃんには、まだまだ先でしょうから。」
「そうですね。
もう少し先・・・寄宿舎から帰ってきたらですかね?」
「ふふ、どんな当主になってくるのでしょうね?」
「楽しみですね。」
武雄とアリスは笑い合うのだった。
と、兵士長が店内に入って来て、二人に近づいてくる。
「キタミザト様、アリスお嬢様、お疲れ様です。」
「「兵士長、お疲れ様です。」」
3人は挨拶をする。
「キタミザト様、どうでしたか?」
「話し合いは順調でした。
バーナード一家、カーティス一家共にエルヴィス家との対立は望んでおりませんでしたね。
また、街との共生を望んでいる為、我々が介入するほどの犯罪は減らす努力を今後ともする様です。」
「なるほど。」
「また、今回の仕立て屋組合の工場建設計画において、用地選定に際してのプレゼンに参加する可能性が高まりました。
お二人とも一不動産業者として提案する旨の宣誓がありました。
バーナードさんは街南で用地の選定にカーティスさんは街北で用地の選定にそれぞれ入ります。
二人とも裏も表も街の事を知っています。
良い場所を見つけるでしょう。
兵士長には、そのプレゼンに警備の観点から参加してもらいます。」
「はい。
いつぐらいになるでしょうか。」
「実際には、仕立て屋組合とラルフ店長との都合を確認の上決めないといけませんが、私は1か月弱と見ています。」
「わかりました。」
「街が発展すれば人口も多くなりそうですし、ゆくゆくは兵士の増強が出来るかもしれませんね。」
「はは、その頃は私は退役間近ではないでしょうか?」
「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。
どちらにしても最初は兵士達に負担をかけてしまうでしょうね。」
「いつものことです。問題はありません。」
武雄と兵士長は苦笑するのだった。
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