第209話 お酒の種類は? 今日も寝ますか。
「何か、ライ麦の良い調理方はないかのぉ。
・・・もしくは収入が増えそうな事があればもう少し余裕が出来るのだがの・・・」
エルヴィス爺さんは難しい顔をして悩む。
「ちなみに聞いておきたいのですが。」
「なんじゃ。」
「ワインを蒸留した物が売っていましたが。」
「ブランデーかの?」
「ええ、ワインとブランデー以外でお酒は何が?」
「その二つが大別としてあるが・・・リンゴでもブランデーが出来るそうだの。」
「・・・他には?」
「ないが・・・タケオ・・・何を思いついたのじゃ?」
「いや、ライ麦や大麦からも蒸留酒ができたなぁっと。」
「「え?」」
再びエルヴィス爺さんとフレデリックが固まる。
「ウィスキーと言いますけど・・・知りません?」
「いや、わしは知らんの。」
「私も存じません。」
二人して知らない様だ。
「・・・でも、ブランデーがあるなら遅かれ早かれ誰かが作りそうですが・・・」
「で、タケオ、どうやって作るのだ?」
「え?作る気ですか?・・・えーっと・・・確か・・・
1.発芽した麦を乾燥させ、麦芽を作る
2.麦芽を粉砕して、温かい水と混ぜてトロトロ状態に。
3.これをろ過して、麦汁をつくる。
4.麦汁に酵母をいれ3日くらい発酵させる。
5.発酵が終わった物を蒸留する。
6.蒸留した物を内側を焼いた樽に入れ長期間じっくり貯蔵する。
ですね。」
「酵母とはなんじゃ?」
「確か・・・パンの膨らます際に入れる物と同じだったはずですが・・・」
「・・・イーストでしょうか?」
フレデリックが考えながら聞いてくる。
「たぶん・・・
ワイナリーに問い合わせてはいかがでしょう?
どこかで作っているかもしれません。」
「どんな酒になるかの?」
「ブランデーと大して変わらないと思いますよ。
匂いとか味とかは好き好きですし・・・
私はウィスキーを良く飲んでいたのでウィスキーが好きですね。」
「そうか・・・ライ麦の加工品としてはありかもしれぬな?」
「はい。
そのウィスキーが販売出来る様になれば、北部の町や村の収益になるでしょうね。
試す価値は十分にありますし、既存の設備が流用出来るなら数年後には試作品ができそうですね。
とりあえず、北部の町に居る文官に確認させます。」
「うむ、まずは調べることが先決じゃの。」
エルヴィス爺さんの言葉にフレデリックが頷くのだった。
ちなみに・・・アリスはミアをまだ可愛がっている。
一方のミアは・・・グッタリしていた。
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今日も「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が客間を出ていき、武雄とアリスも寝室に戻って来ていた。
武雄はお風呂の準備をし、今はアリスとミアが入っている為、書斎で落書きをしていた。
さっきのウィスキーの製造方法の概要と飲み方
さらには、昨晩のアズパール王国の貴族についてのアランさんの説明と印象、仁王様の事。
ほか思い付くものを書いていく。
寝室側の扉がノックされ、アリスとミアが入ってくる。
「タケオ様、上がりました。」
「主、戻りました~」
「はい、二人ともおかえりまさい。
アリスお嬢様、髪を乾かしますか。」
「はい。」
皆が寝室へと移動する。
武雄はアリスを座らせ髪を軽く乾かしていく。
「タケオ様、ミアちゃんのベッドとかはどうしますか?」
「そうですね・・・ミアはどうしたいですか?」
「私はどこでも寝れます。」
ミアは気にしない様だ。
「アリスお嬢様、ここにはドールハウスは売っていますか?」
武雄は某玩具メーカーが出している女の子用のドールハウスを思い浮かべる。
「ん~・・・お姉様方は持っていましたから・・・あるのでは?」
アリスの回答に武雄は少し引っ掛かるが、スルーすることにする。
「明日、買いに行きましょうか。
今日の所はミアは私の書斎で寝ましょう。」
「わかりました、主。」
「え?一緒に寝ないのですか?」
「・・・人だろうが、妖精だろうが、プライベート空間は大切です。
最初から一緒では疲れてしまうでしょう?
ボーッとすることも必要ですよ。」
武雄は、にこやかに言うが、心の中では「ミアが圧死するのを防がないといけないですから」とも思うのだった。
「そうですか・・・」
アリスは少し寂しそうに言う・・・武雄は、そんなアリスの耳元に顔を近づけ・・・
「私達の夜の行いもミアに見せるのですか?」
あっという間にアリスは顔を赤くさせる。
「あ!・・いえ!?・・・そうではなくて・・・」
アリスはアワアワし出す。
「主、何を言ったのです?アリス様が慌てていますが。」
「ん?気になりますか?」
「はい。」
「それでは」
「説明しなくて結構ですから!!!」
アリスは慌てて武雄とミアの会話に介入し、武雄の口を手で塞ぐ・・・鼻にも手がかかっています。
「な・・・何でもないのよ?ミアちゃん。」
アリスはミアの方を見て取り繕う。
・・・息が・・・
武雄は顔を横に向けようとがジタバタするが、アリスは力を緩めない・・・
・・・力の限りアリスの手を押し返す。
「・・・ぷぁ・・・はぁ・・・息が出来ませんでした。
アリスお嬢様、口を塞ぐのは良いですが、鼻まで塞ぐのは危険です。」
「・・・タケオ様が余計な事を言うからです。」
アリスはジト目で抗議してくる。
「知りたいと言われたら教えてあげるのが親切でしょう?」
「・・・内容に依りますよ。」
「妖精ですよ?知っているのでは?」
「それでも言う必要はないでしょう?」
「・・・まぁ、次回は気を付けましょう。」
「わかってくれれば良いです。」
アリスはホッとした様に頷く。
武雄は心の中で「次回は・・・ですよ?」と呟くのだった。
・・
・
「さて、髪も軽く乾きましたね。
私は、お風呂に行ってきます。」
「はい、いってらっしゃいませ。」
「ミア、書斎に行って寝床を作りましょうか。」
「はい、主。
アリス様、おやすみなさい。」
「ミアちゃん、おやすみ。」
武雄とミアは寝室を出ていくのだった。
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