第218話 帰宅。夕飯までの客間。
9時課の鐘が鳴り終わったころ、武雄達一行はエルヴィス邸に到着した。
玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、アリスお嬢様、タケオ様、ミア様。」
「ただいま、フレデリック。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」
「戻りましたー。」
「タケオ様宛に雑貨屋から荷物が届きましたので、書斎に置いておきました。」
「ありがとうございます。
あ、あとテイラー店長からも小銃と弾丸が届くと思います。」
「畏まりました。届き次第、書斎に持って行かせます。」
「ありがとうございます。」
「夕飯までどうお過ごしに?」
「ミアの部屋を作成ですね。
作成終わったら客間に行きます。」
「私は客間に行きます。
お爺さまも居るのでしょうか?」
「はい、のんびりとされています。」
「わかりました。」
武雄とミアはアリスとフレデリックを残し、書斎に向かうのだった。
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武雄の書斎にあるソファ前の小机でドールハウスを組み立てている。
「ミア、どうですか?」
武雄の問いかけにミアは部屋の中に入り確認する。
・・
・
「主、問題ないです。床も柔らかいです。」
武雄はまず、屋根、壁、床がそれぞれ別々になっているのを簡単に組み立ててから
一端バラして床の部分に厚手の布を引きそこに肌触りの良い絹の様な布を敷く。
床の裏部分まで布が被る様にして裏側に出ている布同士を紐で引っ張り合う様に縫い、取れない様にしてから壁と屋根を組み立てた。
「問題なさそうですね。
と、ミアの部屋をどこに置きましょうかね・・・」
武雄は、500×500程度の机が必要だなぁと今さら気が付く。
「ミア、とりあえず部屋は完成です。
部屋の場所は廊下側の扉の横で良いですか?」
「主、そこで構いません。」
「私はミアの部屋の台座を買ってきます。
ミアはアリスお嬢様の元でお留守番をしていなさい。」
「わかりました、主。」
武雄はトレンチコートを羽織り、書斎を出ていく。
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客間のドアを開きミアが中に入って来る。
「入ります。」
「ん?ミアか?どうしたのじゃ?」
エルヴィス爺さんが気が付き声をかける。
「主が私の部屋の台座を買いに行くと言って外出したので、私はアリス様の所に行きなさいと。」
「うむ、買い忘れたのじゃな。」
「そう言えば、置き場所まで考えていませんでしたね。」
アリスは苦笑する。
「タケオ様は、ミアちゃんの部屋をどこに置くと言っていましたか?」
「えーっと・・・廊下側の扉の横と言っていました。」
「ふむ・・・無難じゃの。
扉を開けただけではミアの部屋が見つからない様にしたのじゃな。」
「ですね。
タケオ様の事ですからミアちゃんを盗みにくる輩がいると考えているでしょうね。
ミアちゃん、新しい部屋はどうだった?」
「主が床を柔らかくしてくれて寝やすそうです。」
「そう良かったわね・・・あれ?タケオ様は釘とか金槌を買っていませんでしたけど・・・
ミアちゃん、タケオ様はどうやって床に布を張っていましたか?」
「針と糸で布を固定させていました。」
「・・・わかりませんね。」
「ふむ・・・また変な事を考えたのだろうの。
ミア、初めての人の街は、どうであった?」
「緊張しました。
あんなに人間が居る場所を動いたのは初めてです。
それに子供に囲まれました。」
「青果屋でちょっとありました。」
アリスは苦笑する。
「うむ、それは夕飯後に聞こうかの。」
「あと、主もアリス様もいろんな人から話しかけられていました。」
「ほぉ。」
「皆口々に『おめでとう』と言っていました・・・何か祝い事があったのですか?」
「ふふ、最近いろいろあったのですよ。」
アリスが笑いながら言う。
「そうなのですか?」
ミアは不思議そうな顔をしながら聞いているのだった。
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「いや~助かります、テイラー店長。」
武雄はテイラーの荷馬車の後ろでのんびりと座っていた。
「たまたまキタミザト様がサイドテーブルを持って歩いているのを見かけただけですよ。
行き先は一緒ですからね。
ちなみにそれは書斎用の?」
「ミアのドールハウスの台座です。
ついでに引出もついているので細々としたミアの物を入れようかと。」
「なるほど・・・
キタミザト様、ニオなんですけど・・・」
「何ですか?」
「アレは、どういった者なのですか?
全く分からないのです。」
「文献を読めたのでしょう?」
「読める事と理解することは違いますね。」
「私も詳しくはないですが、そもそも私のいた所の宗教で出てくる門番です。」
「宗教?・・・んーこの国にも宗教はありますが自然信仰でして・・・」
「んー・・・私の所では自然信仰が擬人化して神話として語られると言うのもあったはずですが・・・
ここでは違うのですね?」
「擬人化はされていませんね。あっても妖精の悪戯とかですかね・・・
その他は太陽や月、雨に風、水に大地それぞれに感謝しましょうって感じですね。」
「なるほど。
まぁ・・・仁王様は、ある宗教の信者を守る為の先兵であり聖域の門番と考えられていますね。
その宗教も仁王様を見ると広める気はないようですし、あまり考えなくて良いのでは?
仁王様も妖精の様な者と自身を言っていたでしょう?」
「そうなのでしょうか?」
「さぁ?これについては仁王様に聞いてみるしかないですよ。
いろいろ知ってそうですが・・・
知ることが楽になる事ではないですからね。知ってしまうと苦しむ事になるかもしれません。」
「そうですか・・・と、着きましたね。」
いつの間にか荷馬車はエルヴィス邸の玄関に着いていた。
武雄は荷台から降り、サイドテーブルと小銃の箱と弾丸の箱を降ろす。
「これで全部ですかね。」
「何か忘れていたら後日違う用事の時に持ってきます。」
「はい、その際はよろしくお願いしますね。」
「では、またのご利用をお願いします。」
と、テイラーが荷馬車を走らせ敷地から出て行った。
武雄が玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、タケオ様。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」
「随分な荷物ですね。」
フレデリックは武雄の足元を見て苦笑する。
「帰りにテイラー店長が荷馬車で小銃を運んでいたので便乗してきました。」
「運が良かったですね。」
「まったくです。重労働をせずに済みました。」
武雄も苦笑する。
「もうすぐ夕飯です。」
「わかりました。この荷物を書斎に持って行ったら直接食堂に向かいます。」
「畏まりました。」
武雄は荷物を1個ずつ書斎に運ぶのだった。
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